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駅を中心としたプロモーション展開

株式会社NKB Let's Enjoy TOKYO事務局企画チームリーダー 伊東 周晃 氏


以前のPAGEカンファレンスで、一緒に仕事をしている東京メトロの松崎氏がLet's Enjoy TOKYOの紹介をしたので、今回はNKBの立場から、別の切り口からの話も加えて説明したい。

交通広告を中心に

NKBの社長の滝(久雄・同社代表取締役)は、飲食店情報検索サイトの「ぐるなび」の会長を兼任している。ぐるなびは、NKBのネットワーク事業部の一事業として、1996年、インターネットが商用化して結構早い段階に立ち上げたものである。

NKBの事業内容は、交通広告をはじめとする広告代理店業務、および新媒体の開発、広告の企画制作一切の業務、また商業施設関係もやっている。また、コンピュータによる情報システムの開発および販売、情報サービスをやっている。情報システム開発というと、今はインターネット関係だが、昔はタッチパネル等を作っている時代もあった。

事業ドメインは、交通広告を中心とした広告、また公衆回線自由化以来、社内にエンジニアを招聘してIT事業をやっている。もう1つは駅のコミュニティ化ということで、アート事業をやっている。例えば、東京メトロの銀座駅に平山郁夫氏の「銀座のオアシス」というレリーフがあるが、いろいろな駅で陶板レリーフやステンドグラス等、環境美術というか、パブリックアートをやってきている。

駅を楽しくする

「広告とITというのはわかりやすいが、アートをなぜやっているのか」とよく聞かれるが、結構密接につながっている部分がある。もともと駅の広告というのは、今でもSP系の中で一括りにされることも多いが、ポジションとしては高くない。昔は駅の美観などに注意がいかなかったことがその背景にあるが、そんな時代から駅には価値があると滝は考えていた。

東京だけでも1日に約4,000万人が乗り降りする場なので、十分メディアとしてのポテンシャルはあるだろうという考え方である。駅は単に通過していく場ではなく、少しでも楽しい場所、コミュニティスペースとしての価値を持っていこうということで、そのためにアートを、特に新駅を作るタイミングでよく手がけさせてもらっている。

ネットワークサインボード

広告事業についてだが、駅の看板をネットワークサインボードと呼んでいる。 交通広告というと中吊り広告のイメージが強いかもしれないが、NKBは特に大型のボードに強みを持っている。ネットワークサインボードは、駅の看板を1駅ずつ売っていくのではなく、マス的なパンチを持たせるために、例えば「SW(スペシャルワイド)」では50駅展開セットで、山手線内等でやったりしている。また「ニューターミナルボード」は100駅で展開している。

昔の看板は年間契約が多かったが、企業のキャンペーンに対応するため、こういうボードは2週間で切り替えたり、1ヵ月でやったりすることもできる。その保守も含めて、NKBがやっている。

JOYステップは、階段を下りていくときに見たりすると思う。また、JR原宿駅に立つと、サインボードがずらっと並んでいる。これもNKBで企画提案して管理している媒体である。アパレル系のクライアントを中心に、常に出稿してもらっている。年2回、春と秋に広告をやめて文化的な事業やキャンペーンに予算を割いて告知をすることがある。最近ではピンクリボンのキャンペーン、骨髄バンクのPRをこの原宿のボードで行った。

「アドシート」というのはJRの駅によくあるが、北海道から九州まで、全部NKBが管理している。もともとNKB自身が日本交通文化協会という財団を持っていて、財団の一活動として、全国の駅にベンチを寄贈した。その際にベンチを置く代わりに広告媒体を付けてくれと言ったのが、駅の広告事業の始まりである。北から南まで、メンテナンスも含めてNKBでやっている。

そのほかに、JR東京駅の3×8mのボードや、東京メトロのSWという媒体がある。SSアクセスボードとは、特に私鉄等で、都心で仕事をして郊外に帰っていく人たちをターゲットにしたサインボードである。

駅のポテンシャル

それらの媒体に共通しているコンセプトは、大型化、モジュール化である。基本は3×4mを1モジュールと考えてやっている。それからネットワーク化である。マスに負けないパンチを交通媒体に持たせるために、駅をネットワークして、サーキュレーションの高い駅を組み合わせて商品化してきている。

駅のポテンシャルについては、東京、大阪、名古屋、パリ、ニューヨーク、ロンドンと各都市を並べて見てもらうとわかると思う。海外は車社会なので、ビルボード(屋外広告)が米国などの広告会社では強い。あとはバスシェルター(バス停留所)広告等、有力なプレイヤーが全世界で展開している。

日本の場合、特に都市に関して使われる交通手段は、車より完全に鉄道がメインである。1日の乗降客数で、東京は4,000万人、大阪は1,600万人である。それに比べて、パリ、ニューヨーク、ロンドンは300万人、200万人ということで、交通広告の日本における特異性があるのではないか。

また、東京50km圏内には総延長約2,000kmの鉄道網がある。日本と世界を比べた場合、規模とか集積度だけでなく、鉄道の運行時間の正確性ということがある。利用頻度や利用者の質という点でも、通勤、通学で必ず使うということで広告への接触機会が高い。

キオスク購入額、売上に結びつくリーセンシー(購買直前に接触した広告が購買行動に影響を与える)という面でも、中吊り広告で見てキオスクで買うという、雑誌等の黄金の方程式がある。ちなみに、ビールは7月から交通広告が非常に増えてくる。これも交通広告のサインボード等で訴求して衝動を購買に結びつけるということで、ビール会社、飲料系などは特に交通広告をよく使う。

JR企画の1万人調査の資料で、媒体イメージについては、駅看板は非常に目立つということで位置づけられている。

銀の鈴広場に情報端末

IT事業についてだが、まずインターネット以前に何をやっていたか。もともとNKBは昔から通信関連で何か成し遂げたいという思いがあり、広告事業で上がってきた利益をさまざまな通信関連事業やコンピュータ関連事業にずっと投資してきた。

例えばJR東京駅の「銀の鈴広場」だが、公衆回線自由化の直後、情報通信端末等を設置してNKBで作った。現在のインターネットのように、一般の人が普通にネットワークにつながるというのはなかなか難しかった時代だ。

銀の鈴広場というコミュニティスペースを作って、そこに1台端末を置かせてもらい、不動産情報やアルバイト情報等を発信したりしていた。この場所は工事者責任負担といって、工事費をNKBが負担して、その代わり端末を置かせてもらう、というものである。その手続きに約250回の決済印が必要だったと聞いている。

それ以外にもタッチパネルの事業等、いろいろ実施してきた。新規性があって、運輸大臣賞をもらったこともあるが、事業性が見えてくると大手が参入してきてなかなかブレイクスルーしないということが、通信、コンピュータ関連の事業に関してはあった。やはり本当に大きい企業、メーカーが本気になってくると、なかなか太刀打ちできないところがあり、挫折の連続だったようだ。

インターネット以降のIT事業

事業的に結構難しいと思い始めた頃、「インターネットというものがあるらしい」ということで、社長の滝とぐるなびの首脳陣が某企業の研究室に伺った。その後、「インターネットでもう1回やってみよう」ということで、いろいろサービスを立ち上げてきた。

1995年、1996年あたりに、いろいろなサイトを立ち上げている。例えば会員制のオンライン囲碁対局サイトがある。碁石が白と黒なので、「パンダネット」という名前にした。 1996年には「ぐるなび」を、NKBのネットワーク事業部の1つとして始めた。社長と、当時入社したばかりの女性社員が2人で立ち上げたサービスである。これが今では彼女は取締役になり、数百人の雇用を抱えるような会社になった。

「えきから時刻表」も、1999年からサービスしているが、時刻表検索サイトとしてはメジャーなサイトだと思う。経路検索的な機能もあるが、時刻表で辿っていくような探し方ができるサイトである。

トラベル関連の事業は、現在はぐるなびに移管しているが、もともと、「旅の手帖」という媒体があり、それと一緒に始めた事業である。食と旅は関連性があるということで、ぐるなびに統合してやっている。

「ぐるなびWedding」は、もともとNKBでジョイジョイWeddingという結婚式場紹介事業を手がけていた。昔はJR駅ビルや商業施設の中にリアル店舗の紹介所を設けてやっていたが、それをWebに切り替えて、2006年からぐるなびの中に取り入れている。 「SURF&SNOW」は全国のスキー場検索サイトである。これらは今ぐるなびに事業統合されている。

Let's Enjoy TOKYO

NKBとして運営している中心のサイトは、「Let's Enjoy TOKYO」である。2004年4月1日に開設した。当時の営団地下鉄が、民営化に向けての第一歩ということで、東京地下鉄株式会社(東京メトロ)に変わったタイミングで、このサイトを立ち上げた。東京メトロとNKBの共同事業というスタンスのサイトである。サイトのコンセプトは、「東京のお出かけをもっと楽しく、もっと便利に」。その点をわかりやすく提案している。

いろいろな私鉄が沿線の情報サイトを立ち上げているが、東京メトロの場合、東京全体の交通インフラともいえる事業者なので、沿線サイトというスタンスよりは東京全体のお出かけ情報を出すサイトにしようということでやっている。

現在、ユニークユーザーが約161万人、登録会員数は約21万人である。また、Let's Enjoy TOKYOで探せるスポット情報は約33,000件、イベント情報は月間ベースで8,000件、年間でいくと約10万件のイベント情報、催事情報がある。また、特派員情報というCGM型の情報が約3万件ある(いずれも2006年12月末時点)。

Let's Enjoy TOKYOのサービスは、先述のコンセプトがベースにあり、ついでにお出かけしたくなるような情報も同時に提供している。

例えば、ある人が映画を見に行こうとしたとき、その前にギャラリーで展示会を見ようとか、周辺にあるショッピングスポットで買い物をしようとか、映画を見た後に食事をしようといった具合に、一次目的に付加してさまざまな情報を提供することをポイントとして掲げている。

外出行動を喚起する情報

無目的なユーザーのお出かけ行動喚起、行動支援というのは、週末何をしようかとか、仕事を終わった後にそのまま家に帰るのもつまらないというとき、その人にとっていいお出かけ情報を的確に出していくことを目的に掲げている。その結果、外出行動が喚起されて、お出かけが活発になって、鉄道事業者的にはそれによって運賃収入の向上にもつながる。

Let's Enjoy TOKYOの情報の構造としては、スポットのデータが33,000件あり、随時更新されるイベント情報、バーゲン情報等を同時に発信している。

それに加えてCGMである。2004年に立ち上げた頃にはCGMとは呼んでいなかったが、特派員情報という、お出かけ情報に特化したブログライクな情報がある。 情報がばらばらに存在しているのではなく、緯度経度の位置情報、駅情報、地図や行き方という情報が必ずベースにある。それに加えて特集や連載といった編集型のコンテンツを用意し、サイトに来てくれたユーザーをいろいろな切り口で楽しんでもらってもてなすことを基本ラインにしている。それぞれに現象としてはリンクする形でつながっているというのが、Let's Enjoy TOKYOの情報の構造である。

さまざまなカテゴリーの情報がある。例えば上野の展覧会情報。それからビューティー系、デトックス系サロンの特集等、カテゴリー別に特集が載っている。 イベントのランキングもあり、東京で旬なイベントを紹介している。

グルメ情報は、結構ぐるなびと組んでやっている。ショッピング情報は店舗の特集をしたり、さらに深掘りして、バレンタイン等に連動した特集をやったり、ホテル、映画、スパ等の情報がある。これら特集は、常時5つくらい走らせている感じである。

仕事帰りに行けるようなスクール情報も、お出かけという切り口で出している。また、アート系の情報や、コンサートや演劇、レジャー、スポーツ、暮らしといった生活密着系の情報を立ち上げた。

ブログライクなサービス

このサイトにある「特派員」というのが、ブログライクなサービスと説明したものである。ブログ=日記というイメージがあるが、Let's Enjoy TOKYOでは、その人の個人的なつぶやきより、「出かけてすごく楽しかった、それをみんなで共有したい」ことをポイントにしている。クチコミというより、こちらから提供しているスポット、イベント情報と合わせての、1つの情報といった切り口、考え方でやっている。

さまざまなお出かけ情報を発信しており、外国人が花見に行ったときの情報なども載っている。旬のキーワードとして、浅草とか、カフェとかの特集があるが、こういう情報を特派員情報で出している。

情報の探し方はいろいろある。ある人が週末にショッピングをしたいと思って、複合施設を選ぶ。そこで、お台場方面に絞り込んでみる。例えばアクアシティでどんなイベントをやっているのかを見ると、「明日、ラーメン国技館がオープンする」という情報がある。おもしろそうなので行ってみたいが、そのまま終わるのもつまらない。ということで、周辺の情報を一緒に出している。

周辺のスポットやレストラン、また周辺で他にどんなイベントをやっているか、周辺の映画館で公開している映画はどんなものがあるかといった情報を同時に出している。その映画の上映時間も確認できる。

ついで、ついでにいろいろなカテゴリーの情報を見ていくので、足あと系の機能を付けておくことで、今まで自分が見たページがどこにあるかというのを残している。この中で気に入ったものをお気に入りに登録することも可能だ。

週の頭に気になる情報を見つけても、週末には忘れたりすることも多いと思う。そこで忘れても思い出せるように、週末にその情報をもう1回メールで届けてもらうようなことができる。つまり自分のメールアドレスに、その情報をリマインダーで届けることができるような機能も提供している。

情報をひもづけ

位置をベースにしてさまざまな情報が結びついていると先述した。例えば銀座三越のページなら、まず銀座三越自身が発信している情報がある。それに対して、周辺の情報があり、ここでついでの情報を見つけてもらうこともできる。

さらに、銀座三越を見ている人が他にどんなページを見ているかを知ることができる。例えば三越を見ている人が銀座松坂屋、プランタン銀座等を見ている。あるいは日本橋高島屋を見ている人が日本橋三越本店も見ている。見ていると知らないうちに東京の外に出ていることもある。

もう1つ、三越に行った人が実際に書き込んだお出かけ情報が、クチコミ、画像付きの特派員情報という形で出る。三越が発信している情報を補完する形で、行ってきた人たちが投稿して「ひもづける」というボタンを押すと、三越のページにひもづけた形で出せる。利用者からはお店と特派員の両方の情報が同時に見られるので、いろいろ判断することができる。

例えば、「お薦めミニクロワッサン」という、実際に三越に行った人のコメントがあるとする。この特派員情報から入ってきた人は、「おいしそうだ、どこへ行ったら食べられるのだろう」と、そこから三越のページに飛べるようになっている。

このように、1つの店舗施設やイベント情報にユーザーの情報をひもづける。そのベースになっているのが緯度経度、駅の情報である。そういうものをベースにして統合的に出しているのが、Let's Enjoy TOKYOの今の形になっている。

メディア接触の変化

いろいろなメディアを連携してやるというのは、概念として、考え方としては結構あったと思う。ここに至って言われるのは、Webの登場という部分が大きいのではないか。 そこでクロスメディアの定義として、マスメディアに加えて、インターネットやクチコミといったものも活用するトータルなコミュニケーションということを、仮の考え方として置いている。

背景としては、インターネットの登場によって、生活者のメディア接触が変わってきているのではないか。一般論だが、特にブロードバンド環境が整備されてくる中で、インターネットの接続時間が爆発的に伸びている。

ネット視聴率のネットレーティングス社から、「ページビューとかユニークユーザー数という指標も大事だが、これからは一般のインターネットユーザーのインターネット総接続時間に占める自分たちのWebサイトのシェアがどれくらいあるのか、滞在時間のシェアがどれくらいあるのかということが重要だ」という話が出た。そういうところは当社でも気にしている。

アテンションエコノミーというか、昔はある程度マスメディアでユーザーの知覚の閾値を超えるくらいの情報接触機会を提供すれば、その後は購買に結びつきやすい1つの流れがあったと思う。

昨今、1日に人が接触する広告情報の量は約3,500件あるということである。もっとあるかもしれない。人々がそれらを全て処理しているとは思えない。そこは選択的に排除したりしているのだろう。

AISASの中で

AIDMAでいうA(Attention:注意)の部分を獲得すること自体、非常に難しくなってきていると思う。最近はAISASという言葉が出てきている。これは電通がコピーライトを持っているということだが、アテンション、インタレスト、サーチ、アクション、シェアといったモデルがよく言われる。

単純にこれで全て説明できることではないと思うが、わかりやすいので、これをベースに話をしたい。まずアテンション、インタレスト、サーチ、アクション、シェアということが、Web2.0系の本やブログのオピニオンリーダーの話でも出てくる。

Webが絡んだ形では、インタレスト(関心)の後にサーチ(検索)というプロセスが入る。カカクコムのような比較情報系サイトや、単純にインターネットで検索するという流れがこの間に出てくる。

それを見て判断してアクション(行動・購入)を起こし、アクションした経験の後、満足すればそれをシェア(共有。商品評価など)する、不満足な場合も、ネガティブな方向でシェアする。これがクチコミという形になったりもする。

AISASモデルの中でどうするかというと、AとIに関しての基本戦術は、ターゲットに応じてしっかり媒体宣伝すること。それから、ある程度情報を知ってもらわなければいけないので、知覚の閾値を超えるためのいろいろな手法が相変わらず必要だ。

それから、飽きさせないクリエイティブが必要である。ずっと同じクリエイティブが続いているとターゲットは慣れてしまうので、そこのところを地道にやっていく。Web上であれば、バナー広告を同じコンテンツでも、あるサイクルで変えていく。

サーチになると、ファインダビリティーの担保というのは、ユーザーが興味を持って検索等で探したときに、きちんと見つかるようにしていこうということである。もう1つ、来てくれるのはいいが、その後コンバージョン、アクションを起こしてもらうためのコンテンツが必要である。

シェアをする。ポストコンタクト、つまりコンタクトした後に、ユーザーとの関係が続くように、そのユーザーが情報をシェアできるような参加型のベースを持っていることが必要だと思う。

1年間で約2.4倍増

Let's Enjoy TOKYOの事例でいくと、開設時期はWebメディアの事業としては、2004年なので後発であった。ここのカテゴリーでは先行のサイトがあったので、最初の課題はアクセスアップであった。基本の戦術としては、プッシュ型PRということで、東京メトロ全駅でのポスター展開とサーチエンジンマーケティングを中心に行った。

東京メトロ全駅のポスター展開をやらずにWebだけで集客するということも、サーチエンジンの利用が高いので可能は可能だが、ブランド認知に至らないことが結構多い。知らない間に使っていたというようなことが増えてくるので、そこはプッシュ型のPRと組み合わせている。

その結果、2005年と2006年を比較すると、サイト名称で検索してきてくれるユーザーがこの1年間で約2.4倍増えた。この場合、トップページが検索した後のランディングページになることが多いので、ユーザーの回遊率が非常に高い。サイトのアクセスを伸ばしていく、媒体としての価値を上げていくということには、非常に寄与していると思う。

また、ポスター展開というのはボディーブローのようにずっと効いてくるので、現状でも有効である。アクセス推移では、前年比250%増で推移している。

映画とのタイアップ

浅田次郎原作の映画「地下鉄に乗って」でタイアップをした。展開時期は、2006年4月から11月であった。東京メトロが撮影協力していた。狙いとしては、作品のプロモーションと、高い注目度をフックとしたLet's Enjoy TOKYO自身の認知アップである。

結構幅広い作品ターゲット層だったので、ここでも交通広告を絡めた。主要な展開としては、メトロの駅で、映画の主演女優に毎月装いを変えてポスターに登場してもらった。有名タレントは非常に強いので、アクセスのほうにも寄与している。

4月は「レッツで会いたい」という、この女優がLet's Enjoy TOKYO会員になったというポスター、夏場は花火の時期で浴衣を着てもらい、10月は映画の本編の時期に近かったので、「地下鉄に乗って」のイメージに合うようなクリエイティブにした。

Web展開はブログや写真コンテストや、独占インタビューを同時に行った。特設ブログを8月から11月に展開したが、この女優名で検索してくるユーザーが、8月、9月、10月とあって、11月で跳ね上がっている。特設ブログのページビューは、公開後少し下がったが、Yahoo、Google経由のアクセスによって結構増えている。

後半には展覧会の集客プロモーションということで、駅において、ポスター連動、アートウォークといったものを行い、同時にWebの展開も行った。

Let's Enjoy TOKYOの強み

AISASのモデルの中で、Let's Enjoy TOKYOの場合は、交通媒体や、場合によってはLet's Enjoy TOKYOサイトがAとIの役割を果たして、サーチとアクションの部分でLet's Enjoy TOKYOの特集のコンテンツがその受け皿になるような形をとっている。シェアの部分で特派員情報があって、特派員情報が増えれば特集とのリンク、相互リンクも増えるので、コンテンツに対してポジティブにフィードバックされてくるというような仕組みになっている。

強みとしては、一連のAISASのモデルをワンサイドで完結的に実現しやすいのが今のLet's Enjoy TOKYOなのではないかと思っている。交通媒体というマス型のパワーを持ちながら、コストパフォーマンスが高く、高いリーチ、高いフリークエンシー、高頻度のクリエイティブ変更が可能である。

それから、検索ユーザーを引き込むための各種施策、SEO対策やランディングページを最適化すること、そして情報編集力をベースにしている。それから、経験後の情報シェアでは、CGMのプラットフォームを提供している。

単なる媒体のミックスということではなく、ターゲットとなる人を中心に据えて最適なメディアを考えるということで、Let's Enjoy TOKYOの場合は、キャンペーンの規模に合わせて、Web単独でやったり、駅との組み合わせをしたり、使い分けをしている。

2007年2月9日PAGE2007コンファレンス「C6 クロスメディアの進化」より(文責編集)


会報「VEHICLE」2007年5月号 Vol.19 No.2通巻218号

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2007/08/29 00:00:00


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