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印刷業界がデジタル印刷に取り組む今後の方向

周知のとおりデジタル印刷機の性能アップにより出力される印刷物の用途も拡がったことからBF印刷業界の市場も様変わりしている。かつてはBF事業の中心であった連続帳票は影を潜めており変化にいかに対応できるかが業界として求められている。対応するひとつの切り口にDPS(Data Print Service)とPOD(Print On Demand)があり、最近ではその融合が図られている。

またデジタル印刷をビジネス展開していくにはデジタル印刷だけでなく、オフセット印刷機とデジタル印刷機を組み合わせた製品企画も求められている。

DPS・PODの変遷

DPSが始まったのは1980年代である。モノクロの高速プリンタが開発され、企業から企業または個人宛に発行するプリント業務を請け負っていた。

POD は1993年イギリスのIPEX93で液体トナーを使用するE-Print1000と粉体トナーを使ったDCP‐1が発表された頃から始まる。この時期が産業向けフルカラーの創生期になる。 

デジタル印刷の新しい展開

昔から日本ではカラーに対する顧客の階調表現などへの要求が厳しい。しかし、最近ではデジタルプリンタの品質についてトナー方式、液体トナー方式、インクジェット方式等はオフセット印刷領域にかなり近くなっているといわれておりその評価も高くなっている。 このようなことからフルカラープリントも以前とは違ったかたちで使われている。例えば請求明細の場合、今まではトランザクションしかなかったのがこれをフルカラー化して請求明細と広告を一緒にするという要望がある。つまり、トランザクションとプロモーションを合体したトランスプロモという流れを作っている。

オフセット印刷との融合

PODにおける日本での問題点はプリントコストが高いことである。海外では2000〜4000枚までPODで処理しても採算が合うが、日本では500枚が限界で、それ以上になるとオフセット印刷のほうが安い。これが、今のプリンタ業界が産業界に進出できない大きな要因だ。 商業印刷用のオフ輪とインラインフィニッシング、高速デジタルプリンタの組み合わせにより低価格で多量に可変情報のチラシやDMを作る取り組みも行なわれている。日本ではまだあまり普及していないようだが、アメリカでは多いようだ。この点が日本の印刷産業の中で不足している部分もある。

デジタル印刷への取り組みの方向

デジタル印刷にこれから必要なものは、付加価値を生み出す創造性と、デジタル印刷とオフセット印刷の特徴を生かした複合製品の開発だ。簡単なプリントだけというものを離れ、印刷業界としてはハイボリューム、ハイクオリティー、ハイバリューの仕事に取り組んでいかなければならない。

  また、PODは新聞用紙への展開や、高級出版物、ラベルやパッケージ、DVD、Webなど1つのデータを印刷だけでなく他の分野にも提供することができる。これからのPODはVariable data publishingへの変化が期待される。そして、この市場に印刷業界がどのようにかかわっていくかが課題だ。

(「JAGAT info」2007年10月号より抜粋)

2007/10/28 00:00:00


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