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有効なメディア設計で顧客を取り込む

効果的なメディア媒体を企画し、クライアントに提案するコンテンツ・メディア・ミックス株式会社 取締役 酒井大輔氏にお話をうかがった。同社が運営しているサイト「PISTIA(ピスティア)」と「Vi-catch(ビキャッチ)」について、ユーザーのライフスタイルやし好に合わせたメディア設計とプロモーションを紹介する。


口コミサイトで新規客をロイヤルカスタマーへ

「PISTIA(ピスティア)」と「Vi-catch(ビキャッチ)」は姉妹サイトという位置付けである。「PISTIA」が大人の女性を応援するトータル情報サービスサイトで、「Vi-catch」が「美・健康・癒し」に関する店舗の口コミサイトである。このサイトの周りにフリーマガジン、モバイル、イベントを連動させてユーザーロイヤルティの高いメディアプランニングを実現している。

これらは、もともとDM制作や発送を行うA社の媒体である。

「『顧客データベースを持っていること、配送を圧倒的な安さでできることを生かした新規ビジネスを展開したい』と相談されたのがきっかけです。そこで、データベースを活用したクロスメディア展開を提案しました」(酒井氏)

ターゲットは30代の女性、テーマは「美・健康・癒し」を意識したメディアを作ることになった。計画した当初は、女性をターゲットとしていたわけではなかった。しかし、A社の強みである「配送」、つまり「サンプルを送ること」に目を向けたのである。サンプルやカタログの送り先を考えた結果、「男性よりも女性」「可処分所得が高い30代の女性」に行き着いた。女性が相手ならテーマは「ファッション」にしがちだが、実は「ファッション」よりも「美・健康・癒し」のほうが財布のひもが緩みやすいのである。

こうしてまず、「PISTIA」が作られた。酒井氏は、サイトを作る前に「ダイエット」「癒し」などいくつかのワードでネットを検索し、競合しそうなサイトをチェックした。

「どのサイトもデザインが良くないんです。デザインを意識してメディアプランニングすれば、いい広告主が付くはずです。いい広告主はそれなりのユーザーが集まるメディアを求めています。つまり、リッチなユーザーが集まるサイトを作れば、自然とブランド力のある広告主が集まるわけです」(酒井氏)

「PISTIA」は女性誌『CREA』『FRaU』を意識し、知的で高級感が漂うイメージに仕上がっている。シンプルで美しいデザインの中に「Diet」「Food」「Beauty」「Life」「Travel」「Sports」の6つのテーマに沿ったコンテンツがある。会員になると、ビューティー情報、会員特別情報などを知らせるメールマガジンや、フリーマガジンなどが送られてくる仕組みだ。

姉妹サイトである「Vi-catch」は、「エステ」「エクササイズ」「ヨガ」「スパ」「マッサージ」などの1500店舗(2007年9月時点)を検索できる口コミサイトである。会員になると、実際に自分が利用した店舗の感想を記入できる。ユーザーはその口コミを元に、今はやっているお店、自分とし好が合う口コミリストを見つけることができる。

この中から美容に興味がある人だけを抽出し、「PISTIA」へ誘導するのである。口コミから人を集める「Vi-catch」を入り口に、より高価な美容情報を集めた「PISTIA」へとユーザーを導き、育てることが目的だ。

PISTIA
「PISTIA」
Vi-catch
「Vi-catch」

コンテンツコミュニケーションに必要なメディア設計

「PISTIA」と「Vi-catch」のクロスメディア展開としてメールマガジン、フリーマガジン、モバイル、イベントなどがある。これらを考える時に「ターゲットのライフスタイルに適したメディア設計」に留意したという。

30代女性の行動パターンを考えると「家・会社・その他(ショッピングやエステなど退勤後の行動)」といった3つの日常ポイントが浮かんでくる。その人の生活行動に合わせたコンタクトポイントを作り、媒体を選ばなければならない。

「家で雑誌を見ていて『欲しい』と思っても、日々の膨大な情報にさらされることにより、記憶が消去され、購買には結び付きにくいものです。しかし、それぞれの生活の中のコンタクトポイントで情報を提供すれば、『欲しい』という欲求が再び喚起され、『購買』へと到達するのです。大切なのは『適切なターゲットに、適切なポイントで、適切なメッセージを送ること』です。

当社では、クロスメディアというよりもコンテンツコミュニケーションと呼んでいます。クライアントの商品をコンテンツと考え、これをいかにメディア、媒体の中へ入れていくかなのです。コンテンツでいかにお客さんとコミュニケーションできるか、という視点でメディア設計する…それが、コンテンツコミュニケーションです」(酒井氏)

フリーマガジン
フリーマガジン「PISTIA」

そう話しながら酒井氏が取り出したのがフリーマガジン『PISTIA』である。A4判、48ページ、オールカラーで、基本的に隔月発行としている。両サイトの会員と「Vi-catch」で紹介している店舗、街頭で配布する分として1回に20万部を発行している。

フリーマガジンは家や会社で回し読みをしてもらえるよう、「捨てられない、保存してもらえるフリーマガジン」を目指した。紙質を良くして、写真を大きく使い、全体にゆったりとしたレイアウトにしてある。書店で販売している女性誌と変わらない見栄えだ。

Webのコンテンツを元に、1号1テーマで編集している。この1号1テーマが特徴であり、テーマごとに表紙の色を変えている。例えば「旅行」がテーマの号なら青で、「癒し」がテーマの時は緑である。

「表紙の色を単色にしたのは、目立たせるためということもありますが、色の分だけさまざまなテーマを揃えることができるからです。例えば、今は赤、青、緑の3色(3テーマ)ですが、番外編として、春と秋だけ白い表紙の「化粧品特集」号を出すなどたくさんの可能性がありますよね」(酒井氏)

表4にはあえて広告を入れず、「PISTIA」のURLだけを掲載しWebへと誘導している。 そのほか携帯3キャリアに対応した「モバイルPISTIA」や地域特集に連動したイベントキャンペーンで「PISTIA」のブランド力を高め、会員獲得へとつなげている。

プリンターズサークル』11月号より一部抜粋

2007/11/11 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会