アメリカではいま、印刷チェーンやフランチャイズ展開が小規模の一般印刷企業との競争を強めつつ急速に拡大している。アメリカにある国際フランチャイズ協会によれば、印刷のフランチャイズは直近2年間で27%伸びたという。 アメリカの印刷チェーンの最大手は「FedEx Kinko's」である。「Graphic Arts Monthly 2007年7月号」による米国印刷業トップ101社のリストにおいて、同社の売上高は20.9億ドル、従業員数21000人で、現時点の店舗数は1500となっている。その売上額は、RR.Donnelley 、Quebecor Worldに次いで第3位の規模である。現在、印刷チェーンの大手はFedEx Kinko's以外、Office Max, Stapleがあり、これらの店舗数合計は 約4300である。
様変わりしつつ積極的な拡大を続けているのがフランチャイズである。様変わりとは、フランチャイザーとオーナー企業という形の上に、関連する事業のフランチャイズを傘下に収める親のフランチャイザーがある、という二重構造を作っていることである。アメリカの印刷フランチャイズとして名を売ったいくつかのフランチャイズはそのようなグループの一員になっている。
例えば、「Sir Speedy」は「Franchise Services」というフランチャイザー傘下のひとつのフランチャイズになっている。「Franchise Services」は、「TeamLogic IT」というコンピュータ関連のフランチャイズと「inkTone」というトナーカートリッジを扱うフランチャイズも傘下に治めている。印刷、コピー、看板関連の事業をフランチャイザーとして抱えている「Allegra Network 」のグループの一員に「American Speedy Printing」という名を見出すことができる。
図1は、上記のようなフランチャイズ・グループをまとめたものである。加盟企業各グループ、各フランチャイズの店舗数が全てわかっているわけではないが、図に記した企業群の店舗数合計は8000店舗程度にはなっていると思われる。
各グループともに、店舗数の更なる拡大とサービスメニューの拡大、充実を図っている。加盟店舗拡大のためには、オーナー企業が吸収合併によって成長することの支援も行なっている。投資も盛んでOffice Maxは、その900店舗に3年間で3000台の多機能複写機を導入する契約をゼロックスとの間で結んだ。
上記のような拡大には、インタネットの普及とその利用拡大があることは間違いない。AlphaGraphicsは、シカゴにメディア企業も保有している英国の大手印刷業のグループ企業になっているが、売上高10.8億ドルの中でオンラインの売上を8割弱伸ばしている。1900弱の店舗を保有するStapleは、注文をオンラインで受けて、製品の受け渡しはその店でも可能という仕組みを提供している。規模のメリットとネットワーク利用によるサービスの充実が拡大を支えている。
以上のようなアメリカの状況に対して、日本の印刷チェーンあるいはフランチャイズ展開を見ると、1990年代前半に大いに盛り上がった時期があったが、その後の進展はなく今日まできた。1994年のIPEXではIndigoが華々しく登場した。当時、アメリカンスピーディーの日本での展開があり、サースピーディー上陸の話もあった。
社団法人日本フランチャイズチェーン協会によれば、DPE・印刷・コピーサービスのフランチャイズチェーン数は2005年で17、店舗数4318、売上高は約900億円であった。図2は、DPE・印刷・コピーのフランチャイズのチェーン数、店舗数、売上高の推移である。印刷関連チェーン数は、1996年以降、2000年のピーク(32チェーン)に向かって急速に伸びたが、2002年以降は減少に向かった。ただし、産業全体では2000年以降も着実に伸びている。
1999年と2000年については印刷・コピーだけのデータがあるが、それぞれの年のチェーン数は、13、16で、店舗数、売上高はそれぞれ403、456および61億円、63億円であった。売上高は、同じ時期のDEP・印刷・コピーのフランチャイズ売上の7%,店舗数は約10%である。この比率が2005年も変わっていないとすれば、2005年の印刷・コピーのフランチャイズチェーンの売上高は60億円強である。「FedEx Kinko's」1社の売上の3%にも満たない。
日米における上記の違いの背景は、日本とアメリカにおけるPOD市場の相違に関連しているのかもしれない。
(2007年11月)
2007/11/09 00:00:00