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コンテンツからコンテクストへ

〜クロスメディアの視点で見たeラーニング〜

企業内教育や高等教育の現場において幅広く活用されているeラーニングは、近年大きな変化が起きつつあり、寸断なく進化を続けている。 クロスメディア研究会では、日本イーラーニングコンソシアム会長の小松秀圀氏に最新動向や事例などをお話いただいた。


eラーニングビジネスの現在

従来のeラーニングとは、コンピュータの中に教材とユーザー情報が入っており、これを使って受講者が自分で教材にアクセスして自分で情報を引き出し、学習していく自学自習型のシステムである。

一般的には文字、顔や声が出てきて学ぶというものが多いが、最近ではコンテンツの見せ方を工夫したものも出てきている。今ではiモードからも受講できるし、テストを受けることもできる。最近ではブラックベリーのような、ネットワークにつながった端末を利用してシステムが作られるようになり、これが大きな勢力を持つようになってきた。

仕事に必要な情報と知恵

今の社会では、構造化された情報(コンテンツ)と構造化されていない情報(コンテクスト・文脈)をすべてカバーして、社員が、仕事ができるようにしていかなくてはならない。教育業界はこれまではコンテンツしか学習者に与えてなかった。これらの情報を提供するだけで、活用は個人に任せるというと、放っておけば業務能力や処理能力にバラツキが出てしまう。このバラツキが企業にとって見えない損失である。

従来の教育業界は、「コンテンツを研修やeラーニングによって新人に与えること」が仕事だと思ってきた。しかしeラーニングはもっと伸びるはずだと思っているのに伸びない。

考えてみると、会社が本当にお金を使ってでも何とかしたいと考える中には実務層と指導層も含まれている。彼らが本当に必要とする情報はいわゆるフロー情報(コンテクスト)である。フロー情報が手に入るのは情報共有の部分とコミュニケーションの部分であり、決して構造化されたまとまった知識が必要というわけではない。

ところが、日本の場合はこの分野が活用できていない。そこに気が付かなければならない。 構造化された知識、情報、知恵、判断力については集合教育などのレガシーなeラーニングで提供されてきた。新しい学びの機能はそれプラス、情報共有のためにコンピュータに入っている情報+検索エンジンと、仲間の知恵の共有としてSNSが加わってくる。「これどうしたらいいのでしょう」ということを仲間に聞いたり、社内情報を簡単に検索したりできる。システムがこのようなすべての機能をカバーできた時に初めて、このシステムは中堅社員、エキスパートにも役立つような、しかも情報化社会、知恵社会に適したeラーニング環境になる。

つまり新しい時代の学びとは、指導者がまとまった情報を提供する行動主義教育から、多くの人やリソースの情報から学ぶ社会的構成主義へ変わっていくといえる。

企業におけるラーニングの新しい目標

従来のeラーニングの目標は、教育コストの削減や、さまざまな教育方法によりいつでも勉強できるというものであり、その時に提供するものは教材(コンテンツ)であった。これから狙う方向は生産性の向上である。従って目標はオフィスの生産性向上、マーケット参入期間の短縮、顧客、社員の満足度向上などと業務に直結した目標となり、そのためにはコンテクストと言われる細かい情報もすべて提供していく考え方になる。

(『JAGAT info』2007年11月号より抜粋・クロスメディア研究会)

2007/12/03 00:00:00


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