本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

DirectSmileとイメージパーソナライゼーション

プリントオンデマンドによる印刷サービス・ビジネスはITの進化とともに成長しており、複数のビジネス要素の融合で勝負する時代に突入したと言える。テキスト&グラフィックス研究会では、イメージパーソナライゼーションを実現するソフトウエア、DirectSmileと新たなマーケティング手法について株式会社サブライム取締役の木村信幸氏に話を伺った。

デジタルプリンティングビジネスの可能性

アマゾンで書籍を購入すると、「あなたが購入した本は、こういう傾向がある」と購入した商品を分析し、次に購入の可能性のある商品を「この本を買った人はこういうものも買っている」と提示される。
このように、購買履歴を活用するシステムや個人情報のデータベース化が、ますます進展している。このような背景から、One to Oneマーケティングが重要視され、必要とされている。

デジタルプリンティング、オンデマンドは、デバイスとして生産性が向上しているだけでなく、それを活用するための技術や市場も進化を続けている。例えばバリアブルプリンティングのソフトウエア機能も拡充されている。
これらのソフトウェアやデバイスを利用し、「個人化した情報に適応する印刷とは何か」を考え、顧客サイドの立場からビジネスモデルを構築することが重要である。

デジタルプリンティングによって、クライアントの問題点を先回りして解決するソリューションが可能となる。トラディショナルな印刷ビジネスモデルは、技術オリエンテッドで、受動的な、マス印刷である。それに対し、ソリューションモデルとは、マーケティングオリエンテッドで、能動的であり提案型である。ソリューションモデルは、顧客を対象として強く意識している。
さらに、ソリューションモデルはデジタルプリンティング中心となる。マスマーケティング、マス印刷、大量印刷がなくなることは絶対ないが、数は減っていくだろう。そしてバリアブルプリント、パーソナライズ印刷と、パーソナライズ化していくだろう。

ポストバンクのWeb to バリアブルプリント

ドイツの郵政民営化企業ポストバンクは、顧客向けのDM製作を、Web to バリアブルプリントに切り替え、めざましい成果を挙げた。顧客がネット上で質問に答えると、翌々日には手元に資料が届く。資料はカスタマイズされたデザインで、カスタマイズされたオファーが入っている。デザインは、DirectSmileによって、年齢・子供の有無・平均年収・男女の4種類のカテゴリーと21種類のデザインを掛け合わせている。

1日4,000通、月12万通刷っている。レスポンスレートは35%である。Webサイトは、受注確度の高い顧客が集まるところである。質問に答えてくれる人は、温度(関心)も高い。温度の高い顧客に商品を購入してもらうには、Webサイトを閲覧してから第一アプローチまでのスピードが最も重要である。そのための仕組みがWeb to バリアブルプリントである。印刷ビジネスで言うと、月に12万通出すのは、悪い仕事ではない。仕組みを作ると自動的に動き始める小さなロングテールである。

パーソナルカレンダー製作サービス

日本でもあるDirectSmileのユーザーが、2006年からパーソナルカレンダー製作サービスを展開している。カレンダーの写真の中にビジュアルに名前を入れている。たとえば、落書き風の文字で書かれていたり、子供が砂浜に石で書いている。グラフィックの中に自然に書かれている。

成功のポイントは、クライアントがターゲットとしている優良顧客へのギフトとしたことである。カレンダーの売れ行きは好調である。昨年ピーク時は月2,500本ずつ出ていた。これを1本3,000円で販売している。

成功している会社は、ビジネスモデルという視点を持ち、実践的なマーケティングを行っている。自社の強み、自社の武器、自社が勝てるターゲットがどこにあるのかを知っている。自社が勝つための仕組みが構築できている。

(この続きはJagat Info 2007年11月号、詳細報告はテキスト&グラフィックス研究会会報誌 Text & Graphics No.261に掲載)

2007/12/02 00:00:00


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