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デジタルプリントの用紙・インキと適性(その2)

■デジタルプリント用紙

デジタルプリントの用紙とはデジタル印刷またはデジタル印刷機のために特別に設計された用紙のことだといえる。汎用的な紙で何にでも打てるプリンタもあるが、基本的には特化したもののことをいう。

要求品質として電子写真では電気的特性は当然のことであり、他に耐熱性や熱効率、シリコンオイルに対する適性等も紙によって異なり定着性も変わってくる。インクジェットではインク受理性があげられる。ビジネスフォーム印刷は完全にフルカラープリンタというわけにはいかない。耐擦性も必要になるし、耐光性等も重要なポイントである。

電子写真でもインクジェットでも両方できるようなものがあればベストであるがそういうものはできない。また、メディアに対する多様性ということでいろいろな形態に対応していくことも必要である。やはり後加工への適性を考慮しなければならない。

■メーラー加工と製本加工

後加工についてまずメーラー加工がある。メーラー加工で手軽な方法はジェミッツ加工によるメーリングである。これは簡単な方法ではあるが加工単価が高いこと処理能力が低いことフィルムを使ためにコストやセキュリティー面から敬遠されがちだ。

圧着DM加工は、圧着紙を使うタイプとアツ糊で処理するタイプ、ニスで加工するタイプがある。このときも各トナー及びフューザーオイルに対する問題があり、それぞれのハードルを越えていく必要がある。
1996年に製本機メーカーとプリンタメーカーが共同して無線綴じをインライン加工機として発売した。以後、プリンタからの出力物には製本ラインが接続されるようになっている。デジタルプリントと製本機のインライン化が完成してから各プリンタメーカーでオプションとしていろいろなものが作られている。くるみ製本や中綴じ製本をインラインで作る動きもある。

インライン加工とオフライン加工についてはそれぞれ向き不向きがある。インラインのメリットは仕上がるまで人手がかからない。人手がかかると人為的なミスが出やすい。また、少人数で自動化ができることと省スペースでできること等があげられる。

デメリットは、プリンタ速度に依存するため、製本能力が高くても速度に限界がある。また、サイズの変更が難しく印刷のバラつきの影響が製本精度にでることもある。このようなことから、インライン加工にはセキュリティー性の高い製本、極小ロットの製本、時間を限った製本等がインラインの製品として適している。

一方、オフラインのメリットとしては、プリンタの仕様に依存することがなく後加工機の仕様で生産が可能である。印字後、静電気処理が終り用紙が落ち着いてから作業できる。また、印刷のズレなどを補正しながら製本でき、複数プリンタでもオフセット印刷とデジタルプリンタの印刷物をまとめて製本できる。

デメリットは人手を介すためミスが発生しやすく、オペレーターと加工時間が必要である。適している製品としては、製本能力が発揮できてロット数が多い製本やページ数の多い製本、プリンタの能力が制限されているもの、品質と精度を求められる製本などがオフラインに適した製品だ。

■デジタルプリントにおける後加工上の注意点

後加工の注意点には印刷面のトナーの剥がれや用紙の含水分低下で発生する静電気による障害、熱によるトナー定着方式の波打ち、用紙に対する印刷位置精度の低下などが後加工の問題として発生する。特にフルカラープリンタで熱定着によるトナー方式では用紙に対する影響が大きい。これは熱の影響だけでなくトナーの厚みの問題もあり、これを後加工でどうにかするというのは難しいことだ。しかしこれを解決しないと単なるプリンタ出力物にしかならない。

解決策のひとつとしてはベタ印刷面をできるだけ避けるということがある。特にフルカラープリンタの後加工で多く発生するためスジ加工をしながら折り加工を行う。一般的にこうしたことも行われているが、「言うは易く行うは難かし」という状況である。できるだけベタ印刷面の折加工を避けるということが最もいい回避策ということだ。また、加工時フューザーオイルとホットメルトの相性にも注意が必要である。

熱による紙の変化については用紙が波打ったまま製本するため製品形態が悪くなり、後加工時に詰まる原因にもなる。特にインライン加工機ではそれが顕著に起こるという問題が発生する。インラインのときは、プリンタの機種をできるだけ熱定着でないもののほうがいいが、フルカラープリンタの場合はそうもいかない。フラッシュ定着やインクジェットプリンタは問題ないが、熱定着のものを使うときは難しい。

もう1つは、オフラインの場合ではフィードを考慮したオフライン加工機にしたほうがいいようだ。特にフィーダの選び方は重要である。
連丁のプリンタでは紙揃いの静電気によるさまざまな問題を回避するためにロータリー式の加湿器を使うことにより乾燥を防止して波打ちやそり、用紙の縮小を解決するということが海外では行われている。


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(2008年1月)

2008/01/11 00:00:00


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