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旧態依然のワークフローでは競争力を失う

求人や不動産など昔情報誌と呼んでいたものも含んで、今日ではフリーペーパーというようになった。フリーペーパーは呼び名のとおり無料になったこととは裏腹に、情報誌的なデータの集まりというよりは読み物的な部分にも力が入れられ、紙面の見栄えもよくなっている。雑誌の一部を抜き刷り風にフリーペーパー化する例もある。こういったことが有料の雑誌にとっては購読者離れと広告離れという2重の脅威になっている。フリーペーパーは一般誌を喰って伸びるのか?

フリーペーパーは低コストだから印刷媒体として面白みがないかといえばそれは別物で、1ページづつDTPの手作業で凝った作りをしなくても、インパクトのあるグラフィックスを使うこともできるし、新聞のように紙質が少々悪くてもカラー印刷は向上している。それで企業のカタログでもB2Cのものはフリーペーパー化するものがあり、従来の高級感のある商業印刷物から印刷品質は落ちても、生活者に親しみをもってもらえるものができることに気づいた発注者もある。

有料の出版物の場合は、部数の増減が収入と支出に大きく関わるというビジネスモデルで部数が上り調子の時と部数が下がってきた時では支出の考え方が揺れ動く可能性もあるが、フリーペーパーは広告以外はほぼ収支固定なので一貫して支出を最低限にするとか、一定の考えの元に支出を下げる努力を続けていく場合が多い。そのため制作製造方法に関する合理的な提案が受け入れられやすい。これは原稿執筆からデータ管理、プリプレス、さらに印刷から加工まで共通していえることである。

コストダウンはいつの時代でもテーマではあるが、今までは各工程の内側でのコストダウンであって、トータルな発想でのコストダウンは関係者の調整が大変なので取り組み難かった。ネットワークの時代になって、従来のバケツリレー的なワークフローの制約が解かれ、次第に同時並行的に作業が進められるとか、ワークフローの逆転も起こり、無駄な作業や無駄な時間が削られていく。

最初のコンセプトでレイアウトをきっちり決めてから原稿を書くとか、レイアウトに合う角度でデジタルカメラで写真撮影することも行われる。そうしてもネットで転送してはめ込めば時間的に問題ない。いやワークグループの中心にレイアウト台紙があって、ディレクタや発注者が刻々と仕上がる様子を見張っていて、作業現場に指示をリアルタイムに行うという、究極の姿に向かっている。

従来の編集出版は、それに関わる人々が今までの仕事の進め方をなかなか変えようとしないのに対して、トータル最適化のためには新たに役立つものが出てきたら何でも使ってやろうというのがフリーペーパーの改善の進め方であるともいえる。フリーペーパーの紙面の一般誌化が意味するところは、従来の雑誌が旧態依然のワークフローでは利益率が減り競争力を失っていくことだろう。

テキスト&グラフィックス研究会 会報 Text&Graphics 2007年11月号より

2008/02/10 00:00:00


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