2008年2月8日PAGE2008コンファレンスのグラフィックストラックD6セッション「バリアブル印刷の動向」では、モデレータにトッパン・フォームズの技術本部本部長 山口 実氏、スピーカーに富士ゼロックスのECS部長カラーセンター長 杉田晴紀氏、コダックのRegional Business Director Lois Lebegue(ロイス レベーグ)氏に、成長を続けるデジタル印刷分野におけるバリアブルプリントの動向についてお話を伺った。
■商業用デジタル印刷の伸び
国内のDPS(データプリントサービス)、POD(プリントオンデマンド)市場予測は、今後数年間約10%の成長(矢野経済研究所調べ)が続くようである。とくにカラープリントの割合も増加していくという。
PODの市場は、企業内のデジタル印刷機による印刷などもあるが、やはりその多くは、商業用デジタル印刷機による小部数印刷やバリアブル印刷が中心になるだろう。
DPS用の高速デジタル印刷機は、1980年代後半から登場し、2005年頃からの拡大期にはベンダー各社からいろいろな機種の商業用フルカラーデジタル印刷機が提供されはじめている。
最近のデジタル印刷機は、品質面においてオフセット印刷に近い色領域をもつようになってきており、見劣りしないレベルに達しつつある。
印刷コストは、日本では300〜500枚がデジタル印刷分野とされているが、アメリカの1,500〜2,000枚と比較するとまだまだ差があるのが現状である。
また、ハイブリッド印刷や後加工設備の充実も商業用デジタル印刷の拡大に大きく寄与している。環境対応では、省資源として必要数を必要対象者に提供する無在庫+バリアブルによって、もったいないの具現化が実現する。
■デジタルプリンティングビジネスの新時代(日本型進化にむけて)
デジタルプリンティング(DP)ビジネスの進化における仮説
・DP1.0 (生産、1990年代後半〜2006年)
プロダクトin
機能・コスト・品質・納期を重視
・DP2.0 (マーケティング、2006年〜2011年)
マーケティングin
企業のパートナー
ワンストップサービス
・DP3.0 (感性、2011年〜)
コミュニティin
「分かち合う」「繋がる」
アイデンティティ
現在では、パーソナルコミュニケーションへの流れが目立っている。アメリカのデジタルプリンティングにおけるビジネスモデル(2007年12月顧客訪問例)では、イベントベースマーケティングをおこなっていた。具体的には、「新たなお客様発見 → 深堀・同機付け → 顧客接点強化」というアプローチになる。
アメリカ流では、オフセットとデジタルの多様な価値を提供するものであり、ハイブリッド生産ではない。価格競争とオフセット生産性改善の限界は見えている。したがって、経営判断としてのデジタル投資、すなわち早く移行して、会社を変えるということである。
一方、日本はオフセットの高い生産性ゆえに、逆に世界のデジタルビジネスダイナミクスに乗り遅れるリスクが大きいとも言えるのではないだろうか。(リスクと表裏一体)
日本では、本格的なイメージバリアブルサービスのビジネスモデル展開によって市場が拡大されるだろう。パーソナライズイメージを利用することによって、記憶に残る宣伝効果を発揮できる。また、可変データのパーソナル化をAdobe InDesignと連携するなど、新しい試みもでてきている。
ここで、皆さんにとって今までもっとも心に残るOne to Oneとはなんだったであろうか。先日ある学校の受験会場の掲示板に「どうせ出来ないと思って何もしない人より、駄目かもしれないけど、やってみようと努力する人になりたい。健闘を祈る。○○学園長 ××××」とあり、心を打たれた。One to Oneとは、メッセージがユーザの心に響かなければならないだろう。
まとめとして、「何に特化するか → そのために何をするか?」である。デジタルプリントは、技術や製造ではなく、経営戦略のテーマであり、経営トップの判断が大きく問われるのではないだろうか。
2008/03/07 00:00:00