出版印刷、商業印刷、事務用印刷など幅広い分野において、デジタルプリントが利用されるようになってきた。また、画質などの品質面においても近年のデジタルプリントは大幅な向上を図っており、今後ますます成長が予想されている。
デジタル印刷機の制御方式や吐出方式にはいろいろな種類があり、それぞれメリット、デメリットもある。デジタル印刷機の機構や特徴について、テキスト&グラフィックス研究会でお話を伺った。
■なぜデジタルプリントか
デジタルプリントを取り巻く環境として、印刷、IT、市場という3つのキーワードがある。
まず印刷の環境は、品質を含めオンデマンド機の生産性と可変情報処理の機能の向上があげられる。これらによって、高品位、大量のバリアブル印刷ができるようになってきた。ハードウェアとソフトウェアが進歩してきたということである。
次にITの環境がある。1980年以降、いわゆるIT革命と言われて久しいが、ブロードバンドの普及が大前提にある。2004年には、BBジャパン(ブロードバンドコンソーシアムジャパン)が創設され、ブロードバンドの企業体が集まって、インフラの整備等に力を入れて行った例もある。
また、次世代Webと称するWeb2.0も同じ時期に登場し、飛躍的に環境が整った。今までの個人的、個々のデータが、インフォメーションとして、さらに昇華して集積されてくるようになった。その結果、これらの大量のデータを要求に応じて分類、セグメントすることが容易になった。そういった背景があり、その上で市場の環境が整ってきたのではないだろうか。
背景、すなわちバックグラウンドが整ってきたから市場が伸びたのか。また、需要の高まりに呼応して機能が進化してきたのか。何とも言い難いが、デジタルプリントという確かな市場が出てきたのではないだろうか。
2006年の調査結果(矢野経財研究所調べ)では、ビジネスフォームの市場は年間約4,300億円であり、10年以上横ばいで推移している。しかし、ビジネスフォームの市場規模におけるデジタルプリントサービスは、最近10%以上の伸びがある。2006年を基準にすれば、2008年には約3割増、2010年にはデジタルプリントサービスを除く2,150億円に対して2,200億円と、過半数を占めそうな勢いである。
また、デジタル印刷機で出力するシートカットレベル(ショートラン+バリアブル)のオンデマンド印刷の市場規模は、モノクロに比較してカラーの伸びが著しい。やはりこの分野の伸びが高くなっていることが容易に推測できる。
■デジタル印刷機の歴史
デジタル印刷に限る話ではないが、まず基礎的、根本的なものが発見されてから技術革新がなされることが多い。アプリケーションなども開発され、最終的に市場が拡大していくのである。
インクジェットは、100年以上前に今のコンティニアス方式の基礎になる理論が出ていた。それが商業ベースに乗るのは、1951年にA.B.DickがVideoJetというプリンタを出してからである。
ただし、身近に感じられるようになったのは、1980年以降であり、このあたりで商業印刷、産業印刷に耐えるインクジェットが出てきた。その代表例が、当時のサイテックス(現コダックバーサマーク)であろう。その他、ワイドフォーマットやフラットベッド方式が産業用途に使われている。
一方、電子写真も歴史は古く、1938年にはCarlsonがXerographyの理論を提案している。それから次第に伸びていき、1990年代に入るとIndigo E-Printや、ロールに初めて対応したXeikon DCP-1が出てきた。
(続きはJagat Info 2008年5月号、詳細報告はテキスト&グラフィックス研究会会報 Text & Graphics No.266に掲載しています)
2008/05/25 00:00:00