■変貌した辞書と利用者層
専用端末タイプの電子辞書は年々普及しており、中高生や大学生・ビジネスマンなど、幅広い年齢層で利用されるようになってきた。辞書コンテンツも、国語辞典から外国語、ビジネス用語、家庭医学など100冊分を装備している機種もあると言う。
紙の辞書にない電子辞書の長所を挙げると、検索の容易さ、膨大かつ多種多様なコンテンツを小さな筐体に収容していること、また最近ではカラー液晶を使用して表示を分り易くしたものや、文字表示サイズを変更できるものもある。
専用端末タイプ以外では、DVDやCDで提供される辞書や、Webや携帯サイトでの辞書サービスも提供されるようになった。国内で何らかの電子辞書を使用している人の割合は、相当大きいと考えられる。
一方で、紙の辞書の出版はかなり低迷していると言う。少子化の影響などさまざまな要因があるだろうが、電子辞書の影響も小さくないことが想定される。
■製作側から見た辞書とワンソースマルチユース
印刷物と同時に専用端末タイプの電子辞書やWeb用辞書コンテンツを提供するには、XMLデータベースの構築とワンソースマルチユースの実現が必須となる。
印刷物と電子辞書を製作するためのデータを一元化することや、電子辞書やWeb用コンテンツへの提供方式がXMLであること、常に最新版データの提供が要求されるためである。
また、データベース中に使用頻度や難易度などの情報を埋め込むことによって、印刷物を製作する際に同一のデータベースから抽出した、さまざまな種類の出版物を製作することも可能となる。
以前の辞書の多くは、数年間などきわめて長い周期で編集をおこない改訂版を出版していたが、電子辞書が普及した現代においては、その出版・製作の方法は一変した様相である。
■広辞苑のデータベース構築と出版
大日本印刷では、XML技術を活用した編集支援システムを開発し、辞書などの出版コンテンツのデータベース構築と、印刷物製作やWebやモバイルサイト、電子辞書など各種のデジタルメディアへの出版を支援するサービスをおこなっている。
2008年1月に刊行された岩波書店の「広辞苑 第6版」では、このシステムを利用することで従来の3年の製作期間を2年に短縮しただけでなく、印刷物製作と同時にDVD版を完成し、携帯サイトや電子辞書版への展開も同時におこなうことができたと言う。
ニュースリリース:「大日本印刷 辞書類の編集支援システムを開発」
辞書のほかにも、学習参考書などの教育出版、法令集や製品マニュアルなどの分野では、コンテンツを再利用しデジタルメディアでも活用することが多い。このような分野では、XML技術を利用したワンソースマルチユースが必須条件となりつつあると言えよう。
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2008/07/01 00:00:00