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世界にひろがる生活文化創造企業

「世界にひろがる生活文化創造企業」を理念として発展してきた東洋インキ製造株式会社は、2007年に創立100周年を迎え、「世界に役立つスペシャリティケミカルメーカーとして進化する企業グループ」を企業目標として新たな挑戦を開始している。 印刷・情報事業本部オフセット事業部事業部長の境裕憲氏に、環境調和型製品やスペシャリティ製品を中心に、現在注力している新事業・新製品や今後の展開を伺った。


−−Kaleidoの評価や今後も含めた取り組みを伺いたい。

  当初は印刷会社にかなり反響があったが、最近はじわりじわりと、デザイナーやクライアントからの要望が増えている。既存4色機で広演色印刷を実現するために開発されたので、カラーマネジメントができない印刷会社では対応できない。そこで、当社が定めたカレイドプロファイル2.0への準拠を条件に「カレイド印刷可能印刷企業」として当社のサイトで紹介している。 単にインキを販売するという考えではなく、当社のカラーマネジメントセンターでは、プロファイル提供から運用まで印刷会社をサポートし、特に印刷機をどう安定させるかに注力している。
プリプレス上でカラーマネジメントを一生懸命やっても、プレス上でカラーマネジメントができないと意味がない。そこで、定期的にユーザーを訪問して、データを提供してもらって、ある程度時間を掛けて機長たちにも理解してもらっている。 今はオフセットのKaleidが主流となっているが、今後はUV・新聞Kaleidoを広げていきたい。 新聞印刷でもKaleidを使うと明確に違う絵柄になる。新聞の発行部数は減っているが、カラー化が進んでいるし、特に高級ブランドの全面カラー広告などに生きてくるのではないか。

参考だが、アメリカの印刷雑誌『GraphicArts Monthly』の表紙は現在UV Kaleidoで刷られている。アメリカだけでなく、アジア各国でもかなり評判が良く、クライアントからの指定もある。対応できる印刷会社は日本のほうが多いが、シンガポールなどでは実ビジネスが始まっている。

−−インクジェットなど、いろいろOEMで出回っているが、そのへんで動きはあるのか。今後の展開と併せて伺いたい。

  今のメインはワイドフォーマットのインクジェットで、一般の商業印刷、出版印刷、それからエレクトロニクス関係まで視野に入れた開発を進めている。インクジェットは商業印刷、出版印刷、バリアブルプリント分野まで拡大していくと思うが、高品位のバリアブルプリントではHPインディゴがかなりのシェアを確保している。 また、普通のオフセットインキやグラビアインキと変わらない校正用途に関しては、既にナノ分散、顔料合成技術、樹脂合成技術を持っている。ワイドフォーマットのインクジェットの品質は、日本製のインクが世界最高レベルであるので、現在の技術で十分グローバル展開できると考えている。
日本の印刷市場は既に成熟しているので、日本で培った技術を活用して海外でインキ事業を展開していく形になると思う。東洋インキは中国でもかなりのシェアを占めているし、今年6月にインドでもオフセットインキ事業を開始する。

−−これまでの国内での100年に対し、これからは地球規模での100年という感じになるのか。

  どの化学メーカーも自動車メーカーも、国内の成長プラス海外の成長で発展をしている。幸い、日本の印刷インキ技術は世界最高レベルなので、どこでも十分ナンバーワンのブランドを確立できるのではないか。

−−天然物由来の製品開発の経緯と今後の展開も伺いたい。

  以前より天然色素抽出事業の一環として、紅花などの植物抽出を行ってきた。植物原料として古来より防腐・抗菌の目的で用いられてきたクマササに着目し、独自製法で抽出したササエキスを用いた健康補助食品を2007年に製品化した。「リオナチュレシリーズ」として、天然物由来のスペシャリティケミカル製品事業の柱に位置付けている。 ケミカルメーカーとしては、原材料を化学合成して製品を作り上げるのが主流だったが、今後は、天然物由来の製品開発にも力を入れ、メイン事業として育てていきたい。

−−フリーペーパーの台頭など、印刷市場の変化にはどのように対応しているのか。

  オフセット輪転インキの新製品「WD LEO-X(レオエックス)」は高級紙からフリーペーパーまで対応でき、低級紙でもロングランが可能だ。独自の乳化コントロール技術と顔料分散技術により、抜群の高速安定性、ロングラン適性を達成した。予想以上にユーザーのリアクションがいい。いろいろな用紙を使ったカタログも非常に好評だった。 −−インキメーカーが紙とセットの見本を作ってくれると、仕事の話がスムーズになる。 紙媒体は、いろいろな意味で多様化している。LEO-XのXはクロスメディアを意識している。PODやインクジェットもあるし、いろいろな媒体との融合を考え、広告媒体も含めて多様なメディアにきちんと対応していきたい。デジタル印刷も、HPインディゴだけでなく、いろいろなデジタル印刷機、今までコンペティターだった製品も取り扱いながら多様化に対応していきたいと考えている。 東洋インキは、インキ事業が会社の大きな柱である。今後世界的にはまだ8%くらいは印刷需要は伸びることが見込まれるので、日本から東洋インキの技術を発信して世界中のマーケットに対応していきたい。

(『JAGAT Info』2008年6月号より抜粋)

2008/07/06 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会