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『印刷白書2008』――産業トレンドと印刷会社経営


印刷業界は、ネットワークとDTPの技術進歩に伴うプリプレス工程の付加価値低下に喘いできた。印刷会社でなければできないDTP領域は年を追うごとに減り、DTP技術の進歩と普及は合理化メリット以上の受注減少を印刷会社にもたらし、印刷産業の市場規模を縮小させてきた。

工業統計表によると、2006年の推計を含む全事業所の印刷産業出荷額は7兆108億円であり、いよいよ7兆円の大台割れが目前に迫っている。時間の経過がプリプレス領域の縮小による影響を薄めてきたが、メディアの多様化によるプリント系メディアの相対的な領域縮小が進んでいる。

余剰供給能力の増加と先に挙げたDTP技術の進歩は、印刷製品価格の低下を促進した。業界内では同業者間の価格競争が激化するデメリットとなる一方、発注者側から見れば上質な印刷製品が身近なメディアになるメリットがあった。上質紙にフルカラー印刷した上質なフリーペーパーが広告費だけで運営されるモデルの成立は、印刷産業の構造変化と密接な関係があるだろう。

価格低下は従来とは異なる印刷製品需要を誘発したが、現時点でそれは雑誌や書籍、折込チラシといった、従来型印刷製品の需要減少による利益低下を補完する位置付けにはない。特に2007年下期からの景気減速と断続的な用紙代値上げは、多くの印刷会社の収支構造を強く圧迫しつつある。2006年度の中小印刷業の営業利益率は2.1%(全日本印刷工業組合連合会「印刷業経営動向実態調査」)だったが、2007年度は1%台へ低下した可能性が高いと見られる。

従来は有料だった雑誌がフリーマガジン化する動き、従来はチラシだった情報を集約編集してフリーマガジン化する動きなどが活発化し、たとえば、チラシ=フリーマガジン=雑誌間における情報の流動性が高まっている。少子高齢化による人口減少社会の到来は、内需産業におけるマイナス成長の常態化を意味している。

縮む市場でメディアの変革をどのように機会と捉えて成長性を確保するか―――。クロスメディア対応、ワンストップサービス化、M&A…。印刷会社はいま、印刷に囚われることなく視野を広く持って脱デフレ時代に対応する必要に迫られている。


「印刷白書2008」は、2008年6月24日発売(一般販売価格30,000円、JAGAT会員企業には1冊を無料配布)。

(2008年7月)

2008/07/05 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会