いたましい秋葉原通り魔殺人事件は、ホコ天という非常に多くの人のいるところで起こった。しかもカメラ・ビデオを持ってうろうろしている人が多い中で‥。事件の直後にYoutubeに何がアップされているか見ると、居合わせた人が撮影した映像よりは多くのTVのニュースをクリップがあった。しかしTV局が撮影したのは犯人逮捕後現場が一段落あとのもので、パニック状態のものは居合わせた人が撮影したものをTV局がその場で集めたものが主体であった。
一般人が自分で録った画像は数は多くなかったが貴重なものがあった。現場では最初は何が起こったのかよくわからない状態だった。倒れている人を取り囲む人垣、アップにしてよく見ると心臓をマッサージしている。そこに救急車がやってくる。TVニュースなら待ち時間を編集カットしてしまうが、その映像は待っている間の長さや、その間に友人がどれだけ必死にマッサージを続けていたかを伝えている。映像そのものと別にカメラを持つ人の心理や気遣いも伝わってくるのがTVニュースとの差であった。
またアキバの情報を世界に向けて発信しているサイトの個人レポータが居合わせて実況中継をバイリンガルでしているものもあった。この人はアキバを愛している人なので、残念さというのが伝わった。このサイトは後日も献花台に訪れる人々を撮っていたが、当日の動画はYoutubeから消されている。前者も今は見ることができない。ニューヨークの9.11同時多発テロの際も、事件から少し立つと動画のupは削除されていったことが思い出される。
しかしアキバの事件もBlogには残っていて今でも読むことはできる。後ろから走ってくる犯人に追われて逃げていた人の体験談や、人が目の前で倒れて必死で110電話をかけていた人の話は、本人にとっても拭い去れない記憶であって、Blogがなくなったとしてもどこかで語り継がれるだろう。その人たちは当日に報道の取材を受けていたが、その人たちが語ったことの何パーセントが秒単位で編集されるマスメディアを通じて世に出たのだろうか? 今それらのBlogを見て思うことは、殆どのBlogは野次馬に過ぎないにしても、一部にはマスメディアよりもよほどリアルな情報があることだ。
(クロスメディア研究会会報230号より)
2008/07/22 00:00:00