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電子写真方式デジタル印刷機の進化

印刷産業向けのデジタル印刷機が登場し、15年前後経過した。近年では機能の高度化・専門化が進み、商業印刷・出版印刷から事務用印刷、産業用途など幅広い分野においてデジタル印刷が利用されている。
テキスト&グラフィックス研究会では、電子写真方式のデジタル印刷機について、富士ゼロックスの勝田勇生氏に話を伺った。

電子写真方式の原理と課題

電子写真の原理は、まず帯電することで感光体に負の電荷を与える。そこにレーザーで露光して画像を作る。その上にトナーを現像する。感光体から用紙にトナーを転移させ、最後は熱で用紙に定着する、という工程である。

電子写真のプロセスをYMCK4回繰り返すことでフルカラー画像が得られる。
2方式があり、4サイクルカラーとは、感光ドラムが1個に対して現像器がYMCKの4個である。小型で低コストだが、カラーの速度は白黒の4分の1である。
タンデムカラーは、感光ドラム・現像器がともに4個で大型となるが、高速化が可能である。現在、プロダクション機(POD機)はほとんどがタンデムとなっている。

像形成及びトナーの移動に静電気を使っている。静電気は不安定でコントロールが難しく、乾燥や多湿など環境に影響を受けやすい。転写部では、用紙を介して静電気でトナーを移動させる。用紙の特性により画像に影響が出る場合がある。
また、粉体トナーには、物理的に数ミクロンの大きさがある。感光体から中間転写体、中間転写体から用紙へのトナー転写を、物理的な高さがある中で行うので、電気的なコントロールが難しい。トナーを積み重ねると中に空気が入ってくるため、画質に影響を受けやすい。
さらに、4色のトナーを混合して発色させ用紙に定着させるため、熱と圧力をかける。そのため、用紙に影響が出て変形したりする。そうすると両面プリントしたときの表裏のズレに直接影響が出てしまうという課題がある。

露光技術による画質向上

富士ゼロックスの従来機は、レーザービーム2本で600dpiで画像を描いていたが、DocuColor8000からは2400dpiになった。32本のビームを出す面発光レーザー技術を搭載している。
600dpiでは、スムージングをかけてもある程度がたがたくるが、2400dpiではジャギー感がなくなる。
ドット・タイプも、より丸い形のドットを描くことができる。結果的に、ハーフトーンを書いたときの粒状性に影響する。特にハーフトーンの部分、ハイライト部分の再現性に大きく影響する。
600dpiでは環境の影響等でハイライト部分が多少飛んだり出てしまったりしやすいが、2400dpiなら、ある程度許容度が高いという結果が出ている。

見当精度を合わせる技術

表裏レジストレーションのズレは、用紙の変形と裏面プリント時の用紙の反転の仕方が主な要因である。
用紙の表面4ヵ所にトンボが付いていると考えてもらいたい。定着装置は紙を通したときにシワが起こらないように、鼓状に紙を横に引っ張りながら送っていく。横に引っ張るので、紙は台形になる。
その後、裏面をプリントするためにひっくり返すが、この時点でもう一度トンボを書いても、絵自体が伸びていて見当が合わない。さらに1回定着をかけると、また変形するので、結果的に表裏がずれていく。

それに対し、2400dpiを使ってイメージの位置をきちんと読み取り、最終的には画像が定着器を通った後に正しい形になるように画像をゆがめ、定着器を通ったときに正確な像が書けるようにした。機械の中に用紙の特性をインプットすることによって、画像補正をかけていく。
600dpiでは絵がきちんとできないが、2400dpiでは可能である。

DocuColor8000は、2400dpiとIReCTという技術で、カラーレジストレーションの精度を上げている。ただし、用紙の特性を機械に覚えさせるのは、何項目もパラメータがある。PCをUIに使っているため、情報量が多くなっており、いろいろな要素をインプットして10種類まで用紙のパラメータをセットすることができる。UIを通じて紙の特性を覚えさせておくことにより、段取りの時間も減っている。これも生産性の向上に寄与している。
スピードをあげるために、ローラーとベルト方式でワイドニップ(接触域)の定着技術を採用している。外部加熱ロールで表面的に温度を上げて、紙の厚みにかかわらず等速を実現している。

トナーの進化

2007年にEA ECOトナーを発表した。DocuColor8000や5000で使っているのは粉砕系のトナーである。オフィス用途ではEAトナー、重合トナーを使っているが、POD機では色の問題があり、粉砕トナーを使っている。

混練粉砕トナーは顔料とプラスチックを合わせて練って、それをミキサーのようなもので粉砕しながらフィルターにかけ、何ミクロンのトナーとして作っている。
EAトナーは化学合成トナーで、エネルギー的な面から見ても優しい。EAトナーは、CO2で粉砕トナーの35%減くらいできる。
また、EAトナーは低温度にできるということがある。従来比で20℃〜50℃くらい、定着器の表面温度が下げられる。これも、電源がずっと入った状態になっていると、エコになる。

画質という点でも、粉砕トナーの場合、粉砕するのでばらつきがある。画質への直接的な影響はないが、電気的な安定性は悪くなる方向にある。それに比べ、EAトナーは電気的に安定することで画質の向上が期待できる。

オフィス用途の機械で使い出したが、今後GA系の機械にも徐々に入れ、現場に入れていこうと考えている。先ほどの静電気に関する課題も、多少良くなるだろう。

(この続きはJagat Info 2008年8月号、詳細報告はテキスト&グラフィックス研究会会報 Text & Graphics No.269に掲載しています) 2008年8月

2008/08/15 00:00:00


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