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「DTPエキスパート認証」で経営課題解決の前進を

◆株式会社光陽メディア 常務取締役 経営企画室長 金谷富蔵

経営課題を攻勢的に切り開く打開策

この度29期「DTPエキスパート認証」に真剣に取り組みました。それは認証資格取得が、今経営が抱える課題解決に役割を果たすと判断したからです。 経営が抱える課題の第1は、企業規模に相応する売り上げが不足していることです。光陽メディアは出版に50%強の売り上げを依存しています。ご存じのようにここ数年、出版市場は右肩下がりの状況が続いています。商業印刷分野も構造改革の影響を受けB版輪転の仕事は激減です。営業に企業規模に求められる売り上げを確保してほしいのですが、求めている90%の売上水準にあります。さらに山谷の月の谷の月の安定した売り上げを確保してほしいのです。損益分岐点を大幅に下回った売り上げでは、大きな赤字を作ることになり、安定した経営を築くことはできません。この2つを実現できれば、スタートにおいて確かな経常基盤を作ったと言えるでしょう。そのための営業の力量を高める取り組みとして、「DTPエキスパート認証」を位置付けました。

次の経営課題は、職場の生産計画を達成し利益計画を達成することです。この課題の実現のためには、個人の時間当たり生産性を飛躍的に高めなければなりません。「DTPエキスパート認証」に期待していることは、個人の力量を高め、さらにデジタル化に対応し、クロスメディア対応に能力を発揮できる人材の育成です。職場売上目標を充足させる仕事量確保のために、営業依存型の体質から脱皮し主体的に現場から仕事作りを実践するという創意が発揮される知識が備わると期待したからです。

以上の経営の実態から企業の経常利益は、目標に対して大幅に低迷している状況です。企業の使命は適正利益を確保することであって、現状の課題克服は急務です。取りわけ業界にあっての仕事量そのものが減少、受注価格の低落、原油高を理由とする材料の高騰などは、さらに経営の利益を圧迫する要因となっています。光陽メディアは、収益性指標で同業他社水準比較で、低い水準にあります。どのように打開するか? それは経営の課題です。「DTPエキスパート認証」をこれらの経営課題を攻勢的に切り開く一つの打開策として位置付け、全社で取り組むようにしました。

「第2の創業期」への本格的な対応

戦後、戦争と抑圧から解き放たれて、「雨後のたけのこ」のように多くの印刷会社がこの時期に創業されています。光陽メディアも1950年に神田で営業を開始しました。グーデンベルグは、ルターが宗教改革に名乗りを上げる直前に、活字による印刷術を発明し「42行聖書」を完成させました。それは現在でも、世界で最も美しい本の一つと言われています。印刷を完成させ、発展させてきた創業者たちは、時代を切り開くその社会的役割を担い、多くの先人のDNAを引き継いできたのです。創業から今日まで顧客と光陽メディアとの揺るぎない信頼関係が企業を支えてきました。顧客の社会的役割に貢献することが光陽メディアの創業の精神です。繰り返し原点に立ち返り、厳しい時代だからこそ顧客との信頼関係が深まるような努力が求められていのです。 閉そくした時代状況にあって印刷産業も能動的に事態を切り開く改革が求められています。

IT化によるメディアの多様化の波が、光陽メディアを取り巻く顧客の中に形を変えて急速に広がり進行しています。この変化は、いわゆる紙メディアを基本に据えた事業活動の先行きに警鐘を鳴らしていると言えます。それはクロスメディア対応に象徴される紙メディアと電子メディアを統合したメディアミックス提案、ITネットワーク技術を駆使したWebカタログや携帯電話の活用提案、そしてHPやブログの制作構築提案、電子文書化への取り組みとオフィスネットワーク構築など、これまでにない新たな取り組みが求められ、現在、取り組まれていることにも表れています。

さらには顧客のブランド構築提案や広報活動のサポート業務、販促活動の年間の企画と販促のスケジュール提案、そして顧客自身の新規事業領域に関わり、新たな挑戦的な提案が求められており、これら一つひとつへの対応は、業態変革への差し迫った課題であり、社の存続に関わる重要な問題となっています。光陽メディアにとっては、これらの課題にどう対応するのかが「第2の創業期」と位置付けた内容であり、本格的な対応が求められているのです。これらの課題に対応するインフラの一つが、「DTPエキスパート認証」資格取得への全社の取り組みです。

「DTPエキスパート認証」を経営方針に位置付けた取り組み

2008年度経営方針は、「市場と顧客をめぐる環境が急速に変化する中で、個々の営業部員の新たな能力開発を抜きにしての受注拡大はあり得ません。DTPエキスパート認証の取り組みなど、さまざまな教育・研修への対応を強めます。DTPエキスパート資格取得は全営業部員の課題です」と位置付けました。取り組みはプリプレス部門や営業部門だけではなく、全職場の取り組みとして具体化されました。

社長を中心に経営が率先して認証取得に取り組むことの重要性を確認しました。2006年からの取り組みでこれまで3名が認証を授かりました。遅々として進まない原因は、経営の姿勢にあると総括し、常務を責任者に任命し各職場から推進委員を選任し、決意新たに本気でスタートさせました。各職場から31名が名乗りを上げました。この時点で全員のモチベーションを持続させながら全員合格を実現する取り組みに徹することに心を砕きました。試験には28名が受験し、17名が合格しました。この成果の獲得は、専任の講師による教育と粘り強い援助によって達成されたものです。私自身、今回は最高齢合格だったそうですが、31名の仲間とともに取り組み、ともに達成できたことは殊の外うれしいことです。

29期の合格発表前にレポートを取りました。その中から幾つかを抜粋し紹介します。
  1. 筆記試験に向けた講習を受講して=「全社を挙げた活動、運営副委員に任命されての2回目挑戦、この資格は今この業界に身を置いて生業としている者にとっては、エキスパートの資格ではなく基礎知識なのだと痛感させられ、大学受験以来の本気モードに変わっていく自分がいた」
  2. 課題制作に取り組んで=「IllustratorやPhotoshopの作業は良い経験でした。最初はテキストを直すのに苦労しましたが、だんだん面白くなっていきました。制作指示書の作成はとても困難でしたが、今までMacに触ることもできなかった自分には大変な自信になりました」
  3. 今後どのように生かしていくか=「今回頭に詰め込んだ知識により、関連事項を調べたり、新しい提案を考える時に非常に役に立っています」「受講を終えて今は理解してお客様と話ができるようになった」「日常では、自分の職場だけのことにとらわれてしまいますが、試験を通じて学んだ印刷全体の知識を密にしていきたい」
30・31期でさらに多くの人が「DTPエキスパート認証」に挑戦できる条件を整えます。30期は仕事の閑散期でもあり50名を超える受験者を目標に全員合格を目指しながら高い合格率を目指す準備を始めています。さらに31期まで一気に取り組みを前進させて、経営計画の課題を推進・実行できる基盤構築を整備したいと考えています。

(『Jagat Info』2008年8月号より)

2008/08/24 00:00:00


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