コマップは、1990年に福岡県博多でタウン誌として出発し、2001年には雑誌の中にケータイの仕組みを入れ込んだメディアミックス型出版をスタートさせた。2005年には、雑誌社の収益モデル、いわゆる広告と本の売上だけの収益にマーケティングの収益やコンテンツ売買の収益等を加えたノウハウを地方出版に携わっている方向けにB to Bで提供できるパッケージを作って提供するarunoという事業を立ち上げた。同事業について、取締役副社長の藤丸順子氏に話を伺った。
フリーペーパー事業において、コンテンツ力を上げようと思うと費用が非常にかかる。今まで、フリーペーパーというのは情報=広告で収入だったが、コンテンツ力で勝負しなければいけなくなってきたときにコストがかかる。充分なコストがかけられず、またなかなか優秀な人材の採用は困難である。したがってコンテンツ力が低下していく、そうなると情報は世の中に溢れているので読者は離れていく。そうなると広告が減っていくということで、悪い循環に陥るというような会社が非常に増えてきている。今、フリーペーパー淘汰の時代となっており、ここで問題解決が急務である。
解決する手段としては、「1ページ50万円だが、広告が入らないので10万円でいいから出してもらいたい」と言ってしまったら最後、クライアントから「10万円になってから出す」と言われてしまう。そういうやりとりは日常茶飯事で起こっているが、そういうダンピングの防止をしなければいけない。 また、フリーペーパーといっても非常にコンテンツ力を持っているペーパーがある。そういうところのリソースの有効活用ができないだろうか。また、媒体社間のネットワークでお互いにノウハウを共有し合うことができないだろうか。それと、広告収入だけではない収益モデルを作ることができないだろうか、というようなことが、問題解決に至るのではないか。
これをクロスメディア手法で解決しようということで立ち上げたサービスがaruno(アルノ)である。どのようなサービスを展開しているかを具体的に説明する。先ほど約1,200誌あると言ったが、わが社では約1,500件のデータベースを持っている。そのなかで、548誌がarunoを既に利用している(注:2008年2月時点)。
一番頻繁に利用されているのは、アフィリエイト広告である。お客様が、「入れるつもりだったが、このイベントが来月に延びてしまった」、「入れるつもりだったが部長がハンコを押してくれない」等、ドタキャンになるページが多くある。 そこで1回「ドタキャンになったので、すいません、広告を入れてください」と言うと、「今度からドタキャンになったとき持ってきて」と言われるので、そういうことがないように、いつでも空いたときにはすぐ入れられるように、arunoのサイト上にアフィリエイト広告を何種類も用意している。 どういうアフィリエイトかというと、ペイパーコール、パソコン、携帯電話等を利用して、ユーザーのアクセスによってアフィリエイトで支払をする仕組みである。現在では大手ポータルサイトの広告も取扱いが増えてきていて、かなり雑誌社に利用していただいている。アフィリエイト広告のメリットは、先ほど言ったダンピングの防止のほか、空き枠埋めにかける人的コスト削減である。
次に、コンテンツの二次利用ということで、いろいろな雑誌社が持っているコンテンツを提供している。これはわが社自らがコンテンツを制作して売る方法もあるが、コンテンツを売りたいというところはそれほどない。いいコンテンツを買いたい、安いコンテンツを買いたいという需要が多い。 1ページ、社内コストで記事に約2万〜3万円かけている。もう少しかけているところもあるかもしれない。そうすると、それなりのコンテンツが1ページ2万円で買えるというのは非常に魅力である。とにかく、「今コンテンツが少ないから、arunoでコンテンツをたくさん用意してもらいたい。もっともっとコンテンツを増やしてくれ」というのが、雑誌社の声として挙がっている。
(2008年9月 詳細はクロスメディア研究会会報『VEHICLE』に掲載予定)
2008/09/02 00:00:00