印刷会社が取り組むソリューション・ビジネス
デジタル化,ネットワーク化の進展はメディア選択肢を広げ,印刷物の位置づけは相対的に低下しつつあります。
デジタル化はビジネスに大きなメリットをもたらしましたが,複雑さも増しました。発注側もさまざまな技術知識や能力が求められ,デジタルワークフローの中で最も有効的な情報の活用,発信方法を模索しています。
印刷会社も,紙の印刷物を受注するためだけに企画を提案しているだけでは,顧客ニーズに応えることが困難になっています。今後は,顧客のビジネスに一歩踏み込み,顧客の業務目的,抱えている課題に対していかに有効な提案を行い,ビジネスに結びつけていくかのソリューション・ビジネスが重要になりつつあります。
(プリンターズサークル2月号特集記事より)
提案型ビジネスを成功させる3つのステップ
――ソリューション・ディレクターを育成せよ――
有限会社ゲイン 代表取締役 杉山伸一
印刷産業の生き残り策は二者択一
印刷産業で生き延びていくためには前へでていくか,または後ろを固めるかのどちらかになってきたと言われる。
後ろを固めるとは,印刷産業の最も重要なインフラである印刷設備・後加工におもっいきり設備投資を行い,スピード・価格・品質の面で他社を圧倒し印刷受注を確保するという選択である。これは誰にでもできるというものではない。ある程度の企業規模があってできる選択といえる。
逆に前へでていくとは,クライアントの問題解決や新しい試みに積極的に参画し,パートナーとして提案型ビジネスを展開する選択である。ソリューション・ディレクターの活躍の場はここにある。
また,一般企業(クライント)のビジネス環境を見渡すと,そこには印刷業界以上に厳しい生き残りをかけた戦いが繰り広げられており,その熾烈さはテレビや新聞で毎日報道されているように大変なものがある。
そして,企業が関心をもって挑戦していることがBPR(Business Process Re-engineering)であり,新しいマーケティング戦略であり,インターネットの高度利用に他ならない。
ここに企業の挑戦と印刷業界の提案型ビジネスに接点を見出すことができる。
なぜ,いま印刷会社にソリューションが求められるのか
もともと印刷会社はクライアントから見ると,困ったときに何でも相談できるよろず相談屋として重宝がられる存在といえる。今までもソリューションは求められていたのである。
例えば,印刷物の在庫管理と物流をやって欲しい,イベントの企画をやってもらいたい,アンケート調査を手伝ってもらいたい,といったアナログ的なソリューションから社内にある写真原稿をデジタル化してデーターベースにしてもらいたいなどのデジタル的ソリューションの依頼もあったはずだ。
しかし,最近はクライアントから求められるソリューションの内容が変化してきている。理由は明らかで,クライアントのビジネス環境とビジネス形態が変化してきているからである。
そして波及的に,印刷会社に求められるソリューションの中身まで変わってきたと見るべきだろう。
具体的には,やはり企業活動のインフラがインターネットに代表される情報技術(IT)関連に大きくシフトしていることと,新しいマーケティング技術に投資を始めたからである。
結果的に,印刷業界にも情報技術やマーケティング技術にまつわるソリューションの要望が多くなっている。
ソリューション・ビジネスをどのように捉えるのか
ソリューション・ビジネスは大きく3つのフェーズに分けることができる。
第1ステップ
第1ステップは,提案活動である。
クライアントのやりたいこと,問題と思っていることの内容把握からスタートすることになる。その調査段階として,関連する人達へのインタビューや現状把握,場合によってはストップウォッチを持って時間計測をしたりする。
また,競合他社の状況把握も行う。最近は各社のホームページからもいろいろな情報を取り出すことができる。さらに競合他社の戦略まで把握することが可能になっている。
次に,クライアントの当初の要望と調査結果を付き合わせ,本当にやるべき要件を整理する。ここで間違ってしまうと,いわゆる「ボタンの掛け違え」的状況に進んでしまう原因になるので,大切なポイントである。
提案活動の最後は,提案書の作成である。
全体コンセプトと誰が,いつまでに,何を,どんな手段で,予算はいくらで,到達目標は何で,といった項目を含む提案書を作成する。クライアントにプレゼンテーションを行い,承認されて次のステップへ移行する。
繰り返しになるが,提案内容は複雑で,高度なものが要求される。関連する専門家や組織とのコミュニケーションも含まれる。
場合によっては,専門家を探し出してきてプロジェクトへの参画を促す必要もでてくる。そのためには幅広い人脈やネットワークが必要とされる。
(詳しい内容はプリンターズサークル2月号の記事をご覧ください)
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2000/02/09 00:00:00