従来のPostScriptイメージセッタ周りを開発してきた出力機器メーカーは、PDFを直接扱えるワークフローを提案するようになった。しかし今まで出力段階で独自の中間フォーマットを用いることで、さまざまな利便性が発揮できたのを継承しているため、PDF出力の舞台裏では各社さまざま独自の工夫をしている。これらの現状について、1999年12月17日techセミナー「PDFによる出力ワークフロー」でとりあげた。
ハイデルベルグのPrinergyは純粋なPDFであるが,アグフアのNormalizerでPDFに変換するのも,線画はラインワークの形になっている。大日本スクリーンのRIP'edファイルも線画の部分はラインワークファイルのような形になっている。サイテックスはラインワークそのものである。またハイデルベルグの場合は,今までのDeltaリストの線画の部分はラインワークファイルである。すなわち,線画,中間ファイルの信頼性を高め,出力保証をするために,一番変わりやすい文字については早い時期に版下でいう線画にしてしまうというのがハイデルベルグのDeltaを含めた各社のやり方で,新しいPrinergyはそこがよりアドビのPDFに近くなっている。前述のセミナーでは各社の違いに関する質問が2題出たので、そのやりとりを紹介する。
ハイデルベルグ:ハイデル・クレオのPrinergyはPDFそのものなので,ラスタあるいはビットマップという世界からは足を洗い,アドビのいうとおりのピュアなPDFでいく。現状のAcrobatのタッチアップの機能や,そのほかのプラグインの機能がいろいろと市販されているが,それらの力を借りてできる範囲である。PDFベースで行える修正には,現状のプラグインなどの技術を使って行う。しかし行が変わってしまうといった組版は直せないので,現時点で可能なことは,値段の変更などのあまりレイアウトが変わらないような変更だろう。
アグフア:数字を打ってあるものに関しての直しはPDFで処理をする。ブロック単位の差し替えデータに追加する場合は1bit-TIFFである。差し替えのデータをRIP処理して,出力の前に1bit-TIFFを2つ,差し替えの情報とオリジナルの情報を合成する方法である。だめな場合は最初のオリジナルに戻っての修正,RIP処理,出力になる。
サイテックス:PDFの部分は同じである。サイテックスはラインワークなので,リメイクというMacintoshで線画をさわるソフトで,カット&ペーストや,直した部分をRIPで持ってきたものを貼り合わせることも可能である。その他,他社の優秀なシステム,一部大日本スクリーンのレナトスも受け取るので,それらでも直すことができる。PDF2GOやEnfocus社のプラグインを使うと,一部線画の状態になっているデータもさわることが可能である。
大日本スクリーン:非常に難しい質問である。レナトスとTrueflowの機能の一番大きな違いは,Trueflow本体には編集機能を入れていないことである。出力機をどんどん動かすために編集機能を本当にそこに入れるべきなのかをかなり議論した結果,直し全般を考えた場合,結局は文字の直しが一番大きいので,フロントに戻ることが一番正しいだろうという答えになった。だから,その範囲で直せるものがあれば,例えばプラグインを使って直すという話も当然出てくるが,チラシの場合はフロントに戻ることはまずいと強く感じる。商品企画のテーマとして,MultiStudioという商品があり,それによってTrueflowが持つ中間ファイルを読んで直していき,製版でいうすべての処理は可能になる。全体のワークフローを見ると,流している最中に編集をするのがいいのかをしっかり考えた上で,どうすればいいのか考えたい。技術的にはそれほど難しい問題ではないのだが。
アグフア:たぶんコアは同じだが味付けが違うので,互換性は非常に難しい。ただ,各社がメンバーとなっているCIP3では標準化を目指しており,その中でもJobTicketはポイントとなってくる。オープンになれば皆にとってメリットが出てくるのではないか。
ハイデルベルグ:やはり,アドビにのっとったかたちで作っているので,基本的には,面付けのJobTicketは,今後ファシリスのものを受け取れるようなオープンな方向になるはずである。テストはまだしていないが,面付けなどからオープン化が始まるだろう。標準化,オープン化を目指して,ベースとしてアドビのJobTicketを始めから採用した。
サイテックス:たぶん,JobTicketの採用が早かったので,サイテックスが一番標準化の観点からは外れている。基本方針としては,今あるもののラインをくずせない。ただ,PJTFなどが拡張されて,ベンダ間のやり取りが楽になるのであればうれしい。面付けなどに関しても,既にサイテックスは似たものをもっているので,どちらに合わせるかはわからないが,合わせる方向であれば可能なのではないだろうか。ただ,システムの特性を生かすために,どこまで標準化しなければいけないのかということも若干感じる。
大日本スクリーン:PJTFを読むこと自体はそれほど難しい内容ではないので,たぶん各ベンダはできるだろう。あとは,そこをどう読み飛ばすかということを各社で決めていくしかない。たぶん,決めてもまたずれてくるのではないだろうか。また,はっきり決めすぎても,かえってきつくなるだろう。だから,最低限のところだけをしっかりと決めて,わからないデータがきたときにどうするか,エラーを出すとか,そういうメッセージの出し方までしっかりと決めれば,その範囲で使っていけるのではないか。
ユーザの判断が決め手 PrinergyのPure PDFから,プレディクタブルな,まさにサイテックスのCT/LWがこれほど信頼性が高いとはというところもあるが,PostScriptも最初のころはとんでもないものがたくさん出てきたが,それを克服しつつ,使う者が先頭となり引っ張ってきた。結局はユーザの判断になる。
(テキスト&グラフィックス研究会)
2000/04/09 00:00:00