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DTP化時代に見積もりをどのように捉えるか

DTP化時代の見積もりを考える前に,営業の見積もりの実態を整理してみよう。「見積もりに正解はない」は正論だが,不明確な見積もりは避けたい。
見積もりは,顧客の意図と要望を正確にヒアリングし,印刷仕様(サイズ,部数,仕上がり形態,色数,部品/文字・写真原稿の有無と内容,紙の選択など)を明確にし,品質と納期要求などの判断を加えて,それぞれの工程明細費用を算出しなければならない。 印刷物は多種多様であり,印刷量により項目単価の変動も絡んでくる。そのため,かなりの経験を必要とするので,見積もりは面倒な作業である。
 従って,印刷の見積もりは,K「経験」・K「勘」・D「ドンブリ」・D「度胸」方式といわれる。つまり,長年の経験と勘を必要とするが,詳細な見積もりは結構面倒なため,ドンブリ勘定になりがちで,最後はエイヤーッと度胸で決めてしまうことが多いという意味である。すべての営業マンがこのKKDD方式で見積もりを行っているわけではなく,傾向としてベテラン営業マンに多い。

このような大雑把な見積もりをした時の弊害を整理してみると,次のようになる。
(1)見積合計金額のみの見積額となり,あまりにも概算となってしまう。
(2)顧客側に見積もりの根拠がみえないため,不信感を抱かせてしまう。
(3)もともと概算なことから,顧客の値引きにあっさりと応じてしまう。
(4)新人の営業マンに見積もり指導ができない(新人が育ちにくい)。

(5)納品後に原価割れが発生しても「後の祭り」となる。(その反面,利益が上がり過ぎる場合も問題あり)
 これらの諸事情を超越したスーパー営業マンもいるが,いずれにしても不明確な見積もりは,社内の見積もり情報の共有化にはつながらない。 アナログ制作でも,不明瞭な見積もり方法が多いように見受けられた。DTP制作になると,さらに事態は深刻になってしまう。従来は,制作から印刷・納品までを一括して,印刷会社に発注する形態であった。それがDTP(デジタル)化によって,制作手法が変わったことに加え,
(1)デザインからDTP制作(入力・編集・出力)まですべて新規で作成。
(2)顧客から文字・画像が部品データとして支給され,編集と出力を行う。
(3)顧客から文字・画像・レイアウトデータが部品データとして支給され,編集と出力を行う。
(4)フルデジタルデータが顧客から支給される。
 というように,入稿・作成形態が多様化した。

デジタルとは「数値化する」「数値に置き換えられる」という意味合いであるから,見積もりにも,根拠のあるデジタライズな料金体系が必要となる。が,実態は,プリプレス工程の制作手法がDTPに変わった今日も,従来と同様の見積もり方法をとる営業マンが多いようだ。
 従来の見積もりには不明瞭な点のほかに,さらに問題がある。顧客の見積もり依頼に対して,概してレスポンスが遅いことである。営業マンは見積もり作業に専念しているわけではないから,得意先回りと受注物の制作手配(指示)を終えた後,つまり夜に,見積もり作業を行うケースが多いからである。このような状況では,どうしても見積もりの提出が遅くなってしまう。しかし,顧客側はいくらかかるのかをすぐに知りたがっている。 世の中は,デジタルをキーワードに一直線で突き進んでいる。このような時代に,夜,残業して,手書きの見積書を作成し,ファクスを送信した後,正式な見積書に清書をしている姿をイメージすると,その方法が前近代的だとだれでも思うだろう。デジタル化時代はスピードが命であり,顧客側のコスト削減要求は日増しに強くなっている。

(6月号より,新連載「DTP時代の見積もり講座」が始まります)


(詳しい内容はプリンターズサークル5月号の記事をご覧ください)

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2000/04/30 00:00:00


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