汎用性の高いデータ
RIP済みのデータは,幅広い用途に使える方がよい。例えばオフセット,グラビア,スクリーン印刷,フレキソなど,さまざまな印刷方式に対応できるほうがデータとしての利用価値が高くなる。
その例として、BlackMagicという,RIPからRIP済みデータを受け取り,出力するための環境を整えるソフトがある。つまりCTPに限らずフィルムセッタなどのRIPを監視させておき,そこに最終的なページバッファデータが生成されると,それを自動抽出して任意のプリンタに出力するものである。その際には監視しているRIPのパフォーマンスに影響することなく最終データを流用できる。具体的な機能としては,まずトラッピングや直しのチェックができる。カラーマッチングに関しては,ICCプロファイルを利用してどのような製品のものでも受け取ることができ,専用のソフトによって特色などのマッチング用のカーブも作成できる。さらにインク調整機能により,各社のインクに合わせて調整すること,RIP済みデータをそのまま圧縮してしまうことも可能である。
オープン環境に対応
BlackMagicのキーとなるものは,オープン環境である。また,インタフェイスとしては演算後のデータをもってくるタイプと,任意にドロップフォルダに投げ込む形に分けられる。
内部処理としては,インク調整・トーンカーブでの調整・ICCプロファイルの対応をしているので,プリント・プルーフ・モニタそれぞれの調整が可能である。さらに,128色までの特色にも対応し,プリンタによって色調を変えて出すこともできる。
INPUTではハーレクイーン系RIPやDelta RIPを代表するBrisqueといったRIP on Sever系,その他の3種類のRIPタイプに対応している。
指定したフォルダにデータが入ったことを確認して,そのデータを引っ張ることができるので,例えば高解像度のデータをフォルダに入れることによって,それをプルーフに出力するために低解像度に変換して出力することがフォルダを設定するだけで可能である。もちろんDeltaリストなど中間ファイルも扱うことができる。
カラーマッチングは,ICCプロファイルでの調整のほかに,カラーチャートのデータをそれぞれの出力機で出力し,測色した結果をBlackMagicへ反映させて,カラーマッチングを図ることができる。また,面付けの確認・通常の色確認・ページの確認などは出力機の個体差を統合したカラーマッチングを図って出力することも可能である。また,トーンカーブでの設定も可能である。
OUTPUTに関しては,プリンタメーカー各社のネイティブドライバソフトをもっているので,ほとんどのプリンタメーカーのプリンタにはネイティブで出力できるようになっていて,また複数のキュー設定も可能になっている。さらにインタフェイスとしては,ヒューレットパッカードやローランド,エプソン,武藤工業との接続も確認済みである。それ以外のアグフアや富士フイルム,沖なども各社対応して,出力の確認もできている。
OneRIPのメリット
営業的なメリットとしては,時間の短縮とコストの削減が挙げられる。コストに関しては,CTPに限らずフィルムに出力するときに確認することによってヤレを出さなくなるので効果がある。またリモートプルーフを使うことによって,PDFやHTML,JPEGによるクライアント先でのモニタを使った確認もできる。ちなみに,Web発信などでの確認は欧米ではかなり進んでいる。フィルムレスにして安価なメディアを使って確認できることがメリットになる。
設定と検版
CTPかフィルムに出力するのかという最終的な出力形態を決めてからキューの設定をする。最終出力先によって添付するプロファイルが決定する。これらを応用すれば,イントラネットへの掲載も可能である。営業が確認したり,各オペレータが確認するなど内部的な利用が主な目的だが,PDFをクライアントへ送ってチェックしてもらうことも可能である。PDFにすればモニタで確認することも,クライアント側で出力して確認することもできるので,今後有効な活用方法になるはずである。
特色に関しては,128色まで対応している。使用頻度の高いコーポレートカラーや特色をあらかじめまとめて作成して保存しておくと,それに対応させることもできるし,特色版をCMYKに置き換えて出力して確認することもできる。
従来方式では同じものを出力して比較し,その差分をマークやチェックしていたが,時間がかかり,ミスを犯しやすい。BlackMagicでは実際の直しの確認は,初校と再校のデータを色違いで出すことによって行う。確認はモニタ上でもプルーフに出してもできる。また,トラッピングの確認は,カラーにしてしまうと重なり具合がわかりにくいので,シアンのみで表現している。これを,デジタルブルーラインと呼んでいる。
リモート機能
リモート機能を使うと,遠隔地で色調整をして出力することが可能になる。そうすれば,データをそのまま何度も利用でき,再出力時間の短縮にもなる。データのフォーマットはBlackMagicの専用フォーマットになるので転送は当然速いのだが,そのためにクライアントとサーバ,もしくはサーバ同士でのやり取りも可能である。
従来のリモート出力では,圧縮したデータを送っていたので,その場合はプリンタ側の専用RIPが必要であったが,BlackMagicではネットワークLANを使ってのサーバとクライアントのかたちでのやりとりになる。プリンタ専用のネイティブデータで出すことができるし,工場と自分のところのプリンタの色合わせをして出すことも可能である。また,BlackMagicはさまざまなページバッファデータを持ってくることができ,フォントのコストもかからないし,プリンタのRIPも必要なくなる。確実な検版ができるので,BlackMagicの機能を使えばCTPの出力環境を確実なものにすることが可能である。
ワークフロー
BlackMagicのワークフローは,CTP用のRIPやハーレクイーンRIP関係,その他からデータをひっぱってきて,どういうフォーマットからでもきちんと出せるようなワークフローになっている。PDFデータなどこれからどんどん運用が盛んになってくるが,そのようなデータの受け取りから出力という環境もあるので,BlackMagicの機能をCTPのワークフロー環境では生かしていける。最終的には,フィルムに出力して通常の平台校正をなるべく減らして,CTPの最終出力系のデータを確実にするためにBlackMagicでの色校や検版,校正や特色の確認,最終的にはブルーラインなど特色のあるもので,確認していく方向にもっていきたい。
1999年10月5日T&G研究会ミーティング「CTP環境整備に向けて」より
2000/05/15 00:00:00