制作において本人の勘やセンスに頼ったデザインをしたり、Macintoshに向かって長時間あれこれ試行錯誤する無駄な時間を費やしてはいませんか?
それは事前に誌面設計が明確化されていないことを証明しているようなものです。
クライアントはカタログ、チラシなどの商業印刷物に対する費用対効果に大変シビアな目を向けるようになりました。私たちに必要な能力はクライアントが印刷物に期待する効果を汲み取り、的確な企画制作を行い、その効果を実現することであるということを改めて認識する必要があります。商業印刷物のデザインはアートではないのです。
誌面設計には科学的に検証され、体系づけられた基本的な方法論が存在します。メッセージを伝えたいターゲットやもっとも伝えたいメッセージ(ex.売りたい商品)などクライアントが印刷物に込める狙いを明確に引き出し、コンセプトを明確化できれば、自ずと印刷物のデザインは決まってくると云っても過言ではないのです。つまり商業印刷物のデザインは「科学」なのです。
昨年から定期的に開催している実践セミナー「売れるカタログ/DM企画制作3日間研修」の講師、有限会社湾岸道路 代表 苅田 和房氏は、この講座の冒頭にカタログ作りの基本3原則として、
・広告内容(主旨)を明快に示すを掲げています。
・リーチ(開封)率を高める工夫を施す
・アクション(注文)へのフックを作る
■広告内容(主旨)を明快に示す
仮に商品の写真や価格、電話番号などが記載されていても、それがその場で注文のできるダイレクトレスポンス広告であることが、顧客にとって判りにくいものが少なくない。「欲しければ買えば?」と言わんばかりの乱暴なビジュアルが後を絶たない。
先ず、表紙やタイトルの部分でその広告の主旨を宣誓することが必要である。それが通販なら、「通信販売」という文字を大書して入れるのである。そうすることによって、見る人の誰もが情報のスタンスを一目で理解し、その利便性を訴求できて顧客の購買意欲を刺激する前提条件となる。いかにその企業の知名度が高かろうと、そのプロモーションを何度となくやり続けていようとも、初めて見る顧客も大勢いるだろうし、姿勢として決して疎かにはできないポイントである。
■リーチ(開封)率を高める工夫を施す
サイエンス・マジョリティ(無反応層)の多くは積極的な拒否層ではなく、その情報を認知していないことが多い。そこで、ターゲットに対していかに情報を認知して貰えるか、というリーチ率の向上に意を払わなければ、高いレスポンスを得ることはできない。その情報に関して興味・関心を抱かせ、こちらが伝えたいメッセージまで到達してくれるために、よく見たいと思わせる工夫が必要なのである。
例えば、ダイレクトメール(DM)の場合だと、封筒のデザインが果たす役割は極めて重い。DMを受け取った人にとって、その内容物がいかに有益な情報をもたらしてくれるかといった期待感を封筒上から得られなければ、DMは開封されないからである。
つまり、外見でオファーの魅力を端的に示すことが求められる。
そこで頻繁に用いられる手法が、ビニール製のクリアー封筒を使うやり方である。このケースでは、透明な部分からカタログ等の表紙の部分が露出するので、表紙そのものにその役割を転嫁することになる。また、チラシの体裁のものでも露出部分に表紙相当として区分されたスペースで同様の役割を網羅しなければならない。この時、用紙の折りの仕様によってデザインワークが制約を受けることになるから、そのことを前もって考慮した上で紙面全体のレイアウトを設計することになる。
■アクション(注文)へのフックを作る
商品の申込方法の案内や注文ハガキを付けることのみに留まらず、顧客が注文しやすく、その気になるようなスムースな流れと、矢印等を使用したデザイン処理によって注文行動へ誘導する視覚的なポイントを作る必要がある。これをビジュアルにおけるアクションへのフックと呼ぶ。フックが不十分だと不親切な紙面となり、顧客の購買意欲が減退してしまうので、アクションが顕在化する確率を落とし、レスポンスに大きな影響を及ぼすのである。理想は見ているうちにその商品がだんだんと欲しくなり、最終的には買わざるを得ないかのような心地になるそんなビジュアルの総合的な効果を目指したい。
矢印と言ったが、これはその先に示す情報に着目して欲しいという狙いを視覚的な記号によって導くことを意味するため、その大きさや太さ、形や色と向きについて吟味することが意外と重要である。いわゆるデザインは、こうした局面で意図されてパーツとして機能する場合に限って採用する価値があると言える。
(以上苅田氏講師「売れるカタログ/DM企画制作3日間研修」より)
□開催/平成12年5月10日(水)〜12日(金) 全日10:00〜17:00
□会場/社団法人日本印刷技術協会 研修室(杉並区和田1-29-11)
□セミナー内容の詳細はこちら
2000/05/01 00:00:00