大日本印刷では「カラーマネジメント」という言葉が使われ出す以前から色に関するさまざまな研究開発を行い,実用化を進めてきた。校正刷りをなくしデジタルプルーフ化することによる社内製造工程の合理化や,ハイビジョン用画像を印刷データに変換するといった,世の中のマルチメディア化への対応のためである。
技術の進展,インフラの整備
大日本印刷では昇華転写方式のプリンタを採用したデジタルプルーフのシステム化を行い,現在はグラビア部門の大部分がデジタルプルーフ出校の運用となっている。開発当初は,今のようなICCプロファイルといった概念がなく,印刷とプリンタの色の対応関係をテーブルでもち,その2つのデバイス間のカラーマッチングを行っていた。
その他にも,アクロマチック製版という,インキ量の削減を目的とした,3色のグレー成分を墨版に置き換え,2色と墨による色再現を行う技術も開発し,実用化している。
現在ではパソコンのOSに標準で色変換エンジンが搭載され,パソコンの処理性能の目覚ましい向上により,多少の課題はあるが,パソコンレベルでカラーマネジメントを行う環境が整ってきた。
カラーマネジメントのターゲットとなる入出力デバイスについても,高精細化・低価格化には目を見張るものがある。また測定器についても,依然高価ではあるが,数万円レベルで入手可能なものも出始めている。
このように以前は非常にコストもかかり,ごく限られた分野でしか使われなかった技術であるが,比較的安価にシステム構築できるようになり,一般的なものとなってきている。
カラーマネジメントの位置づけ
従来は,「色」は印刷会社に任せておけばよいといった風潮であったが,DTPの普及によりそれなりの機材を用意すれば,簡単に印刷用のデータが作れるようになってきたので,データ作りの際に「色」のことを避けて通れなくなってくる。そこで,プリンタやモニタと印刷の色のシミュレーションやモニタとプリンタとの色合わせのニーズが産まれてくる。
印刷会社は現在,紙メディアに限らずWebやCD-ROMなどの電子メディアの制作,製造を手がけている。その中で,カラーマネジメントは効率的なメディアの制作,製造フローを構築する上での基本となる技術であると捉えている。DTP化をはじめとするデジタル化の進展により,得意先や一般生活者を含めたトータルなカラーマネジメント環境の構築が求められている。
「DNPデジタルカラーリンク」のねらい
大日本印刷のカラーマネジメントへの取り組みとしては,得意先と生活者,得意先と大日本印刷との間での円滑な「色」の伝達(カラーコミュニケーション)を実現するということに主眼をおいている。そのためのシステム開発や環境作りといった活動全体を「DNPデジタルカラーリンク」と呼んでいる。
得意先や生活者を含めたカラーマネジメント環境の構築を行うことを目標にし,次の3本を柱とする。
1.カラーマネジメントツールの開発
カラーマネジメント運用に必要となる基本機能のツール化で,プロファイル作成機能,キャリブレーション機能,色変換機能などが挙げられる。
2.アプリケーションの開発
カラーマネジメント技術を応用したアプリケーションの開発で,リモートプルーフシステム,データ入出校システムなどが挙げられる。
3.カラーマネジメント環境構築支援サービス
カラーマネジメント環境はさまざまなノウハウが必要である。そこで得意先の環境構築について,システム提案やプロファイル作成やキャリブレーション作業を提供できる体制を構築していく。
以上を中心に,得意先や生活者を含む円滑なカラーコミュニケーションを実現するのが,DNPデジタルカラーリンクである。
カラーマネジメントツールの運用ポイント
大日本印刷ではカラーマネジメント運用に必須となるプロファイル作成,キャリブレーション,色変換についてのツールを開発している。特長としては,多様なデバイスへの対応と印刷に適した墨版発生アルゴリズムの採用,目視による調整機能のサポートが挙げられる。
1.プロファイル作成
精度の高いプロファイルを作ることが重要であるので,プロファイル作成時に出力するチャートの出力条件を最適化すること,デバイスの変動(面内,繰り返し)を考慮したチャート作り,出力方法などがポイントとなる。
また,いかに注意深くプロファイル作成を行ったとしても完全なカラーマッチングは得られないことを認識しておく必要がある。再現範囲の違い,再現意図の指定,測定誤差,計算誤差などが原因となるので,高精度なカラーマッチングを行うには最終的に目視による微調整が必要となる。
2.キャリブレーション
いかに効率的かつ最低限のキャリブレーション作業にするかがポイントである。そのためには,自動測定器の利用や出力機の特性に応じたタイミングでのキャリブレーションが重要である。また色材のロットが変わると色再現も変わるケースが多いので,ロット単位での色材のまとめ買いといった方法も場合によっては有効である。
3.色変換
オペレータの作業負荷とならないよう,変換処理の自動化がポイントである。ICC方式による色変換では,墨版の扱いがしばしば問題視される。製版スキャナが発生する墨発生や,墨ベタ文字は色変換しないといった,印刷適性に合ったデータ変換の仕組みが重要である。
その他にも,カラーマッチングの限界への理解を促し,違いの傾向がつかめれば十分に運用で使いこなすことは可能であるということも理解してもらう必要がある。また,使用ツールや色変換エンジンの統一化を使うことによって,差を少なくする努力も必要である。さらに,関連部署間の連携をとることによって,変更があった場合のプロファイルの見直しや更新を徹底させるといったことが重要である。
カラーマネジメントツールの課題
現状市販されているツールでプリンタと印刷のマッチングを行っても,品質要求度の高い品目の色校正に使えるレベルにはまだ達していない。従来の色校正の代替となるレベルのプルーフ出力を実現するためには,現状のプロファイル作成ツールで作成したプロファイルの微調整が必須である。しかしプロファイルの調整ツールは,多機能であるために使い方が難しかったり,どのように調整すればよいかわかりにくいものが多い。工場で運用可能な,感覚的にわかりやすく簡便なツールが求められている。さらに校正用途での運用に耐えるカラーマッチングを実現するには,ガモットマッピングの最適化も必要であろう。
また,印刷まで含めたカラーマネジメント運用を行うためには,印刷の標準化が前提となる。印刷機のオペレータによる合わせ込み作業がなくなることはないが,標準印刷条件を決め,それを安定再現する仕組みを実現すれば,刷り出し時間の短縮,印刷品質の安定化が可能となる。
2000年2月3日PAGE2000コンファレンス「カラーマネジメント」より
■関連するセミナー
*7月11日スタート CMS Workshop カラーマネージメント達成への4日間
*7月28日 Techセミナー デジタル時代の印刷管理−印刷の標準化とカラーマネジメント
2000/06/18 00:00:00