DTP豆知識(200005) インターネットと、プリントサーバ
本コーナーでは,DTPエキスパートを目指すうえで理解しておきたいことを模擬試験形式で解説します。JAGAT認証DTPエキスパート
福原節寿氏に,問題のポイントや重要点を解説していただきます。試験勉強のご参考に,またはDTPに必要な知識の確認にご活用ください。
次回,第14期DTPエキスパート認証試験は2000年8月20日に行われます。詳細はDTPエキスパートのページをご覧ください。
問1 インターネット
次の文の[ ]の中の正しいものを選びなさい。
インターネット(Internet)は,コンピュータネットワーク同士を接続したもので,目的とするあて先への経路を決める装置を[A:(1)パケット (2)ハブ (3)ルータ (4)ブリッジ]という。インターネットでは経路中の専用または汎用コンピュータによって行われ,経路の途中が寸断されても[A]が迂回ルートをみつけるので,[B:(1)思い通りにつながらない (2)接続性が高い]。
インターネットは,データを細切れにして1つずつあて先をつけて送る[C:(1)パケット (2)ハブ (3)ルータ (4)ブリッジ]通信という方法をとる。使用するプロトコルはワークステーション(UNIX)の標準である[D:(1)TCP/IP (2)IPX (3)HDLC]である。単位となるネットワークの名前が[E:(1)ドメイン (2)DNS (3)URL (4)ホームページ]である。各装置にはIPアドレスが割り振られ,それに対応するホストの名前は[F:(1)ドメイン (2)DNS (3)URL (4)HTTP]が管理する。
インターネットは公開された共通のプロトコルと共通の仕組みで接続されているので,世界中のどこにでも接続できる。そのため,外部からの不正侵入に対するセキュリティ対策として,[G:(1)ファイヤーウォール (2)ゲートウェイ (3)ファイヤーブリッジ]という機能でIPアドレスをチェックし,企業内LANを保護する方法がある。それには,パケットフィルタリングサービスを採用したり,[H:(1)プロキシ (2)プロテクト (3)ドメイン]と呼ばれるサーバを設置して行う。また,個人の情報を保護するための暗号化技術では,RSA方式が有名であるが,これは相手と[I:(1)同じ鍵 (2)異なる鍵]を使用して暗号化と複号化を行う[J:(1)共通鍵 (2)公開鍵]暗号法である。
【関連項目】
昨今,一般的なこととして捉えられているインターネットであるが,その背景にあるネットワークの基礎知識,仕組みを理解した上で,DTPもしくはグラフィックの環境のなかにどのような形で展開されているのかを考えてもらいたい。例えばリモートアクセス,リモートプルーフとはどんなことなのか,などが挙げられる。
【出題のポイント】
この問題では,インターネットの仕組みから,ネットワーク構築までの基礎知識が問われている。ネットワーク関連で日常的に使われている語彙を正しく理解してほしい。
【問題解説】
インターネットとは,簡単にいうと世界規模のネットワークであり,網の目のように相互接続されていることは周知のことである。その拠点となるプロバイダーが,各種(Web,メール,FTPなど)サーバを設置し,サービスを供給している。やり取りされる情報は,複数のルータによって行き先を振り分けられて,目的とするコンピュータまで届けられる(ルーティングの機能:通信経路の選択)。LANで使用されるハブもしくはブリッジも,ネットワークの中継機であるが,ルーティングの機能はない。ルーティングによって送信先のコンピュータまで経路が自動的に設定されるので,経路が寸断されるようなことがあっても接続性が良い。Aは3,Bは2となる。
容量の大きなデータを一度に連続して送信すると,長時間そのネットワーク(回線)が占有されてしまう。そこで考えられたのが,データをある単位で分割し,ヘッダ(あて先)を付けて送信することである。これによって,他の端末からのデータも1つに占有されることなく,ネットワークを利用できる。この単位がパケット(小包)と呼ばれる。
ネットワーク同士の間では,必ず何語でやり取りするかというプロトコルが必要であり,これは通信に関する規約で決められており,フォーマット(やり取りされる情報の構造)とプロシージャ(やり取りの手順)によって構成されている。インターネットでは,TCP/IPであり,LANの中では,AppleTalk,NetBEUIなどがある。
インターネットに接続されるコンピュータには,通信のために,おのおの異なる32bitの数字の羅列であるIPアドレスが割り振られる。これを「www.jagat.or.jp」のように,人に読みやすくした形式がドメイン名である。このドメイン名とIPアドレスの変換を行う仕組みが,DNS(Domain Name System)であり,DNSの機能をもつサーバがDNSサーバとなる。Cは1,Dは1,Eは1,Fは2となる。
インターネットに接続している環境(社内LANなど)では,だれにでも公開できる利便性がある反面,不正侵入の危険性もある。こうした不正侵入を防ぐために,外部ネットワークと内部ネットワークの中間に設置されるサーバや仕組みが,ファイヤーウォールである。ファイヤーウォールとは,日本語では「防火壁」という意味で,ネットワーク上の火事,不正侵入を阻止する壁といった感じか。
ファイヤーウォールを構築するには,主に2つの方法がある。中継機となるルータによって通過するパケットを制限し,不正なパケットを破棄する方法と,さらにゲートウェイによって上位層でパケットを監視するものがある。パケットを監視することをパケットフィルタリングといい,ゲートウェイをファイヤーウォールとして機能させるのに必要なものとして,プロキシサーバがある。プロキシとは,「代理」の意味である。Gは1,Hは1となる。図1を参照のこと。
インターネット上の商取引や情報のやり取りを行う際には,文書の暗号化と復号化が必要となる。この暗号化と復号化には,同じ鍵「共通鍵」を使う方法と,だれにでも渡せる「公開鍵」と自分だけが管理する「秘密鍵」とを使う方法がある。一般には,後者のほうが多く普及しており,Iは2,Jが2となる。
【模範解答】
A.(3),B.(2),C.(1),D.(1),E.(1),F.(2),G.(1),H.(1), I.(2),J.(2)
【キーワード】
パケット,ルータ,プロトコル,ドメイン,DNS,ファイヤーウォール,プロキシ
問2 プリントサーバ
次の文の[ ]の中の正しいものを選びなさい。
プリントサーバは,ネットワーク上で出力機を共有するために,さまざまなOSやアプリケーションと各出力機との接続を行い,プリンタを制御する。クライアントから印刷命令があると,サーバは文書をスプールし,クライアントのコンピュータを解放する。
アプリケーションが作った文書など印刷ジョブは,待ち行列を意味する[A:(1)プリントサーバ (2)スプール (3)キュー (4)スタック]で印刷待ちになる。ここから印刷ジョブを取り出して出力機に転送するのが[B:(1)スプール (2)キュー (3)スタック (4)プリントサーバ]である。
出力機にはプリントサーバに接続されたものと,直接ネットワークに接続するものがある。ネットワーク接続型プリンタでは,他のクライアントが使用中だとプリントできないが,その場合でもプリンタサーバを使えば待ち行列に入れるので,効率的な運用ができる。
また,プリントサーバを使えば,実際の出力機に対してネットワーク上で使う名前をつけることができる。1つの出力機を用途によって別の名前をつけて使い分け,出力解像度や[C:(1)網点 (2)色分解 (3)アプリケーション]の設定を自動化できる。
また,複数のイメージセッタの負荷を均一化するために,同種の複数のプリンタに同じ名前をつけて,1つのキューから複数のRIPへ振り分ける[D:(1)スプール (2)OPI (3)DCS (4)ロードバランス]機能をもつものもある。印刷ジョブの画像を差し替える[E:(1)スプーラ (2)ロードバランス (3)OPI]機能を伴うものもある。
プリントサーバの機能は,ネットワーク内のどれかのコンピュータが行うが,他のサーバとの兼用としてWindowsNTサーバなどがよく使われる。WindowsNTサーバは,[F:(1)Netware (2)Appletalk (3)トークリング]をサポートしているため,PCユーザがMacintoshのネットワーク内のプリンタを使ったり,MacintoshユーザがWindowsNTネットワーク内のプリンタを使うことができるからである。プリントサーバの管理機能としては,出力機のアクセス権の設定,印刷ジョブの優先順位の設定,印刷する時間帯の設定,待ち行列の変更,出力機の使用状況の追跡などがある。
【関連項目】
ネットワーク運用には,効率を上げるためにいろいろな仕組みがあり,そのひとつにサーバ運用がある。サーバ自体の意味から始まり,構築するためのデータベース,スクリプト,アセッツ管理など,あるいはハード関連ではバックアップ機能,RAID,セキュリティなども併せて理解してほしい。
【出題のポイント】
プリントサーバ自体の仕組み,機能とともに,その前後のデータの流れ(この設問にあるOPI機能など)も含めて理解してもらいたい。図2のOPIサーバ運用を参照のこと。
【問題解説】
いろいろなサーバ運用があるが,サーバを仮想のプリンタに見立てるのが,プリントサーバである。ネットワークで構成された編集機側から出力指示が出されると,実際の出力が終わるまでその編集機は解放されない。複数台の構成では非常に効率が下がってしまう。そこでプリントサーバでいったん印刷ジョブを受け取り,編集機側を解放することで作業効率を上げる。プリントサーバの中では,いくつかの印刷ジョブに順番をつけて順次出力を行う。
Aは順序立てされたデータの列のことで,3となる。このキューは必要に応じて順序を入れ替えることもできる。実際に出力データをプリンタに転送するのもこのサーバの役目になるので,Bは4となる。スプールは,データをサーバ内にためることをいい,スタックは,決められた記憶単位の中にデータを出し入れするような,コンピュータ内での演算処理の時に使われる。
またプリントサーバには,複数の仮想プリンタ(ホットホルダ)が設定でき,それぞれ出力条件が設定できる。出力条件としては,個々の出力機の用紙サイズ,出力解像度,スクリーン線数などが挙げられる。Cは一応1が正解だが,新しいRIPでは,色分解(RGB→CYMK変換:In-RIPセパレーション)を行えるものもあるので,2でも間違いではない。
そのほかに,出力効率を上げるために,状況に応じて印刷ジョブを複数の出力機に振り分けるロードバランスや,多く併用されるOPI(Open
Prepress Interface)がある。
OPIは,サーバ内に実画像をもち,編集機側でレイアウトに指定された粗画像を差し替えて,出力する機能である。DCSとの相違,あるいはOPIとの併用での運用も理解してほしい。実際には,OPIとは別に圧縮画像による運用も多い。Dは4,Eは3となる。
ネットワークにはいろいろな端末が接続されるが,必ずその間に通信プロトコルが必要となる。ここではMacが接続されていることから,Fは2となる。
【模範解答】
A.(3),B.(4),C.(1),D.(4),E.(3),F.(2)
【キーワード】
プリントサーバ,OPI
(出典:月刊プリンターズサークル連載 2000年05月号記事より)
2000/07/18 00:00:00