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2001:校正・刷版の動向

CTPの新たな方向

drupa2000では,新しいCTPの流れを見ることができた。オフライン処理はバイオレットCTPに,オンプレス(DI搭載印刷機)は無処理サーマルCTPにという動きである。
バイオレットCTPレコーダのレーザ出力は数十ミリワットレベルに抑えたままで(つまりイメージセッタと同じく,レーザ出力が小さいほうがレーザ寿命も長く,レーザ交換コストなどメンテナンス費用が安くすむ),バイオレットレーザ専用の高感度プレートを使う方向で開発されている。

今回のdrupaでは,内面走査タイプのサーマルレコーダのメーカーがこぞって,バイオレットレーザCTPレコーダを発表した。出展されたのはガリレオVS(アグフア),コバルト8(エッシャグラッド),バイキング(バルコ),レーザースター140V(クラウゼ),イメージメーカー(ピュラップエスコフォト),プラチナ2281(ハイウォーター)の6機種である。
一方で,サーマルCTPレコーダで,その地位を築いた感のあるクレオサイテックス,大日本スクリーンからは,バイオレットレーザCTPに関する発表はなかった。

そして,対応するバイオレットレーザプレートについては,三菱製紙のSDP-αB,アグフアのLAP-Vなど銀塩方式に加えて,高感度フォトポリマー方式では三菱化学メディアのLV-1(60μJ/cm2)と,富士写真フイルムの参考品(60μJ/cm2)の2種類が技術発表された。
また,UVランプ方式で通常のPS版を焼き付けるCTPレコーダには,ベイシス/東洋インキのUV-Setterと,ピュラップエスコフォト社のDICON(ダイコン)がある。
新製品のUV-Setter57(690×940mm)は,360〜450nmUV光源と改良された78万画素の反射型DMDで,通常のネガPS版に露光する。高速タイプの2ヘッドモデル710HS(1350×1700mm)は14版/時で出力する。ダイコンは平面走査2キロワットの水銀灯をUV光源としている。全幅長1125mmの光スイッチアレーで,スポット径20ミクロンのビーム192本で露光という独特な機構であるが,デモで見る 限り全くの未完成であった。

サーマルCTPについても新たな方向性が示された。現像工程を「無処理」または「簡易処理」にして,DI印刷機によるオンプレスCTPと,自現なしのCTPレコーダで使われていく方向だ。一方,現像処理が必要な現在のサーマルプレートは,ポストベイキングを行い,超ロングラン(数十万〜数百万通し)用途に使う流れのようだ。
無処理または簡易処理の中心的な方法は,IR加熱部を画線にするネガ型アブレーション方式であるが,デブリ処理の課題解決の方法として「IR熱で膜強度を緩めて,印刷機の湿しローラとインキローラで残膜を除去する」アイデアが実行されている。

アグフアは「スイッチャブル・コーティング」といわれる技術をThermoliteで実現した。プレート上のポリマーはそのまま画線部になり,非画線部にしたい部分をIR加熱して,ポリマー膜を緩め,次に湿し水現像で残膜を取り除いて,砂目を出すポジ型の方式である。さらに,感光剤ポリマーを液状にして,スプレー方式で金属シリンダ上に塗布し,生版を機上で作成してからサーマルイメージングして刷版を作るLiteSpeed技術が,パネル展示された。
アブレーションプレート対応のサーマルCTPレコーダは,デブリ排除のバキューム装置を要するが,アグフアのGalileo Talant,PressTekのDimension400などが対応している。また,オンプレスCTP印刷機はDIヘッド部にバキュームを装備するなどして,デブリ対策を行っている。

CTPレコーダのもうひとつの方向は,大サイズモデルであるVLFタイプの増加である。A倍判以上などのレコーダは従来,クレオサイテックスがプレートセッタ,トレンドセッタ,ロテムの各シリーズでVLFを何機種か提供していたし,バルコのリソセッタXなどがあった。
新たにアグフアが発売したX-Calivur VLF(エックスカリバーVLF)は,外面ドラムで830nm,48ビームモデル(標準)と96ビームモデル(高速)で,フレームにはグラナイト(御影石)が使われており,50,60,70,80インチ幅の4機種ある。

バルコのMondrian(モンドリアン)は,2035×1550mm(32-UP)の平面走査で830nm,80Wレーザが搭載されている。新しいメーカーとしては,コムテックスが国内に紹介するLuscher(ラッシャー)がある。Xpose!80,Xpose!120,Xpose!160,Xpose!180の4モデルは内面ドラムである。ドラム内の回転ユニットに搭載された1W,830nmのLD64個によって,64本ビームで露光するユニークな構造である。サイズはモデル80(800×600mm)からモデル180(2030×1485mm)のVLFタイプまである。

フレキソCTPはグラビアを凌駕するか

CTP技術によって劇的に品質が向上したのはフレキソ印刷で,175線,5〜90%網点が再現できるなど,パッケージ印刷分野ではグラビアに取って代わる勢いである。
レコーダでは,老舗のバルコからはナローサイズのCDI Spark(サイレル・デジタル・イメージャースパーク)が出された。

クレオサイテックスは,ThermoFlexの名称に統一した。ThermoFlex 2630(トレンドセッタベース),ThermoFlex4045,LotemoFlex4045(ロテムベース)と,スリーブに直接,イメージングする技術展示も行った。

グラビア製版機器メーカーであるヘルグラビアシステムからHelio Flex F2000,同じくオハイオからはENGRAVERS Digital Laser Imaging Systemが出展された。対応するフレキソCTPプレートはデュポン(サイレル・デジタル・プレート),旭化成(フレキソCTP),BASF(デジ・スリーブ),東レ(トレリーフCTP)などが発表された。

大サイズ化するカラープルーフ用インクジェットプリンタ

drupa2000では,特に海外メーカーが何機種かの大サイズ(VLFタイプ)CTPレコーダーを出展したが,これに伴ってカラープルーフ用途のインクジェットプリンタも大サイズ対応してきた。例えば62インチ(157cm)幅の武藤工業製FALCON RJ-6000-62をベースにした機種がいくつか発表された。また,クレオサイテックスのIris43WideやアグフアのSherpa2(シェルパ2),など,用紙反転機構を付けた両面機も機種が増えて,海外における両面プルーフへのニーズの強さを感じる。この分野では海外においてはHewlettPackard(HP)のDesignJetシリーズが大きな市場を握っている。

インクジェット方式には,必要なインキ粒しか飛ばさないドロップオンデマンド方式と,インキ粒子を常時発射し電荷によりジェット方向を制御するコンティニュアス方式がある。
ドロップオンデマンド方式は,さらにEPSONなどのピエゾ素子による方法と,インキを瞬間的に加熱するHPのサーマル方式およびキヤノンのバブルジェット方式がある。

注目製品の1つがEPSONがdrupaに合わせて投入してきた新製品,MC-9000,MC-7000(海外ではSTYLUS PRO 9500,STYLUS PRO 7500)であろう。国内ではPM-9000C,PM-7000CとしてCTPユーザに支持も多いインクジェットプリンタをベースに開発された,顔料インキ専用モデルである。
新開発されたインキは微粒子化して,さらに表面をレジンコーティングした水系顔料インキである。従来からローランド ディー.ジー.や武藤工業のようにEPSONからヘッドなどの供給を受けて顔料インキを搭載する機種もあるが,EPSONが開発した顔料は粒子径をサードパーティー製の数分の一以下に微粒子化することで,水性溶媒中で粒子がブラウン運動できるまでになっているという。

顔料粒子にコーティングしてあるレジンの効果は,印刷後に顔料から分離したレジンがインキ面をカバーすることで,耐摩擦性や光沢が向上できることになる。
さらに顔料の採用によって,染料インキで課題となっていた高湿度下における色調変化の落ち着きまでの時間を従来の数分の一に短縮できるという。カラースペース的には,染料ではYの色調が印刷インキよりもR方向にズレていた点も改善されているようだ。顔料の採用で,当然ながら耐候性も大幅に向上し,プルーフ用途だけでなく屋外ポスターへの利用にも期待が持てる。

2000/08/18 00:00:00


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