データベースと連携するQuark自動組版XTension
T&G研究会6月のミーティングは(有)ディー・ティー・アイの有吉康夫氏と(株)リンクスの小澤正氏に,自動組版ソフトDBPublisherについてうかがった。DBPublisherはデータベースと連携して自動組版を行うQuarkXPressのXTensionで,同社の従来製品DBPressなどと同じコンセプトに基づいて開発されたものである。DBPRessでは実現できなかった機能や最近のデータベース利用の広がりなどを考えて開発を行っている。当日は実際にデモンストレーションも交えて詳細な機能説明が行われたが,ここでは,特に自動組版とデータベースの考え方についての有吉氏お話とDBPublisherの基本的な機能をまとめてみた。
発想の転換
DBシリーズを10年前に発売したときは不動産情報誌「アパート・マンション情報」の自動組版が目的だった。自動組版ソフトは構築したデータベースを使う頻度がポイントだが,情報誌は毎週,隔週,毎月という頻度で確実に使うからデータベースを作るという最初のハードルが越えやすいのである。その後,住宅情報誌や自動車情報誌,カタログ,生協の購入ガイドなどさまざまな印刷物制作に導入されているが,やはりデータベースの利用頻度が高い媒体がターゲットであることは間違いない。
ところが,私も驚いたのだが,非常にデザイン性の高いエイボン化粧品の訪問販売用のパンフレットをDBPressを使って制作している例があるのである。こんなにデザイン性の高いものにDBPressが使えるのかとも思うのだが,このパンフレットは利用頻度が非常に高く,年間30回も作っているようである。30回ともなると,どれが最新商品で価格がいくらかなどという商品情報の管理が大変である。そこで,情報管理のために自動組版という仕組みを使うということなのである。つまり,普通なら印刷物のパターンが決まっているから自動でやりたいというのが自動組版の発想なのだが,エイボン化粧品の例はそうではなく,商品情報を一元管理する仕組みを作りたいという目的が先にあって,そのために自動組版を導入したのである。情報だけデータベース管理しても制作をマニュアルでやっていたのでは人為的なミスが避けられない。つまり,データベース化にあたっては情報の一元管理と自動処理とをセットで考えなければならないということだ。それを教えてくれたのがエイボン化粧品であった。
DBPublisher開発のポイント
QuarkXPressをデータベースのフロントエンドにしたいという意図があって,DBPublisherはゼロから作ることになった。QuarkXPressを通してその背後で動いているデータベースを見たり,編集したものをデータベースに書き戻すなど,QuarkXPressからデータベースを操作するというイメージである。これと関連するのがデータベースとの双方向インタフェースである。自動組版というのはいわば一方通行でデータベースからデータをもらってドキュメントページを作るという役割に特化している。それに対して双方向というのは,ドキュメントページで文字を編集したり属性を変えたりすれば,それがデータベースに戻るということである。これをなるべく等価にやりたいと考えた。
もうひとつ強調したいのは自動組版と対話組版との融合である。自動組版とは自動的に何百ページものドキュメントをコンピュータに作らせることといってよい。しかし,QuarkXPressで自動組版するということは,やはり後で修正したいということなのである。だから自動組版した後,自動組版の動作と矛盾なく対話的に修正ができることを目標にしている。
また自動組版はレイアウトが画一的になりがちだから,多様なレイアウトが行えるように,同じドキュメントページでも流し込みの方向を変えたり,テンプレートサイズを変えたりいろいろなことができるように工夫した。
もう1つ重要なのはテンプレートの可搬性である。DBPressでは,1つのドキュメントで作ったテンプレートのレイアウト要素を,他のドキュメントに持っていけないのが大きな制約だった。しかし,DBPublisherでは,あるドキュメントページでテンプレートを作ったら,それを他のドキュメントへコピー&ペーストし,データベースのテーブルの名前とフィールド名が合ってさえいればそこへ流し込むことができるようになった。
自動組版と対話組版
DBPublisherの対話組版はドラッグ&ドロップで1レコードずつドキュメントページに組版する。ページ数が少なくてレイアウトも定型でないチラシなどの制作に向いている。テンプレートを設計するときにも使えるし,自動組版の修正にも使える。
対話組版ではデータパレットというものを使う。データパレットにはフィールドタブ,レコードタブ,画像タブ,テンプレートタブの四つのタブがあり,それぞれ各フィールドの名前,データベースの1レコード,画像のプレビューと名前,テンプレートのプレビューを表示する。あらかじめ作っておいたテンプレートをドキュメントページに置き,そこにレコードタブや画像タブから目的のテキストや画像をドラッグ&ドロップで組版していく。テンプレートを1つ置いて組版するため,ページ数の多くないものを対話的に組版していくのに向いている。それに対し,自動組版機能は数10〜数100ページのドキュメントを自動的に作る方法である。自動組版はマスターページに必要な雛型をすべて用意しておき,マスターページを各ページに適用しながら組版する。これはページ数が多くて定型の印刷物に向いている。
自動組版のあり方
商品情報を蓄積したデータベースを利用する自動組版においては,印刷会社/製版会社/クライアント/デザイン会社のうち,どこがデータベースの主導権を持つかがビジネスの成否を左右する。印刷会社や製版会社にシステム部門があるなら,そこでデータベースの構築・管理・運用を行うのが普通だろう。一般的に,クライアントやデザイナーがデータベースまで抱え込んでしまうのは難しいと思う。しかし,このときに生じる問題は割付ソフトをどうするかである。データベースの構築から自動組版まで印刷会社がやってしまうと,クライアントに手の内を見られて内製化されてしまう可能性がある。
クライアントには商品の割付だけを行う専用ソフトを提供するようにすれば,クライアントの内製化を止められるのではないだろうか。データベースや自動組版自体は仕組みの一部だけを見せるようにして,割付はクライアントにやってもらう。これならクライアントにもメリットがあるし,印刷会社のメリットにもなる。この割付ソフトはデベロッパー向けのプログラムを用意しており,クライアントごとに違ったソフトを作ることができる。
(テキスト&グラフィックス研究会)
2000/08/23 00:00:00