東洋インキ製造株式会社(社長 佐久間国雄 氏)は2000.8.10、オフセット枚葉印刷における石油系VOCs成分ゼロ化を図ったインキ・資材群を「SYSTEM of TOYO ECO.PRINT.」というコンセプトで開発し、システムとしてを発表しました。このシステムのブランド名は、LEOSTEP(レオステップ:社章であるライオンとSTEPの造語)ですが、このような環境対応を強化した製品を単品としてでなく、インキと資材郡までをシステムとして発表するのは、日本では初めてのことです。
同社では、地球環境の保護・省資源及び印刷作業環境改善の観点から、いち早くインキ中の石油系溶剤のアロマフリー化と大豆油をはじめとする植物油化を進めて、オフセット印刷市場における、昨今の「環境対応」への要求に取り組んでいます。
米国では揮発性物質(VOCs)そものの排出が規制されるようになってきています。今回開発した枚葉印刷システム「LEOSTEP」は、薄紙及び厚紙枚葉印刷をターゲットとしたものであり、「インキはもとより、印刷工程に使用される資材全般に亘りVOCs(揮発性有機化合物)を低減する」というコンセプトに基づいて開発したものです。
従来の大豆油インキとの大きな違いは、大豆油インキでは多少残っていた石油系溶剤を完全に無くし、ゼロにした点が開発のポイントです。
<従来技術>
これまでオフセットインキ中には、オフ輪、枚葉印刷共に石油系溶剤を含んでおり、インキの乾燥は、インキ中から溶剤を離脱しての樹脂の析出と植物油成分が酸化重合することで乾燥皮膜を形成します。オフ輪印刷では加熱による蒸発乾燥、枚葉印刷では物理(毛細管)現象による浸透乾燥と化学反応による酸化重合乾燥です。
枚葉印刷では、乾燥時にエネルギーを必要としないメリットがある一方、長い時間をかけて乾燥が進むため、厳密には、この乾燥過程の中で、インキ中のVOCs成分は印刷用紙などに保持されるか、僅かずつ大気に放出されています。また、印刷時に機械上でも蒸発しています。
なお、オフ輪印刷では、蒸発乾燥の際大気に放出される石油系溶剤(VOCs成分)は、乾燥オーブン直後にアフターバーナーによって分解され、無害にした上で放出されます。従って、環境への影響という観点では問題は少ないと言えます。
また、インキ以外の資材としては、枚葉印刷物の付加価値を高めるものとして注目されている水性インラインコーティングワニスには、アルコールやグリコール類などのVOCs成分が使用され、IR(赤外線)乾燥時に大気中に放出せざるを得ませんでした。更に、印刷工程で使用される洗浄剤には石油系溶剤が使用されていますし、枚葉印刷物および印刷現場の低VOCs化には、インキだけでは到底解決できない課題がありました。
同社ではこれらの実状を踏まえ、まず枚葉印刷システムにターゲットを置き開発を行っていました。
<新システムの特徴>
「LEOSTEP」は、薄紙/厚紙用インキの他に、上刷りOPニス、水性インラインコーティングワニスに加えて、印刷工程で使用されるインキ洗浄剤から成ります。
これら各製品では、インキや洗浄剤に含まれる石油系溶剤(枯渇資源)を大豆、亜麻、ヤシなどから抽出される植物油(生産資源)へ置き換え、石油系溶剤由来の揮発性有機化合物(VOCs)成分の使用をなくしました。また、水性インラインコーティングワニスに含まれるアルコールやグリコール類は、水などのNon−VOCs成分に置き換え、完全水性化を実現しております。
このように、「LEOSTEP」は、インキだけではなく、洗浄剤、インラインコーティングワニスなどの印刷物製造工程に使用される資材からVOCs成分を排除し、印刷現場から印刷物までトータルでのVOCs成分ゼロ化を図る画期的な枚葉印刷システムであります。
また、今回のシステムは枚葉印刷用ですが、今後は枚葉印刷以外のオフセット印刷全般への展開を視野に入れ、印刷機械メーカーとも協力して開発を継続する考えです。
「LEOSTEP」のVOCs対応印刷システム郡の構成
VOCs成分ゼロインキ 「TKハイエコーNV各色」(薄紙用)
VOCs成分ゼロインキ 「CKウインエコーNV各色」(厚紙用)
VOCs成分ゼロOPニス 「CKウインエコーNV OPニス」(薄・厚紙兼用)
VOCs成分ゼロ水性インラインコーティングワニス「トーヨーリソコート NV」
VOCs成分ゼロ植物性洗浄剤「ベジオールCEG」
これらは、製品中の石油系溶剤分を大豆油に代表される生産資源である植物油に置換し、石油系溶剤由来のVOCs成分の使用をゼロにしたものです。これまで一般的には、これら植物油を多量に使用することによりセット・乾燥性が劣るとされており、これが枚葉印刷での低VOCs化を妨げる原因ともなっていました。
(1)VOCs成分ゼロインキ
「TKハイエコーNV」「CKウインエコーNV」「CKウインエコーNV OPニス」では、樹脂のスウェリング特性をコントロールする技術を確立したことにより、ワニス中の樹脂からの植物油の離脱速度とインキの流動性の制御が可能となり、従来このように植物油を多用する上で障害となっていたインキのセット・乾燥・光沢バランスの最適化が図れました。これにより、印刷現場の生産性を犠牲にすることなく、大幅にVOCsを低減し、高品質の印刷物を製造することを実現しました。尚、これらの製品は全てエコマークおよびASAの認定を受けております。
また、これらの製品は、弊社製湿し水原液「アクワマジックシリーズ」を用いて湿し水中のIPAを使用せずに印刷することが可能ですので、湿し水からもVOCs成分であるIPAを排除することができます。弊社では、「アクワマジックF」を推奨します。
(2)VOCs成分ゼロ水性インラインコーティングワニス「トーヨーリソコート NV」
枚葉印刷市場では、多色機+インラインコーターのシステムが短納期・高機能・環境対応の観点から注目を浴びています。従来、水性インラインコーティングワニスには、ワニス組成上、IPAやグリコールエーテルなどのVOCs成分を含むことが一般的であり、IR(赤外線)加熱乾燥のために、大気中にVOCs成分を放出せざるを得ませんでした。
「トーヨーリソコート NV」は、これらVOCs成分を取り除いた完全な水性インラインコーティングワニスで、日本初の全く新しい技術です。乾燥はIR乾燥方式で行いますので、既存の設備での使用が可能です。
アルコールやグリコールエーテル類を蒸発潜熱が高い水に代替することは、従来技術では乾燥特性が劣化するという大きな問題を抱えていました。「トーヨーリソコート NV」では、樹脂成分に皮膜形成性・乾燥性・光沢バランスのとれた新規な樹脂を新たに開発し、インラインコーティングワニスに要求される、塗工適性・皮膜物性などの諸性能を満たす技術を確立しました。
「LEOSTEP」では、インキ、OPニスに加えて水性インラインコーティングワニス「トーヨーリソコート NV」を組み合わせることにより、・印刷物の表面保護、・フィルム貼りに代わる光沢加工やリサイクル性などの高機能化や高付加価値化のみならず、・枚葉印刷でのノンスプレー化やフル棒積みなどの印刷作業性の向上といった、インラインコーティングシステムが本来持つ特長をVOCs成分ゼロで実現します。
(3)VOCs成分ゼロ植物性洗浄剤「ベジオールCEG」
従来インキ洗浄剤には、灯油などの石油溜分が使用されています。
同社では、5年前から、デンマーク・オルフス社製の植物油ベースの洗浄剤「ベジオールCEG」を発売しています。これは、ヤシ油・パーム核油などの植物油をベースにした洗浄剤で、石油溜分を一切含まないVOCs成分ゼロ洗浄剤として販売してまいりましたが、これまでの販売実績は決して多いとは言えないものでした。
しかしながら近年、「環境」の観点から引き合いが増加してきており、環境調和型ブランド「LEOSTEP」のラインナップとして位置づけを明確にし、印刷工程での洗浄剤から放出されるVOCsを低減する切り札として、改めて販売を強化してまいります。
○発売時期など
2000.9.1の発売を予定しており、価格はインキなどは同社通常製品の2割増し、資材で1割増しになる予定です。
○問合せ先
〒104-8377
東京都中央区京橋2-3-13
東洋インキ製造株式会社
TEL 03-3274-4829 (グラフィック事業本部 オフセット事業部)
2000/08/14 00:00:00