NTTの調査研究機関である(株)情報通信総合研究所の小沢隆弘氏から,モバイルとブロードバンドを中心に,海外の状況などと比較しながら,2001年の通信インフラ動向について解説をしていただいた。
海外の主な動きとしてヨーロッパをはじめ,IT先進国であるアメリカ,アジアでインターネット普及率が高いといわれる韓国の状況が紹介された。
アメリカのインターネット普及は50%を超え,現在は伸びが減速している。ブロードバンドは,通信事業者の経営難から通信料の値上げが進み,ユーザ数増加の足を引っ張っている。携帯電話は,デジタル化が遅れており,ネット接続は携帯電話よりもPDAから行うという方向にむかっている。
ヨーロッパのインターネット普及は順調に進んでいるが,ブロードバンドは低調で,CATVもほとんど利用されていない。携帯電話は2.5世代へと順調に移行している。通信事業社は,ブリティッシュテレコムが買収や技術への投資が先行しすぎて,借金が膨大となっている。
韓国のインターネットは順調に普及が進み,ブロードバンドはADSLが世界一の普及をしめしている。携帯電話もショートメール利用を目的とした若者を中心に普及している。
日本では,政府が2001年にIT推進の一環としてe-Japan計画をうちたてた。計画では,超高速アクセスネットの整備やインターネット関連の教育の推進,電子商取引の促進などが掲げられている。
日本のブロードバンドアクセスの手段として,CATVとADSLの加入者数が昨年から急増している。特にADSLはブロードバンドアクセスの本命とみられているが,問題点もいくつかある。電話局から5kmまでは問題ないが,それ以上距離が遠くなると通信が難しい。また,アメリカでは価格競争でやぶれたADSL会社が次々につぶれており,日本でもどうなるかはわからない。
情報通信総合研究所の調べでは,2005年ごろまでには光ファイバの需要も高まるだろうと予測している。
ブロードバンドのキラーコンテンツとして,音楽やビデオ,ゲームがあげられているが,これらは全て今あるサービスである。今までにないコンテンツ,例えば,個人のビデオ映像や,編集不要な中継映像,マイナーな映像コンテンツなどが真のキラーコンテンツになるのではないかとみられている。
2001年3月には携帯・自動車電話の加入が6000万台を超えた。その6割がNTTドコモを利用している。NTTドコモの成功の理由は,自社で端末を開発できるという高い技術力だという。また,広い地域で通話できることも,多くのユーザを獲得した原因となった。
しかし,5月にサービス開始予定であった,モバイルブロードバンドのIMT2000関連は今秋にのばされた。ソフトやシステムのバグ調整という名目だが,どのようなサービスが提供されるか見えていなかったから,時期がずらされたのではないか,と小沢氏はみている。
ブルートゥースなどの技術が携帯電話に搭載されるようになると,PCとのデータ交換なども可能となるが,まだ技術は実現していない。
携帯電話の普及は8000万台が限界だといわれている。その先は,自動販売機に内蔵して在庫管理したり,物に組み込んで紛失した際にGPS情報で探し出すなど,機械,生物,物への装着という利用へ向かうといわれている。
2000/08/23 00:00:00