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DTP豆知識(200009)CIExy色度図,日本語組版

本コーナーでは,DTPエキスパートを目指すうえで理解しておきたいことを模擬試験形式で解説します。JAGAT認証DTPエキスパート 田邊忠氏に,問題のポイントや重要点を解説していただきます。試験勉強のご参考に,またはDTPに必要な知識の確認にご活用ください。
次回,第15期DTPエキスパート認証試験は2001年3月11日に行われます。詳細は DTPエキスパートのページをご覧ください。



問1 CIExy色度図

 次の文の[ ]の中の正しいものを選びなさい。

 CIExy色度図上で,印刷物とカラーCRTモニタの色再現域を単純化して概念的に示すと,下図のようになる。
 この色度図は,BvからGを経て(2)に至るスペクトル軌跡の内側にすべての色を置くことができる。(1)と(2)とWを結んだ三角形の内側は単一スペクトルとしては存在しない[A:〔1〕黄 〔2〕緑 〔3〕灰 〔4〕紫]系の色となる。色度は,中心Wに向かうほど[B:〔1〕高く 〔2〕低く 〔3〕暗く 〔4〕純粋に]なる。標準光源は[C:〔1〕G 〔2〕W 〔3〕Bv 〔4〕R]の色度座標をとる。
 (1)の波長は約[D:〔1〕280 〔2〕380 〔3〕780 〔4〕980]nmである。(2)の色は[E:〔1〕C 〔2〕M 〔3〕R 〔4〕G]で,波長は約[F:〔1〕280 〔2〕380 〔3〕780 〔4〕980]nmである。
 印刷物とカラーCRTモニタの色再現域を比較すると,下図に示した例では(a)が[G:〔1〕カラーCRT 〔2〕印刷物 〔3〕カラー液晶]で,(b)が[H:〔1〕カラーCRT 〔2〕印刷物 〔3〕カラー液晶]の再現域に相当する。印刷物は,可視光の[I:〔1〕短波長 〔2〕中間 〔3〕長波長 〔4〕両端]域で表現レンジの制約が大きいことがわかる。  この色度図は知覚色度が均等ではないので,知覚に近い色差を表すようにしたL*a*b*表色系が1976年に制定された。L*で[J:〔1〕色差 〔2〕色度 〔3〕明度 〔4〕収差]を表し,色相と彩度を示す[K:〔1〕色差 〔2〕色度 〔3〕明度 〔4〕収差]をa*とb*で表す。a*とb*は色の方向を示し,+a*は赤に,-a*は[L:〔1〕黄 〔2〕青 〔3〕緑 〔4〕紫]に向かう。+b*は黄に,-b*は[M:〔1〕白 〔2〕青 〔3〕緑 〔4〕黒]に向かうことを示す。数値が大きくなるに従って色が鮮やかになる。





    【模範解答】
    A〔4〕,B〔2〕,C〔2〕,D〔2〕,E〔3〕,F〔3〕,G〔1〕,H〔2〕,I〔2〕,J〔3〕,K〔2〕,L〔3〕,M〔2〕


    【出題のポイント】
     CIExy色度図は印刷物とCRTモニタで再現できる色の分布を表現している。それぞれ代表的な色では,波長(nm)との対応も重要である。印刷物で再現できる色領域とCRTモニタに表示できる色領域の違いについて理解しておくこと。

    【問題解説】 この問題に使われているCIExy色度図を見ると,(1)のBv,Gと(2)の3点を結ぶ領域の中にすべての色のスペクトルが配置されていることがわかる。(1)と (2)とWの3点を結ぶ領域の内側は,単一のスペクトルとしては存在しない紫系の色である。この図で示される色度は,中心のWに向かうほど低くなる。印刷物の色調確認などに使われる標準光源はWで,その色度座標X=0.33,Y=0.33である。また,(1)は約380nmの波長をもつ点であり,Bvを示している。(2)は約780nmの波長をもつ点であり,Rを示している。ちなみに,Gの波長は520nmである。
     CIExy色度図を見てみると,印刷物で再現できる色領域は(b)であり,CRTモニタに表示できる色領域は(a)である。CRTモニタに表示できる色領域,つまり, RGBカラーで表現できる色領域は,印刷物,CMYKカラーで再現できる色領域よりも広い。この2つの色領域の違いが顕著になるのは,可視光の中間域であり,ここでは印刷物,CMYKカラーで再現できる色領域の表現に制約が大きい。
     色の分布を理解するための色度図には,いくつかの種類がある。rg色度図は,すべての色を,それぞれの明るさをベクトル長としてもつ3次元ベクトルで表現する。それぞれの色を表現するベクトルとR+G+B=1となる面の交点の集まりを求め,R,G,Bにそれぞれ(1.0,0),(0,1.0),(0,0)の座標を与えたものが,rg色度図である。
     また,ここで扱われているCIExy色度図はCIE RGB色度を元にして,制作された色度図である。CIE RGB色度では色を示す点のうちには,負の値の座標をもつものがある。CIExy色度図はいずれの色を示す点も負の値で示されることがないように,CIE RGB色度図上の点を線形変換して制作された。
     さらに,L*a*b*表色系は人間の色覚に近づけるために,CIExy色度図を数式変換して制作されたカラーモデルである。L*a*b*表色系はCIExy色度図と色を同じように色のズレである色差で表現している。このL*a*b*表色系は1976年に制定されたが,日本でもJIS Z 8729で規定されている。L*a*b*表色系はL*が明度を表し,a*とb*が色度を表している。このa*とb*は色の方向を示しており,+a*は赤,-a*は緑に向かっている。 また,+b*は黄,-b*は青に向かっている。明度を示す軸L*と色相,彩度を示す軸a*とb*は直行しており,互いの値に干渉しない。そのため,L*a*b*表色系では,明度,色相,彩度の3要素を互いに独立した形で扱える。
     さらに,L*a*b*表色系はシステムやデバイスに依存しない。また,RGBやCMYKに比べて色再現領域が広いなどの利点があり,カラーマネジメントシステムやソフトウエアの標準カラースペースとして利用されている。


問2 日本語組版

  次の文の[ ]の中の正しいものを選びなさい。

 文章読解の妨げにならないように,文字を配列する処理が組版である。例えば,行頭行末にふさわしくない記号や約物などが現れないようにするのは[A:〔1〕スペーシング 〔2〕ジャスティフィケーション 〔3〕分離禁止 〔4〕禁則]処理である。また,特定の文字間で字間を広げたり改行したりしないようにする処理を[B:〔1〕インデント 〔2〕ジャスティフィケーション 〔3〕分離(分割)禁止 〔4〕禁則]という。  このような処理のために[C:〔1〕フォント指定 〔2〕フォント変形 〔3〕追い出し/追い込み 〔4〕文字サイズ指定]を行って,1行に入る文字列を確定する。その方法はシステムやアプリケーションによって異なる。  ワードプロセッサやDTPが一般にも普及したことで組版の不統一が見られるようになったので,組版結果の同等性のための標準として[D:〔1〕SGML 〔2〕日本語文書の行組版方法 〔3〕標準日本語DTP 〔4〕リッチテキスト](JIS X 4051)が制定された。現在では多くのDTPアプリケーションがこれに準拠するモードをもっている。しかし,これは日本語組版の基本的アルゴリズムを示すもので,[E:〔1〕ルビ 〔2〕禁則処理 〔3〕紙面レイアウト 〔4〕約物の扱い]は規定していない。  文章を区切る句読類には点丸があり,また欧文に由来するものがあるが,句読に含まれないのは[F:〔1〕コロン 〔2〕疑問符 〔3〕感嘆符 〔4〕カンマ・ピリオド 〔5〕パーレン]である。括弧類のうち,幼促音と同じく行頭禁則になるのは[G:〔1〕起こし括弧 〔2〕受け括弧 〔3〕欧文括弧 〔4〕和文括弧]である。反復符号は,[H:〔1〕行末禁則 〔2〕行頭禁則 〔3〕禁則対象外 〔4〕連数字]である。総じて記号や約物は[I:〔1〕行末禁則 〔2〕行頭禁則 〔3〕禁則対象外 〔4〕分離禁止]となるものが多い。  連続する2つの文字が別の行にまたがってはいけない例として単位記号と数字の関係がある。しかし[J:〔1〕3点リーダー 〔2〕2点ダッシュ 〔3〕スラッシュ 〔4〕連数字]は行で分離しても良い。  句読類は縦組みと横組みで使い方が異なる。一般に「、。」は[K:〔1〕縦組みだけで 〔2〕横組みだけで 〔3〕縦横両方で 〔4〕和欧混植の時だけ]使う。横組みで使用しないのは[L:〔1〕「、.」 〔2〕「、。」 〔3〕「,。」 〔4〕「,.」]であり,和欧混植や数式の多い文書では,[M:〔1〕「、.」 〔2〕「、。」 〔3〕「,。」 〔4〕「,.」]を使うのが適切である。


    【模範解答】
    A〔4〕,B〔3〕,C〔3〕,D〔2〕,E〔3〕,F〔5〕,G〔2〕,H〔2〕,I〔2〕,J〔3〕,K〔3〕,L〔1〕,M〔4〕


    【出題のポイント】 日本語組版のためのルールに関する問題である。日本語組版のルールは,写植機による組版の時代から積み重ねられてきたものである。読みやすく,きれいな日本語組版を実現するために必要なルールについて理解すること。


    【問題解説】
     日本語組版のルールも出版社などで使われていたハウスルールから始まっている。日本も欧米と同じく,最初から確固とした日本語組版があるわけではない。日本語組版が果たすべき重要な役割は,読者に読みやすい形の文章を提供することである。そのために重ねられてきた日本語組版の決めごとが積み重なり,現在の日本語組版のルールを形成している。
     日本語組版のルールのうち,まず,禁則処理を取り上げる。行頭禁則,行末禁則,分割(分離)禁止がある。行頭禁則,行末禁則では,行頭・行末にあってはいけない記号や約物を規定している。また,分割(分離)禁止では,字間を広げたり,行頭や行末に置いて改行してはいけない特定の文字を規定している。
     これらのルールに該当する記号,約物,文字が行頭や行末に置かれることを避けるには,ぶら下がり,追い出し,追い込み処理を行う。
     DTPの初期では,これら日本語禁則処理を十分にできない組版用のアプリケーションもあった。しかし,現在では,日本語組版処理用のアプリケーションは,これらの組版ルールをサポートしていることが不可欠になってきた。さらに高度な日本語組版ルールを簡単な操作で実現するアプリケーションも増えてきた。
     きれいな日本語組版を実現するための基準として,JISでも「日本語文書の行組版方法」(JIS X 4051)が決められた。このJIS基準を採用しているアプリケーションも多いが,JIS X 4051には,実際の日本語組版で利用されているぶら下がり処理が規定されていない。また,このJIS基準は日本語組版の基本アルゴリズムを決めているだけで,紙面レイアウトの規定はない。
     行頭・行末の禁則処理を考えるには,縦書き原稿用紙の使い方を参考にしてみると良い。また,行頭・行末処理では,その対象となるものを正しく選択する必要がある。行頭禁則処理の対象になるのは,文章の区切りになる句読類,括弧類,「っ」などの拗促音,反復符号,さらに,多くの記号や約物である。括弧類には受け括弧が含まれ,これは行頭禁則の対象になる。 分割(分離)禁止の対象になる例として,単位記号と数字がある。しかし,スラッシュは分割(分離)禁止の対象にならない。
     句読点の組み合わせの使い方には,縦組みと横組みの違いがある。「、。」は縦組み,横組みの両方で使われるが,「、.」は横組みでは使わない。また,和欧混植や数式の多い文章には「,.」を使う。








(出典:月刊プリンターズサークル連載 2000年09月号記事より)


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2000/08/29 00:00:00


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