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DTP豆知識(200010)デバイスプロファイル,グリフコード

本コーナーでは,DTPエキスパートを目指すうえで理解しておきたいことを模擬試験形式で解説します。JAGAT認証DTPエキスパート 田邊忠氏に,問題のポイントや重要点を解説していただきます。試験勉強のご参考に,またはDTPに必要な知識の確認にご活用ください。次回,第15期DTPエキスパート認証試験は2001年3月11日に行われます。詳細はDTPエキスパートのページをご覧ください。

問1 デバイスプロファイル

次の文の[ ]の中の正しいものを選びなさい。

 カラーマネジメントシステム(CMS)を使うためには,測色,デバイスプロファイル作成(キャラクタライゼーション),キャリブレーションなどの作業を[A:(1)発注者 (2)メーカー (3)利用者 (4)出力センター]が行わなければならない。

[1] 測色計
 測色計の種類には分光光度計,色彩計,色濃度計がある。分光光度計は分光分布や分光特性を測定し,色彩を[B:(1) L*a*b* (2)RGB (3)CMYBk (4)マンセル]値で表す。色彩計の表示でも[b]値を使うが,[C:(1) L*a*b* (2)CIExyz (3)分光分布や分光特性]は測定できない。色濃度計は,フィルタを使うため[D:(1) L*a*b* (2)分光 (3)CMYBk (4)マンセル]の濃度特性しか測定できず,機器の日常のキャリブレーションなどに使われる。

[2] デバイスプロファイル作成
 デバイスの特性を知るために,モニタ,プリンタ,スキャナなど入出力デバイスの[E:(1) 色温度 (2)安定性 (3)濃度 (4)色再現]を測定し,それを記述したプロファイルデータを作成する。
 適切なプロファイルがカラーマネジメントの精度に大きく影響する。より少ない色数の測色で,より精度の高いプロファイルを作成できるのが良い。
 具体的には,計測したL*a*b*値とRGBあるいはCMYBkの値の1対1の対照表を作成する。すべての色の組み合わせのカラーパッチを測色するのは非現実的であり,実際には[F:(1) 2〜10 (2)20〜100 (3)200〜1000 (4)2000〜10000]パッチ程度の色を測定し,ほかはそこから推測する。デバイスプロファイルの標準的なフォーマットとして[G:(1) PANTONE (2)ICC (3)CGI (4)TTF]がある。しかし,これはデータフォーマットに関するもので,その作成手法は定義されていない。

【模範解答】
 A(3),B(1),C(3),D(3),E(4),F(3),G(2)

【出題のポイント】
 各種周辺機器の特性を記録したデバイスプロファイルの作成は,カラーマネジメントシステム(CMS)を確立するには,重要な要素である。ここでは,デバイスプロファイルの役割とその作成方法を理解しておくこと。

【問題解説】
 1つのシステムでのカラーマネジメントの基本的な考え方は,1つの基本(標準)となる色空間を決め,そこで指定される色に極めて近いものをシステム内で使われる入出力機器から入力,出力することである。もちろん,ここにはカラーモニタで表示される色も含まれており,色調までを含めたWYSIWYG(What You See Is What You Get)ともいえる。
 CIE(commission Internationale de l'Eclai rage:国際照明委員会)は,すべての存在する色(可視スペクトル)を表現するために定義したCIE xyz色空間(図1参照)を元に,それを応用したCIE L*a*b*色空間(以下,L*a*b*色空間)(図2参照)を定義している。最近はカラーマネジメントのために,標準となる色空間としてL*a*b*色空間を採用することが多い。このL*a*b*色空間が標準として採用されるのは,この色空間がデバイス(入出力機器)に依存しない(デバイス・インディペンデント)からである。さらに,すべての色を色空間内の絶対値(座標位置)で表現できること,またフィルム,カラーモニタ,印刷の色域がL*a*b*色空間に含まれることもその理由である。
 実際に,カラーマネジメントを実行するには,測色,デバイスプロファイル作成(キャラクタライゼーション),キャリブレーションなどの作業は利用者が行う。

 測色,デバイスプロファイル作成などを行うためには,測色という作業が必要となる。この測色に使われる測色計には分光光度計,色彩計,色濃度計がある。これらの測色計には測色の原理により,測色できる項目に違いがある。分光分布や分光特性を計る分光光度計は,同時に色彩をL*a*b*値で表示できる。そのため,L*a*b*色空間を採用したカラーマネジメントでは分光光度計が活用される。また,色彩計は色彩をL*a*b*値で表示できるが,分光分布や分光特性は測定できない。色濃度計は,フィルタを使うので,MYBkの濃度特性しか測定できない。標準とする色空間と測色計の特性を考慮して,使用する測色計を選ぶ。
 カラーマネジメントの基本はデバイスの特性に依存しない(デバイス・インディペンデント)色再現の実現である。しかし,モニタ,プリンタ,スキャナなど,入出力のデバイスにはそれぞれに特有の入出力機構と特性があり,色再現域にも違いがある。
 そこで,入出力デバイスの色再現を測定し,その差異を打ち消すためにプロファイルデータを作成する。入出力デバイスが個々にもつプロファイルデータの精度は,正確なカラーマネジメントの鍵である。多くの色を測定してプロファイルを作成すれば,より正確なカラーマネジメントが期待できるが,測色にも時間を要するし,作成されたプロファイルを扱うのも大変である。その反面,少ない測色点しかないプロファイルには,正確さが期待できない。
 現実的で,適切なプロファイルデータを作成するためには,200〜1000パッチ程度の色を測色し,そこからプログラムを用いて,プロファイルを作成する。
 国際的な団体であるICC(International color consortium)は,異なるOSでも動作し,各種カラーマネジメントシステム(CMS)でも使えるデバイスプロファイルの記述形式を制定した。これがICCプロファイルと呼ばれ,デバイスプロファイルの国際規格となっている。

問2 グリフコード

次の文の[ ]の中の正しいものを選びなさい。

 漢字を含む日本語PostScriptフォントは,まず,[A:(1)2 (2)数十 (3)256 (4)数百]ファイルの1バイトフォントの集合として構成された[B:(1)CID (2)OCF (3)Type3 (4)CMap]フォントで始まった。
 これに対し中国語,韓国語,日本語などのマルチバイトでも,構造がシンプルで1書体当たりをコンパクトにできるフォントとして,[C:(1)CID (2)OCF (3)Type3 (4)CMap]がある。
 CIDフォントファイルは,255字に制限されない任意の数のグリフの[D:(1)ヒント情報 (2)組版情報 (3)アウトライン情報 (4)字形エレメント]が格納でき,内部で各グリフのコードとして[E:(1)区点コード (2)JISコード (3)CID値 (4)OFC値]がつけられている。
 一方,CMapファイルには,78JISや90JIS,シフトJISなどの文字コード体系と,グリフコードとの対応が記述されている。グリフセットとエンコーディングを2つのファイルに分離することにより,CIDフォントをもつ出力装置は,[F:(1)コンポジットファイル (2)CMapファイル (3)1バイトフォント]を追加することによって,1つのCIDフォントが異なった文字コード体系に対応したり,同じ文字コードでも異体字グリフを使用することが可能となる。
 また,CIDフォントでは文字の詰め組みなどのために,1つのフォントファイルに[G:(1)フォントの自動変形 (2)ビットマップ (3)複数のメトリックス (4)TrueType]をもつことができ,これを参照すれば個々の文字にふさわしい組版ができるようになる。

【模範解答】
 A(2),B(2),C(1),D(3),E(3),F(2),G(3)

【出題のポイント】
 Macintoshで日本語PostScriptフォントを扱うために開発されたOCF(Original composite Font)と,それを改良してマルチバイトのフォントでも簡単に取り扱えるようにしたCIDフォント(character Identifier Keyed Font)についての問題である。

【問題解説】
 欧米のフォントはアルファベット26文字とその他の記号類を含めても,1バイト(256文字相当)で処理できるほどしかない。それに比べ,日本語フォントは第1水準漢字,第2水準漢字だけで7000字強,そこにユーザ外字などの外字,約物,記号類が加わる。そこで,日本語の文字数を扱うには2バイト(6万5536文字相当)が必要である。
 Macintoshを始めとして,欧米で開発されたコンピュータのOSでは,当初は文字も1バイトで処理する規格になっていた。この規格を拡張して,Mac OS(漢字Talk)で2バイトの文字を処理できるようにしたのがOCFである。OCFフォントは本来,2バイトが必要な日本語PostScriptフォントを数十ファイルの1バイトフォントの集合として取り扱っている。日本語PostScriptフォントは,ベースフォントと呼ばれる数十ファイルの1バイトフォントに分割され,Mac OS(漢字Talk)がルートフォントを頂点とする階層状の構造にして管理している)(図3参照)。
 OCFフォントの複雑な構造を回避して,日本語以外の中国語,韓国語など,マルチバイトフォントへの対応を可能にしたのがCIDフォントである。CIDフォントの構造は簡単である。すべての書体が255文字に制限されない,任意の数のグリフのアウトライン情報を格納したファイルと,さまざまな文字コード体系とグリフコードの関係を決めるCMap(character Mapping File)ファイルからなる)(図4参照)。 文字のグリフにはそれぞれコードとして,CID値が与えられている。
 CMapファイルには,78JIS,83JIS,90JIS,シフトJISなどの文字コード体系と,グリフコード(CID値)の対応が記述されている。出力機にインストールされているCIDフォントは,グリフコードを元に探し出される。そこで,異なる文字コード体系に対応するには,その文字コード用のCMapファイルを準備すれば良い。
 CIDフォントの特徴は日本語組版への積極的な対応である。CIDフォントは文字の詰め組みなどのために,1つのフォントファイルに複数のメトリックスをもつことができる。


(出典:月刊プリンターズサークル連載 2000年10月号記事より)

2000/10/15 00:00:00


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