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電子メディアは紙メディアの敵か?

1980年頃から議論されていた随分古めかしいタイトルで、いまさらどんなことを言う必要があるのかと思う人もいるかもしれない。しかしその当時から20年間を経て言えることは何なのかを考えてみたい。

よく言うようにこれだけCD-ROMの装置が普及してもCD-ROMによる電子出版はコンビニや駅で大量に流通するほどにはなっていない。紙媒体の付録が大部分である。今まで電子媒体の紙にはない多彩な機能とか、「コンテンツが王様」とかいってきたが、そんなことよりもデリバリ(流通)が普及を決めていることがわかる。これがパッケージ系電子メディアのひとつの限界である。

内容を企画制作するよりもブランドや流通を構築する方がよほど手間であるし、構築できればよいビジネスになる。雑誌は毎号の内容に依存して販売しているのではなく、例え本屋で買っていても、買う側の気分は定期購読のようになっている。これは流通組織と店頭におけるPOP効果などのブランド戦略のミックスされたもので、新たなメディアがここに割りこむとか、別の流通形態を構築するのは、少々頑張っても無理である。

またビデオカセットや音楽CDの普及の最初の段階はレンタルという商売形態が重要な役割を果たした。これは買う前の「立ち読み」とか「お試し」が自由であるのと同じ意味である。eBookでもあまり売る側のガードが固く、中身が分からないのでは、とっつきが悪いだろうと言われる所以である。こういった普及の阻害要因に対処できるのがオンラインの電子メディアである。つまり流通手段はWEBになり、店舗はポータルサイトになる。「立ち読み」や「お試し」も仕組みとして可能である。

そしてオンラインメディアは紙メディア側からみて脅威になるのであろうか? これは紙メディア側といっても、紙を作っている立場と、コンテンツを加工してメディアに載せている立場では結論は大きく異なる。当然紙を作っている側は紙の消費が半分になったら大問題であろうが、今まで紙に印刷するための版をターゲットにコンテンツを加工していた(まわりくどい言いかただが、要するに印刷)側はかえってコンテンツ加工に力を入れるように転換する機会になるかもしれない。

オンラインの電子メディア「制作」と紙メディア「制作」はバッティングするよりも、クロスメディアのオーサリングに向かいつつあるので、オンラインの電子メディア対紙メディアの戦いの犠牲者は、紙メディアの運送/郵便/流通となり、この戦いの最大の勝利者は通信業者になるであろう。月並みな結論であるが、だからこそ印刷業はネットワーク型のビジネスモデルに移りやすいように今から保険をかけておかねばならない。

2000/10/24 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会