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DTP豆知識(200012)CTP,PDF

本コーナーでは,DTPエキスパートを目指すうえで理解しておきたいことを模擬試験形式で解説します。JAGAT認証DTPエキスパート 田邊忠氏に,問題のポイントや重要点を解説していただきます。試験勉強のご参考に,またはDTPに必要な知識の確認にご活用ください。次回,第15期DTPエキスパート認証試験は2001年3月11日に行われます。詳細はDTPエキスパートのページをご覧ください。

問1 CTP

次の文の[ ]の中の正しいものを選びなさい。

 版材をイメージセッタや刷版用のレコーダのような大型ラスターデバイスにセットして,[A:(1)RIPに直結して (2)RIPしないで (3)ベクターデータから]刷版を作る方法をCTP(コンピュータ・トゥ・プレート)と呼んでいる。

 紫外線露光をする従来のPS版が[B:(1)銀塩 (2)ジアゾ (3)サーマル (4)電子写真]方式が中心であるのに対し,CTPでは異なる版材も使われる。CTP用の新しい版材として[C:(1)銀塩 (2)ジアゾ (3)サーマル (4)電子写真]方式があり,高出力の[D:(1)可視光 (2)紫外 (3)赤外 (4)X線]レーザで露光した後,加熱処理や現像処理を行うものが多い。この方式は明室で扱え,他方式に比べて[E:(1)解像度が低い (2)解像度が安定しない (3)解像度が高い (4)ソフトドットになる]。

 従来の製版では,集版のフィルム反転作業中に,分版される色の境界が適度に重なり合ったが,CTPでは正確な寸法で出力するため,あらかじめ[F:(1)色玉 (2)トンボ (3)トラッキング (4)トラッピング]処理をしたデータを作っておかなければならない。

 CTPでは中間工程がなくなるため,画質の劣化が最低限にとどまり高品質が得られるが,刷版製版で行っていた[G:(1)インキ (2)焼き度 (3)トラッピング (4)現像]調整はできない。そのため,プリプレス工程で[H:(1)カラープルーフ (2)ワークフロー (3)カラーマネジメント]などを行っておく必要がある。このようにCTPの導入によって,ワークフローは従来の製版と異なってくる。


    ■模範解答■
    A(1),B(2),C(3),D(3),E(3),F(4),G(2),H(3)

    ■出題のポイント■
     CTP(Computer to Plate)は,最近になって実用化が進んできた新しいシステムである。このシステムは従来の印刷システムと異なる点が多い。今回は,その違いを認識するとともに,CTPを活用するための注意点も理解しておくこと。

    ■問題解説■
     CTPとはRIP(Raster Image Processor)をレコーダに直結して,そこにセットされた版材に文字,画像を描画する方式である。この版材は適切に処理され,刷版として印刷機にかけられる。この方式でダイレクトに刷版を製作すれば,従来のようにイメージセッタから製版フィルムを出力する必要がない。また,製版フィルムを刷版に焼き付ける製版工程が不要になる。つまり,これまでの刷版工程がなくなる。
     刷版工程が省ければ,製版フィルムのコストが削減でき,印刷のコストも低減できる。また同時に,印刷までに必要とする日数が短縮でき,短納期の印刷,納品にも対応できる。

     従来の印刷工程では,紫外線に感光するジアゾ方式のPS版(Pre-Sensitized Plate)を使用していた。この方式では製版フィルムを介して,紫外線でPS版を露光する。その後,現像工程を経て刷版ができる。この工程では,ジアゾ方式の感光剤が太陽光に含まれる紫外線に反応するので,製版工程では太陽光を避けた暗室処理が必要となる。

     CTPには新しいサーマル方式の版材も使われる。この版材は高出力の赤外線レーザで露光される。その後,加熱処理,現像処理を経て刷版ができる。サーマル方式の刷版に使われる感光剤は太陽光では感光されないので,明室でも版材を扱える。また,サーマル方式の刷版と高出力の赤外線レーザの組み合わせは,他の方式の版材に比べて解像度の高い描画が可能である。
     また,従来の製版では集版のためにフィルム反転作業が必要であった。この作業を行えば,フィルム上で色を表現するための網点が大きくなる。これが分版される色の境界部分に重なりを作る。そのため,出力データ上ではトラッピング処理が意図されていなくても,結果的にトラッピング処理と同じ効果をもたらすことになる。

     しかし,CTPは解像度が高く,版材の上に正確な大きさの色網点が表現される。従来工程のように,製版工程で網点が大きくなることはない。そのため,印刷時に色版がずれても,白が出ないようにトラッピング処理を施したデータを制作する必要がある。

     従来の工程では,刷版を製作する段階で焼き度を加減して,色調など画像の調整を行っていた。一方,CTPでは製版のための中間工程がなくなり,画質の劣化は最低限にとどまる。しかし,焼き度の加減による画像調整はできない。そのため,プリプレス工程でカラーマネジメントなどを行っておく必要がある。

     また,CTPでは中間段階を省くので,従来工程のようにフィルムからケミカルプルーフを制作して,何回も色校正を繰り返すことはできない。そのため,カラーマネジメントの機能を高め,DDCP(Direct Digital Color Proofer)など,デジタル処理による色校正が必要となる。

     CTPシステムで製作された版材には,これまでの製版工程では表現できなかったほど,高い精度で網点が表現されている。これをCIP3(International Cooperation for Integration of Prepress, Press and Postpress)システムを使い,高度な色再現のできる印刷機にかければ,印刷物も高品質となる。それとともに,印刷機で使われる印刷インキの品質管理も,これまで以上に重要となる。


問2 PDF

次の文の[ ]の中の正しいものを選びなさい。

 PDFはPostScriptの[A:(1)グラフィックスの描画 (2)プログラミング言語的な (3)テキスト出力]要素を取り払って,表示のためのプリミティブなものを並べた構造であり,さらにフォントの埋め込みや置換機能をもつ。フォントの埋め込みとは,アウトラインを記録することではなく,フォントの属性や性質をそのまま維持し,再現できる仕組みをいう。

 フォントを含めた全オブジェクトが,[B:(1)ディレクトリ (2)ドキュメント (3)ページ]単位でデータとして記述されるので,任意のページが独立していて差し替えが可能である。

 PDFは公開されたフォーマットであるが,バージョンにより実現できる機能に違いがある。Acrobat 4.0に対応するPDFのバージョンは[C:(1)1.2 (2)1.3 (3)1.4 (4)2.0]であり,日本語などの2バイトフォントは[D:(1)PSフォントならどれでも (2)TrueTypeフォントならどれでも (3)埋め込みを許可されたもの]が文書と一体になるので,校正から出力に至るワークフローに大きな影響を与えると考えられる。

 2バイトフォントは[E:(1)CIDフォント (2)OCF (3)TrueType]を基準としているので,旧フォントの組み込みは現状ではサポートされていない。


    ■模範解答■
    A(2),B(3),C(2),D(3),E(1)

    ■出題のポイント■
     PDF(Portable Document Format)はPost Scriptの後継フォーマットとして期待されている。ここでは,最新バージョンのPDFにはどんな機能があるのかを知っておくこと。また,フォントの埋め込み機能とその制限も理解しておくこと。

    ■問題解説■
     PostScriptはDTPを支えてきた言語であり,DTPの世界では標準の言語となっている。第1世代のPostScriptであるPostScript Ver.1はモノクロの文字,画像を対象にした基本的な規格であった。これがDTPの成立,成長を促してきた。

     これを改良した第2世代のPostScript Ver.2はカラーの文字,画像を対象にしており,画像圧縮,トラッピング,メモリの活用など,多くの機能が付け加えられた。さらに,第3世代のPostScript3には,PDFドキュメントをRIPする機能などが付け加えられた。

     PostScriptは数次のバージョンアップを経て,高機能化してきた。しかし,さらなる効率化,インターネットへの対応などをにらんで,その後継フォーマットであるPDFが開発された(図1参照)。もちろん,PostScript言語にみられる欠点を解消している。そのうちのひとつが,PDFではPost Scriptのプログラミング言語的な要素を取り払い,表示のために必要なプリミティブな要素で構成したことである。また,PDFドキュメントを確実に出力するためには,フォントの埋め込み(エンベッド:Embed)機能も重要である。

     PDFの特徴は,フォントを含めた全オブジェクトがページ単位で扱えることである。
     PostScriptではページ単位の扱いができず,PostScript言語を理解していても,その編集には手間がかかった。しかし,PDFはページ単位で扱えるので,編集時に任意のページを差し替えられる。
     また,PostScriptでは全体を1つのRIPで一括処理するために,その出力に時間がかかることが問題であった。これも,PDFでは個々のページ単位にPDFを別々のRIPに送れば,複数のRIPでの並列処理が可能であり,出力の高速化が図れる(図2参照)。

     PostScriptの出力時にはフォント,画像の不備などを原因とする出力エラーがみられた。出力段階でのエラーは効率的な作業を妨げる。PostScriptから変換するPDFでは,PDF制作時にフォント,画像をチェックする。そのため,PDFでは出力時にエラーがなく,効率的な作業ができる。

     PDFにも数次のバージョンがある。アプリケーションAcrobat1.0から使われ始めたPDF1.0は,欧文フォントのみで制作されたドキュメントを対象としたフォーマットである。日本語フォントを使用したドキュメントは,Acrobat3.0に対応するPDF1.2から,PDFに変換できるようになった。
     さらに,最新のアプリケーションAcrobat4.0に対応するPDF1.3では,日本語などの2バイトフォントが,PDFドキュメントに埋め込める。しかし,実際にPDFドキュメントに埋め込めるフォントは,埋め込みを許可されたものだけである。また,PDFに埋め込める日本語の2バイトフォントはCIDフォントを標準としている。OCFフォントはPDFに埋め込めない。


(出典:月刊プリンターズサークル連載 2000年12月号記事より)

2000/12/10 00:00:00


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