本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

製本・加工の最新動向

製本・加工工程における設備技術の進歩は,造本形態の複雑性,多様性に対応すべく汎用性を求められるとともに,大がかりなシステム変更に対し,コスト・パフォーマンスの面で確証が得られない等の理由で印刷工程に比べて遅れていた。また,紙加工条件の難しさから人手を要する作業が残されている。

しかしながら,市場の変化に応えるためには,汎用性をある程度犠牲にしてでも,電子媒体に対抗する紙を媒体とした情報伝達手段の活性化・合理化が求められている。活性化,合理化の方向は,印刷工程と製本工程を連結した一貫化,段取り・切り替え準備作業の大幅な短縮,そしてパーソナル対応技術の導入である。

さまざまなライン化システム

オフ輪印刷と製本の連結(インライン・システム)は,短納期,低コスト対応に有効であり,以前から文庫,コミック本を主体に実用化されてきたが,印刷機サイドの問題で仕様上まだまだ制約がある。
最近は小ロット物を視野に入れて汎用性を持たせたシステムとして,印刷刷り本のプリントロール化と製本機までのマテハン自動化を組み合わせる方式が実用化されてきている。設備投資額,スペース面で過大となるため投資効果を考え慎重な検討を必要とするが,一定量以上の部数物に関してはかなり効果的なシステムといえる。

小ロット物に対する対応は単に印刷と製本をインライン化しただけではその効果は期待できず,印刷・製本各々の工程でスタート時における損紙・不良製品の極少化,段取り時間の大幅な短縮が達成されて,はじめてインライン化の効果が得られる。
10年程前から海外で既に30台以上が使用されている英国SHM社のVariquikシステムはこの目的にあった非常にユニークなシステムである。公称では切り替え・段取り時間5分,刷り出し損紙50〜60枚といわれているが,日本での導入実績はまだない。

各種製本設備の調整もプリセット化が進められてきたが,紙質や印刷物の状態によっては数値入力だけでなく,最終微調整が必要になる。従って,極力現物を測定器で自動測定・自動プリセットする方法がより有効であり,一部のメーカーでは実用化している。
日本国内においてはU社が小ロット,省スペースを前提としたインラインシステムを紹介しており,印刷以降の加工工程を学習教材用にして実用している。限定したジャンルでのブックインライン設備として有効である。

上製本工程のインライン化

上製本の分野でも,ローコスト,クイックレスポンスを標榜して,従来と比較し大幅に納期・製造コストを削減すべく各工程を完全にインライン化したシステムが実用化しだした。
設備構成は単純にラインを連結しただけでなく,各工程設備の能力バランスを考え,中本工程1系列にクルミ,仕上げ工程2系列を配列,また工程別にバッファー・ストックを設け,工程の一部が停止した場合の対応,全体管理システムによるトラブル時の早期復旧等,実効生産性に関しても充分配慮されたシステムとなっている。
中本作りのバインダーにカバーフィーダを装備することにより,無線綴じ本,上製本兼用のシステムとするなど,いろいろなバリエーションも可能となってくる。ただし,設備投資額・スペース的にかなり過大であり,日本での品質要求度を満たすかどうかの見極めが必要である。

小ロット製品製造の合理化

しかし,小ロット製品に対しては大がかりな設備投資は採算面で限界があり,個別的な改善で対応せざるを得ない。そして実際に,スピード追求よりも段取り・切り替え準備作業時間のプリセット化,周辺作業の合理化を主体とした設備改善の実用化が進んでいる。

刷り本の自動供給装置(オートローダー)や製品の自動パレタイジング装置では,既にいろいろなシステムが紹介・採用されている。しかし,真に有効に使用するためには,いろいろな状態の刷り本や製品に対し充分対応しきれているか,また前後作業とのスムーズな流れや,連結が保たれているかが重要であり,使用者サイドの工夫がカギとなる。

製本ラインだけでなく,平断裁機,折機においても前後作業の労働負荷軽減システムや,コンピュータ搭載によるプリセット化,進行管理システムが各種紹介されている。

新しい市場に向けたシステム

新しいシステムとして,通販カタログの分野では,大量生産の中に一部個人宛情報を個別に入れるセレクティブ・バインディングの必要性が高まってきており,そのシステムとともに周辺機器の開発が進んでいる。
しかしながら周辺機器を含めたシステム全体はかなり大掛かりとなり,個人メッセージの印字機器であるインクジェットプリンタには仕様制約があるなど,解決しなければならない課題はまだ多い。また,極小部数の同人誌,マニュアル類については,オンデマンド・デジタルプレスと製本を連結したパーソナル・ブックの分野もある。

パッケージングされたCDやサンプルを内蔵した出版物やカタログが増加している。パッケージングと貼り込み機能を有した設備や製本機への自動供給装置の取り付けなど,市場ニーズに合わせた個別の周辺機器の開発がなされている。内蔵される商品の変化は当然予測されるため,導入に当たっては汎用性を持たせた仕様を考慮する必要がある。

さらに,ダイオキシン対策としての脱塩ビ化,PL法に対応したケガ防止対策としての逆中綴じの採用,非金具化による安全性と無公害性を目的としたエコ・カレンダーも増加してきている。

品質保証への取組み

各企業で品質保証への取組みとしてISO9000シリーズの認証取得が活発化しているが,印刷・製本業界においてもその動きが出てきている。ISOによる品質保証システムの構築とともに,製造工程での品質検査機器の信頼性向上が重要であり,CCDカメラによる印刷物の検査器が実用されてきた。

また,本の開きやすさを保ち,耐久性のある強固な接着糊の開発も望まれる。生産性を損なうことなく,一部たりとも不良を流出させないためには製本に関わる機器メーカーや材料メーカーの協力が必要であるのは言うまでもない。 1999年9月JAGAT刊「グラフィックアーツ機材インデックス」製本・紙工より。

1999/09/21 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会