プリプレス工程は、フルデジタル化によって、従来の版下制作工程とフィルム制作工程を統合、さらにCTP(Computer to plate)によって、刷版工程までも統合できるシステムになった。工程統合は、版下、フィルムといった中間物をなくし、プリプレス工程の中を流れるのはデータのみになった。後加工工程も、品目や対象ロットそれぞれの必要に応じてインライン化できるものになった。
従来、数多くの作業工程に分断されてバケツリレーのように進められてきた印刷の生産工程は、いま、プリプレス、印刷、そして後加工工程という大きな3つの生産ブロックに集約されて、よりシームレスな生産システムになった。
さらに、DI(Direct Imaging)印刷機はプリプレスと印刷工程を統合化し、デジタル印刷機は、プリプレ・印刷・製本加工工程までを統合する。
ジョブファイルのデータ、情報は通信ネットワークを通して流れていくが、それが行きついた先で人間が待ち構えているのではCIMにならない。それらは、各工程にある生産設備の自動コントロールシステムや工程管理機能を果たすコンピュータに送られ、それに基づいてコンピュータが必要な処理をするのがCIMである。
CIP3のシステムでは、DTPでページアップされたデータをもとにCTP用に作られたデジタルデータは、印刷機のインキコントロールシステムに送っられ、インキ量調整機構を自動調整する。
工程管理についても、工程の要所要所で管理者や現場のオペレータが介在するのではなく、コンピュータ to コンピュータでデータ、情報が受け渡されて、必要な処理が自動的に行なわれていくことになる。
例えば、受注した仕事に必要な紙について、日程管理システムは紙の在庫システムにその紙があるかないかを問い合わせる。在庫システムは該当する紙の有無、在庫量を調べ、もし、紙の発注が必要であれば、調達システムに情報を流す。調達システムは、インターネットを通じで用紙発注先の受注システムに、価格と必要なときまでに納品が可能かどうかを問い合わせ、その結果を日程管理システムのコンピュータに報告する。
ジョブファイルフォーマットの規格として、プリプレス工程ではアドビのPJTF(Portable Job Ticket Format)と、CIP3が使っているPPF(Print Product Format)がある。ドルッパ2000では、プリプレスから後加工までの統合化を目指して、PJTFとPPFをまとめるJDF(Job Definition Format)が発表された。同時に、CIP3という名称も、Preprss、Press、Postpress にProcessを加えてCIP4となった。JDFを記述する言語としては、各システム間のデータ交換に適したXML(eXtensible markup Language)が採用される。
ジョブファイルフォーマットについては、その機能範囲をどう想定するかによって、いろいろな案があり得て、これからもいろいろな議論があるだろう。話題はJDFに集中しているが、本誌11月号でも紹介したAMPACは、日本発の優れた有力な案である。
いずれにしても、印刷物の生産は通信ネットワークシステムが軸になって行なわれることになる。PAGE98の基調講演「デジタル化の次にくるもの」で、ミルズ/デイビス氏は「人は半分、パフォーマンスは他社の5倍」を目指す印刷のe-ビジネスについて述べたが、いま、それが上記のような形で姿を見せ始めている。
CIMもECも、印刷業界に求められる低価格、ジャストインタイムでの印刷物提供という市場ニーズへの対応手段であるとともに紙媒体活性化の手段でもある。
ただし、それは一夜にしてできるようなものではないし、企業の規模や取り扱い品目によって、具体的な形は異なる。必要なことは、これからの設備更新、新たな投資を、自社にとってのe-ビジネスに少しづつ近づけていくように計画することである。
(出展:社団法人日本印刷技術協会 機関誌「JAGAT info 2000年1月号」より)
2001/01/02 00:00:00