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文字組・版下作成の最新動向

PDFとXML

今年の話題はなんといってもPDFとXMLだが,これらは印刷,特に組版や版下作成にどのような影響を及ぼすだろうか。

PDFもXMLも,どちらかといえばワークフローの基幹技術としての意味合いが強く,これらがただちに印刷技術につながるわけではない。PDF利用にはDTPとデジタル・ワークフローが前提だし,XML利用にはコンピュータによるデータハンドリングやデータベースの構築が必要である。そして,これらの共通の基盤となるのがネットワークである。デジタル送稿/デジタル配信が最近の大きな話題のひとつとなっているのも,こうしたネットワークをベースとしたワークフローへの大きな潮流を示すものである。

Acrobat4.0日本語版は1999年6月に発売された。DTPや印刷関連ではフォント埋め込みやプリプレス対応機能などが注目されているが,しかし,PDFそのものの使い道という点では,Windows版の機能の充実やネットワーク上で利用するための各種の機能アップの価値のほうが大きいだろう。デジタル配信などでのPDFの本格利用も始まろうとしているが,従来の印刷のワークフローに拘泥しない視点からのアプローチが必要である。また,PDFを考える際にはPDFがPostScriptの後継だという位置付けを考慮することも重要である。

一方のXMLはWeb上のSGMLという位置付けである。従って,SGMLと同じように,あるいはそれ以上に,印刷にとって迂遠に感じられる技術かもしれない。しかし,XMLは,SGMLに代わる文書フォーマットの標準という位置付けだけでなく,コンピュータのデータハンドリングの標準という意味合いがより注目され始めている。XMLのコア部分は決まっているが,実際に利用するための応用部分についてはまだ不確定要素もある。開発側がそのあたりにビジネス・チャンスを求めていることが話題になっている原因のひとつかもしれない。しかし,今後XMLに取り組むつもりなら,今から実験的な試みを始めたほうがよい。SGMLからXMLへの変換などは難しくはないし,SGMLツールのXMLへの対応も進んでいる。今後XMLのデータベースや文書管理などでの利用が広がりそうだし,関連して資産としてのデジタルデータの管理,すなわちデジタル・アセッツ・マネージメントもクローズアップされるようになると思われる。

いずれにしろ,PDFもXMLも,従来のワークフローに取り入れるというより,それによってワークフローが変わるようなベーシックな要素技術と考えたほうがよい。まずは自社のデジタル化とネットワーク化,そしてワークフローを再検討する必要があるのではないか。

フォント

1999年8月,モリサワはAcrobat4.0日本語版に対応し,PDFへのフォント埋め込みやIllustrator等でのアウトライン抽出を可能にするATM専用NewCIDフォントをリリースした。モリサワ以外の各フォントメーカーも,すでにCID対応済みのところもあるし,対応を表明しているところもある。

過渡期なのでユーザにも混乱があるが,CIDフォントというのは,まず第一に,主に開発側にメリットがあることを理解しておきたい。結果的にユーザにどのようなメリットが出てくるかは,それぞれのフォントメーカーの考え方とやり方にもよる。

CIDフォントを使えば直ちになんらかのメリットが生まれるというわけでもないし,フォントの変更はユーザには大きな負担である。ユーザにすればフォントフォーマットなどはなんであっても,問題なく使えて正しく出力できさえすればそれでよいはずである。今までOCFなどあまり意識もしなかったのに,CIDになって従来のフォントフォーマットの知識まで必要になるというのもおかしなものである。

DTPの歴史がユーザの苦闘の歴史であったという側面はあり,またプロとしてユーザの技術知識は不可欠である。だが,もはやDTPは安定期に入っている。フォントはDTPの基盤だからフォーマットの変更は極めてデリケートな問題といえよう。ただ,PDFへのフォント埋め込みというインパクトはやはり大きいから,遅かれ早かれCIDフォントへの移行は進まざるを得ないだろう。

デザイン/組版

アドビのInDesignが話題である。クォーク・キラーというコードネームだったため,QuarkXPressに対抗するDTPソフトというイメージがあるが,InDesignはコンポーネント形式のソフトウェアで,組版などの機能はすべてモジュールの組み合わせで実現する仕組みである。

従って,従来のいわゆるDTPソフトとはかなり趣が異なるから,DTPソフトとの単純な機能比較はあまり意味はないだろう。開発のしやすさやPDF,Photoshopとの親和性などから,たんなるDTP分野ではなくて,日本のパブリッシング市場自体にいろいろな影響をもたらすことになるかもしれない。いずれにしても日本版のリリースはまだ先になる。

1999年6月に大日本スクリーンのAVANASシリーズPageStudioが発売された。価格的にはQuarkXPressなどに相当するWindowsDTPソフトだが,カラーの扱い,製版関連機能,文字組版機能など,プロフェッショナル向けの高度な機能が搭載されている。そのため操作にもかなり高度な知識が必要だが,Windows環境でどこまで市場に食い込めるか,今年の組版関連ではもっとも注目されるDTPソフトといえよう。

ユニークな製品では,CADをベースにしたムトーテクノサービスのDTPソフト「版下道具」,PS3出力に対応した「CorelDraw 8」などがある。PageMaker6.5Plusは,数百種類のテンプレートや数千種類のイラスト,写真などを同梱して,ビジネス文書向けに特化したものだが,機能的な変更はあまりない。

あまり目立たないが,デザイン分野では3DやCADのソフトウェアの低価格化が進んでいるのが注目される。数年前なら先進的なプロのデザイナーが使っていた高価なソフトとほとんど同等の機能を持つソフトウェアが,現在では一般ユーザでも手軽に使えるようになった。このことはあまり直接的な影響はないようにみえるかもしれないが,ちらしなど3Dによる効果を使った入稿も増えてくるだろう。

出力

現在,新製品の数がもっとも多く,機能アップのスピードも速いのがプリンタ関連機器である。プリンタはカラー,モノクロともA3以上の大型で低価格なものが浸透し,また専用のRIPを別売するメーカーもある。

とくにカラープリンタは,各社とも工夫を凝らした独自技術による色再現,階調再現を実現しており,インクジェット,レーザ,昇華型などという従来の分類だけでは性能の見極めがつきにくくなってきた。校正などに利用する場合は,実際にカタログを取り寄せて細かいスペックをチェックし,出力見本を見て検討する必要がある。フォントなどと同様に,プリンタもユーザ側の予備知識が必要な時代になったということだろう。

以下,最近発表された製品をランダムにピックアップしてその傾向を見てみよう。

大型カラープリンタでは,最近,武藤工業「FALCON Graphics RJ-4100」,エプソン「PM-9000C」,キヤノン「BJ-W7000」などが相次いで出たが,いずれもA0またはB0の大サイズで100万円を切る低価格,さらにPS3対応RIPが別売されているなど,最近のプリンタの傾向を端的に表わしている。

カラー全盛の時代にあって,モノクロプリンタも地味だが着実に機能アップしている。最近出たエプソン「LP-9200PS3」(600dpi),沖データ「MICROLINE 905PSIII」(1200dpi)など,主流はすでにA3サイズ,PS3対応である。また,キヤノンの「レーザショットLBP-910」は1200dpi,毎分22枚と高速で,価格が20万円を切るものとなった。

RIP関連では,単体のソフト/ハードRIPだけではなく,サーバ機能やデータベース機能を付けた製品が増えている。PS3対応が進んでRIPにいろいろな付加価値をつけられるようになったことも影響している。

カラープリンタではPS出力が問題となることが多いが,ソフトRIPによる対応も可能である。こういうところでもユーザの知識と技能が問われるようになった。

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まもなくIGASである。DTP自体の製品にあまり新しい動きはないかもしれないが,それをめぐるPDF,XML,および出力関連などでは活発な動向が見られるだろう。何をやろうとしているのか,何が必要なのかをきちんと捉えてから見に行くことが重要である。

1999年9月JAGAT刊「グラフィックアーツ機材インデックス」文字組・版下作成より。

1999/09/16 00:00:00


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