「BookPub」でビジネスモデル特許を出願中
インターネットによって,商習慣が大きく変化した。これほど大きな市場はなく,BtoBにしてもBtoCにしてもビジネスチャンスに満ちている。そこで今回は,自費出版の需要に注目し,Webを活用してオンライン編集による印刷・出版システムの商用サービスを行っている(株)産能コンサルティングの常務取締役佐野美知夫氏に同社の姿勢を伺った。
HP上で編集・作成,出版印刷できるサービス
ソフトウエアシステムの開発,コンサルティング業務を行う産能コンサルティング(東京・渋谷区)は,世界で初めてインターネットのホームページ上で編集・作成し,印刷出版できるサービス「BookPub」(http://www.bookpub.ne.jp/)を今年の7月25日から行っている。
同社はもともとSI事業の分野に優れた実績がある。特に新聞製作システム,新聞記者のための専用ワープロソフト,専用の組版システムを開発したり,新聞製作における記事編集用のクライアント・サーバシステムの提供などを行っていた。その豊富な経験と技術力をもってインターネットへの応用に力を注いだ結果,開発したシステムが「BookPub」である。
新規事業立ち上げの背景には,佐野氏自身によるアメリカのオンデマンド事情の調査があった。そして「時代の要請からもPOD(Print On Demand)に流れていくのは必至だ」と思った。
当面の市場は,海外旅行の個人用案内書,旅行アルバム,企業での視察報告書類,結婚式の個人向け案内書・アルバム,各種報告書,自費出版書籍などを考えている。もちろん社内報,カタログ等にもその威力を発揮するとみている。
従来のように最低ロットが100部ではなく1冊から取り扱っている。見積もりも1冊ごとにできることからパーソナルニーズに対応した新しい市場の開拓が可能だと見込んでいる。地方の出版社で10部だけ出版してほしいという要望もあったそうである。
利用者の利便性を最優先
まず最初にホームページから会員登録(無料)をする。個人情報はすべて暗号化されるシステムになっている。その後作成したい本のフォーマットを選択する。今のところは報告書もしくはアルバムのスタイルを選択する。懇切丁寧に編集作業の手順が公開されている。Webの画面そのものが顧客の本棚をイメージしてある。初めての人には本棚に何も登録されていない。本を新規作成するには登録が必要で,書棚に追加されてから本の内容の編集作業に移る。新規ページの挿入からレイアウト,本文,タイトル等の入力編集作業を経て,ページのプレビューを見ることができる。これらがすべてインターネット上で指示ができる仕組みになっている。
製本の種類も豊富である。中綴じ,くるみ製本,ハードカバー製本などに分かれていて,それぞれ選択肢と明確な見積もりが提示されている。
画像の登録は,あらかじめ同社に写真もしくは画像データを郵送する。ポジフィルムやプリント写真も郵送すれば取り込んでくれる。現在のところ画像のデジタル化や登録も無料で行っている。同社では利用者が保有する画像をデジタル化し,その再利用を進めることも重要なサービスの一環だと認識しているという。また最近では,FTP(ファイル転送)による画像の受け付けも可能になり,利用者の作業効率が上がり,より使いやすくなっている。
カラーの色調整を希望する場合は,インターネットでの調整は難しいので,プリントセンターで実際の色調整をしなくてはならない。費用も別途かかってしまう。インターネットを利用するサービスであるからには,基本的に顧客の提供する写真や画像データをそのままプリントデータにして印刷するスタンスである。
簡単に誰にでもわかるようにすることで,市場の浸透を図る。同社では「BookPubは21世紀の出版社!」としてその独自性や将来性をアピールしている。今までには例を見ないもので,ビジネスモデル特許を出願中である。
オリジナルサービスをさらに拡充
新たなサービスとして手帳販売とオリジナルアドレス帳がある。手帳は通常大型文具店などで販売されているが,売り場面積の問題もあり,展示される商品点数に限りがある。「BookPub」では,産能大学出版部のサンノーダイアリーの全種類を網羅している。電子カタログ的な機能を付け,表紙だけの画像にとどまらず,中のページをめくる形にして,イメージを見せることにしている。近所に大型店舗がない地域に住んでいるユーザにも対応できる。
これからはさらに個人の好みに合ったものをカスタマイズしていく必要がある。その第1弾として手帳用のオリジナルアドレス帳の制作と販売を開始した。
作成方法は簡単で,パソコンを使っている人ならば,OUTLOOKや筆まめなどのアドレス管理ソフトデータをアップロードし,印刷,出版の指示をするだけでよい。データのアップロードについては最新のセキュリティ技術により保護している。
また表紙や中味についてもロゴを印刷したり,大切なビジネス情報を追加することもでき,個人注文にとどまらず,ビジネス用のサービス品としても活用できる。
また,電子アルバムサイトとの提携で,「プチアルバム」のサービスを準備中である。日本では電子アルバムサイトが20くらいあって,そのほとんどが焼き付けだけをやっている。掲載されているもので一番多いのは,圧倒的にペットの写真だそうだ。小動物を飼っている人の愛着心は他人には計りしれないものがあるらしく,写真を肌身離さず持ち歩き,人に見せたりする。そこに目を付け,持ち歩きできる小型サイズにする予定だ。
電子アルバムサイトに載せている人はほとんどが素人で,個人が一冊から出版できるのは魅力があるはずだ。
「プリクラの発想です」というこのプチアルバムはまた,結婚式の写真などにも応用できる。さらに旅行代理店と組んでオリジナルの旅行アルバムをつけたパッケージ商品として旅の思い出を提供できる。
もともとASPモデルの発想があり,特定の業界にこだわらず,システムの利用を推進していく予定だ。現在どの会社とどのような形で提携していくのか模索中であるという。
さらなるサービスの充実を模索
当面はまず取りかかった手帳販売,オリジナルアドレス帳とプチアルバムを実際の売り上げにつなげていきたいという。
商品の形態が増えてくれば,それに応じてサイトを分けて,それぞれアイテム化していくことも考えられる。今は認知度を高める時期で,軌道に乗れば「絵本」や「楽譜」等もやっていきたいと抱負を語る。
具体的な売り上げ目標はの問いに対して「3年後には2桁の億になっている」との自信ある答えが返ってきた。そのために「将来的にBookPubは高級品にしたい」という希望と人材面を含めての体制強化を挙げていた。(上野寿)
2001/01/23 00:00:00