CTC(コンピュータ to シリンダ)と呼ばれる、オンプレスCTP(DI印刷機)の次世代技術がある。
DI印刷機は親亀(印刷機)の上に子亀(CTP)が乗っていて、サーマルプレートの生版を供給することによって「イメージング→現像処理→印刷」の一連の動作が印刷機の上で行われる。
これに対して、CTCでは印刷機上でサーマルプレートの生版から作ってしまう代物である。
従って、版を作る材料として外から供給するのは、サーマルプレート上に必要な、画線部を形成されるレジスト材料だけである。つまり、PS版のようなアルミ板は不要である。海外文献では繰り返し使えるという意味を込めて、リ・ユーザブル技術とも呼ばれているように、オフセット印刷機の版胴に直接、画線部を形成させる方式で「(版胴を)繰り返し使う」という言い方になっている。
CTCではPS版のメーカーが供給すべき材料は、一斗缶による液状の感材(感熱性ポリマー)であったり、またはVHSカセット大のサーマルリボンという感じである。ユーザーにとっては、余計なアルミ板まで買う必要は無く、平版オフセットで原理的にどうしても必要な、画線を形成するための最低限の材料のみを購入すれば良いという理屈になる。PS版メーカーの人と話していたら「CTCが本当に普及したら、版材売上は激減しちゃいますヨ」と首をすくめていた。
現在のところ、これには2つの方式が発表されている。先に実用化されて実稼動が始っているのが、drupa2000に出展されたマン・ローランドのダイコウエブ印刷機(DICOWEB DIGITAL OFFSET) である。原理は金属シリンダ(版胴)を前処理してから、8mm幅の専用プリンタリボンの裏からサーマル露光をおこない、親油性のイメージ(画線部)を版胴上に直接サーマルプリントする要領で画像を形成する。これが終ると、通常の湿し水を使って印刷できる。次の仕事への切り替えには、旧画線部を熱溶解で除去してクリーニングし、再び同じ同じ工程を繰り返す。サーマルヘッド部分はCreo社(現在のクレオサイテックス)が開発している。オフセット輪転機として仕上られており、スペックは紙幅520〜300mm、カットオフ長は可変、印刷速度3.5m/秒、2万枚/時/カットオフ長630mm、印刷ユニットは最大6台まで、切替え8分、耐刷3万通し、3200dpiである。
もう一つの方式は、交換可能なコーティングシリンダー(版胴)に、液状のサーマルプレート材料をスプレーして生版を作ってしまうという、SPプロセス印刷機のアイデアである。この機構の開発もCreo社であるが、ヘッド部は「スプレー部/サーマル露光部/クリーニング部」で構成されており、速乾性の液状感材によってスプレーしながら、少し遅れてサーマルイメージングがほぼ並行して行われるようになっている。液状のサーマル感材はアグフアからLiteSpeedという名前で供給されており、シノハラのオフセット印刷機に搭載されて昨秋のグラフエキスポ2000(米国)で参考出品された。
PAGE2001のコンファランスでは、D2の「コンピュータtoシリンダ」で、スピーカーとして海外から2人の講師をお招きしている。DicoWebを開発したディック・マンローランド社からはディートマー・ツット氏、SPプロセスを開発したクレオサイテックス社からはブラッド・パルマー氏であり、またSP方式に適合する液状感材のThermolite(サーモライト)を提供するアグフア・ゲバルトからは椿 豊氏の3人の方々に、最もホットなCTC技術のお話を頂く。
2001/02/05 00:00:00