DTP豆知識(200102)PPD,印刷後の画像
本コーナーでは,DTPエキスパートを目指すうえで理解しておきたいことを模擬試験形式で解説します。JAGAT認証DTPエキスパート 田邊忠氏に,問題のポイントや重要点を解説していただきます。試験勉強のご参考に,またはDTPに必要な知識の確認にご活用ください。次回,第15期DTPエキスパート認証試験は2001年3月11日に行われます。詳細はDTPエキスパートのページをご覧ください。
問1 PPD
次の文の[ ]の中の正しいものを選びなさい。
WindowsのPostScriptプリンタドライバには,マイクロソフトやアドビが提供するものなどがあり,それぞれPPDあるいは類似ファイルを伴う。PPDはOSやアプリケーションがもっているか,あるいは出力機に付属して供給される。
PPDの内容は[A:(1)CSV (2)テキスト (3)バイナリ (4)表]データであり,編集することができる。PPDは,プリンタの設定やアプリケーションの印刷の設定の際に参照される。プリンタ登録時にPPDファイルを指定するが,アプリケーションからのPPDの参照の仕方はそれぞれ異なる。
PostScriptプリンタドライバはフォントメトリックス情報を内蔵しているが,ドライバによってサポートするフォントは異なる。サポートしていないフォントは,別途,[B:(1)TTF (2)PPD (3)PPI (4)PFM]ファイルにフォントメトリックス情報を用意しなければ出力できない。プリンタメーカーやフォントメーカーがこのファイルを供給している。
レイアイトソフトはプリンタのフォント環境を記述したPPDファイルを参照するので,レイアウト時点で[C:(1)最終ターゲット (2)画面フォント使用 (3)校正用]となる出力機のPPDファイルが必要になる。
Windowsでは,アプリケーションが参照するプリンタやPPDが異なると,出力機の解像度が異なるだけでも組み体裁が変わることがある。編集レイアウト側と出力側のフォント環境が異なる場合では,同じ体裁に合わせることは[D:(1)できない (2)同じドライバを使えばできる (3)プリンタを仮想化すればできる (4)同じ名前のフォントがあればできる]。
編集側がPSイメージセッタのPPDをもっていない場合は,イメージセッタ出力側で,編集側のゲラ用プリンタの[E:(1)PDF (2)PDL (3)PPD (4)PFM]を元に,仮想プリンタを登録する。こうして,いったんPostScriptファイルを作ってイメージセッタに転送するか,あるいはアプリケーションによっては直接,イメージセッタに出力できるものもある。
イメージセッタのフォントをフルに使用したい場合は,編集側が[F:(1)アプリケーション付属 (2)イメージセッタ (3)自分のプリンタ]のPPDを元に,仮想プリンタを設定する。
■模範解答■
A(2),B(4),C(1),D(3),E(3),F(2)
■出題のポイント■
PPDプリンタ出力時にPPD(PostScript Printer Description)はOSと連携して,Post Scriptデータを処理するが,Windowsと MacintoshではPPDの働きに違いがある。今回は,Windows OSからのプリンタ出力時に,PPDがどのように働くかを理解する。
■問題解説■
PPDの内容はテキストデータであり,テキストエディタなどで編集できる。
PPDは基本的にプリンタとそのバージョンごとにプリンタ・メーカー,ソフトウエア・メーカーから供給されている。
QuarkXPressやPageMakerなどのソフトウエアにはPPDが付属している。PPDにはプリンタの特性やプリンタで利用できる用紙と,そのサイズに関する情報が記述されている。
プリンタはプリント出力時に,PPDに記述されているプリンタの設定を参考にして,出力線数などを最適に設定する。
PostScriptプリンタドライバはフォントメトリックス情報を内蔵している。しかし,ドライバごとにサポートするフォントは異なっている。サポートされていないフォントを出力する場合は,PFM(Printer Font Metrics)ファイルにフォントメトリックス情報を用意する必要がある(表1参照)。

PFMファイルには文字幅,欧文フォントのペア・カーニング値などの情報が収められており,プリントメーカーやフォントメーカーがこれらを供給している。
レイアウトソフトは,プリンタのフォント環境を記述したPPDファイルを参照することになる。そのため,レイアウト時には,最終ターゲットとなる出力機のPPDファイルが必要である(表2参照)。

最終ターゲットとなる出力機とは,印刷時に製版フィルムなどを出力するイメージセッタ,デジタル処理で校正を出力するDDCP(Direct Digital Color Profer),もしくはCTP(Computer to Plate)システムなどのことである。
Windowsでは,アプリケーションが参照するプリンタやPPDが同じものでない場合,出力機の解像度が異なるだけでも,組み体裁が変わってしまうことがある。つまり,Windowsでは,レイアウト制作の途中でPPDファイルを変更すると,1行の文字数が変わることもあるのである。
また,レイアウトデータを受け渡す際に,受け手と送り手とで,異なるPPDファイルが指定されていた場合,文字のリフロー(再流し込み)が起きることがある。
いずれの場合にも,制作者が意図したレイアウトが崩れてしまうので,PPDの設定には注意が必要である。編集レイアウト側と出力側のフォント環境が異なる場合,両者の体裁(レイアウト)を合わせるには,プリンタを仮想化する必要がある。
編集側でPSイメージセッタのPPDをもっていないこともある。こうした場合は,イメージセッタ出力側で,編集側のゲラ用プリンタのPPDを元に,仮想プリンタを登録する。こうすれば,PostScriptファイルを作ってイメージセッタに転送した時に,編集側が意図したレイアウトで出力できる。また,アプリケーションによっては直接,イメージセッタに出力できるものもある。
編集側がイメージセッタのPPDを元に,仮想プリンタを設定すれば,イメージセッタに装備されているフォントはすべて使える。
問2 印刷後の画像
次の文の[ ]の中の正しいものを選びなさい。
印刷後の画像の品質は,印刷や用紙などの条件に大きく左右される。まず,印刷物の発色は紙質の影響を受ける。印刷面の光沢を望む時には[A:(1)アート・コート系 (2)マットコート系 (3)上質系]の用紙を使用すると良い。また,カラー印刷物の彩度が高く感じられるのは,[B:(1)アート・コート系 (2)マットコート系 (3)上質系]の用紙である。
このほかに,印刷物の発色には紙の[C:(1)透明度 (2)白色度 (3)吸油性]が大きな影響を与える。同じインキ量で刷った時,[D:(1)アート・コート系 (2)マットコート系 (3)上質系]の用紙では濃度が低く感じられる。表面が粗く乱反射を起こす紙は,印刷物の濃度が[E:(1)低くなる (2)高くなる (3)ほとんど変わらない]ことが多い。
印刷用紙により,吸油性(インキの吸収性)も異なる。吸油性が高く,薄い紙はインキの吸収性が[F:(1)低く (2)適度で (3)高く],ベタの多い印刷面が裏に透けて見える[G:(1)裏抜け (2)裏移り (3)ゴースト]を起こしやすい。一方,カード紙のようにインキの吸油性が[H:(1)低い (2)適度な (3)高い]紙は,ベタ部分などで[I:(1)裏抜け (2)裏移り (3)ゴースト]などが発生しやすい。
パッケージなどの印刷に際しては,大きな版に同一絵柄を[J:(1)殖版 (2)丁合 (3)台割]して刷版する。ベタ部分と空白部分が混在した絵柄では,印刷時にベタの部分に[K:(1)ドットゲイン (2)トラッピング不良 (3)ゴースト]が発生することがある。これは[L:(1)照明条件 (2)印刷条件 (3)温湿度条件]によって左右されやすい。刷版時の配置を工夫することで回避できるが,最初のデザインで考慮しておくことが大切である。
■模範解答■
A(1),B(1),C(2),D(3),E(1),F(3),G(1),H(1),I(2),J(1),K(3),L(2)
■出題のポイント■
印刷における紙の選択は重要である。クライアントが望む仕上がりを実現するためには,用紙の設定とインキの量が鍵になる。同じ量のインキで印刷しても,用紙が違えば,インキの吸収率が異なり,異なる効果が得られる。ここではインキと紙の関係をしっかり覚えておくこと。
■問題解説■
印刷の発色は紙の影響を受けるので,印刷面に光沢を望む場合には,アート・コート系の用紙を使うと良い。アート・コート系の用紙では,カラー印刷物の彩度が高く感じられる。
アート・コート系の用紙は白い光沢をもつように表面加工されている。この用紙はインキが吸収されにくいという特徴がある。そのため,網点が紙の表面にのり,シャープでメリハリのある表現ができる。ハイライト部分の再現性も良いので,鮮やかに表現できる。印刷時のドットゲイン(網点の拡大)も小さく,細かい網点も鮮明に印刷できる。そこで,アート・コート系の用紙への印刷には,150線,175線程度の細かな線数が使われる。
アート・コート系の用紙は印刷物の表紙に適しているが,表面に光沢ができ,光が反射するので,細かな文字の可読性は劣る。
印刷物の発色には,紙の白色度が大きく影響する。同じインキ量で刷っても,上質紙のように表面が粗く,乱反射を起こす紙では,印刷物のインキ濃度が低くなることが多い。
また,マット紙のように,つや消しに見えるように表面加工した印刷用紙もある。マット紙はハイライト部分も鮮やかで,シャープで美しい色が再現できる。マット紙は出版,広告分野に使われる。
新聞用紙は印刷時にインキの吸収量が多く,ドットゲインが大きいので,網点の細かい再現には適していない。そのため,新聞用紙への印刷には65線,85線などの粗い線数が使われる。
このように種々の印刷適性をもつ印刷用紙があり,それぞれの印刷用紙ごとに吸油性が異なる。
インキの吸収性が高いのは,吸油性が高くて薄い紙である。そのため,ベタの多い印刷物では,印刷面が裏に透けて見える裏抜けを起こしやすい。表裏面の同じ位置にカラー写真がある印刷物では,裏抜けが起こると,それぞれの面での色再現に影響を及ぼすので,注意が必要である。
一方,カード紙など,インキの吸油性が低い紙では,ベタ部分などで裏移りすることがある。裏移りは,乾きの悪い下の紙のインキが,上の紙に付くトラブルである。こうした紙を使用する際は,印刷後の乾き具合に気をつける必要がある。
パッケージ印刷などでは,大きな版に同一の絵柄を殖版し,刷版する。平版印刷では同じ版(絵柄)を反復,連続して多面焼き付けを行う場合,コンピュータ制御の露光装置(殖版機=コンポーザ)を使用する。
同じく,パッケージ印刷の場合,ベタ部分と空白部分が混在した絵柄を印刷する際,ベタの部分にゴーストが発生することがある。ゴーストは,印刷版にある絵柄と異なる濃淡が,印刷物に生じる現象である。これは印刷条件によるもので,インキローラからのインキ供給量が多すぎるなど,印刷される部分のインキ供給量と消費量のバランスが崩れることによって発生する。そのため,印刷時の条件設定に気をつけなければならない。
また,印刷用紙の選択は印刷の効果を左右するので,注意深く行わなければならない。印刷用紙を適切に選択するには,印刷に関する深い知識と経験が必要となる場合もある。
(出典:月刊プリンターズサークル連載 2001年2月号記事より)
2001/02/18 00:00:00