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DTP豆知識(200105)出力処理,ネットワークセキュリティ

本コーナーでは,DTPエキスパートを目指すうえで理解しておきたいことを模擬試験形式で解説します。JAGAT認証DTPエキスパート 田邊忠氏に,問題のポイントや重要点を解説していただきます。試験勉強のご参考に,またはDTPに必要な知識の確認にご活用ください。DTPエキスパート認証試験の詳細はDTPエキスパートのページをご覧ください。


問1 出力処理

次の文の[ ]の中の正しいものを選びなさい。

 DTPソフトの画面表示処理は,OSの[A:(1)CUI (2)GUI (3)GDI (4)FEP]が行い,画面作業をしている段階では,PostScriptデータが作られていない場合が多い。通常のPostScript出力では,DTPソフトが出力処理をする段階でPostScriptのファイルを生成するか,あるいは[B:(1)GUI (2)GDI (3)ラスタライザ (4)プリンタドライバ]がPostScriptデータに変換して出力機に送る。

 PostScriptファイルのなかでは,オブジェクトの位置は[C:(1)自由に記述できる (2)ページ上の出現順に記述する]が,ページ内のオブジェクトの最終配置処理を行うのは出力側の[D:(1)FEP (2)ラスタライザ (3)ドライバ (4)RIP]である。このため出力に時間がかかったり,出力不能となることがある。

 フォーマットの異なるデータが混在したファイルは,出力トラブルの元になりやすいので,使用するフォーマットをあらかじめ決めておいたり,出力前にファイルに含まれる書体,画像,カラー設定などの情報を抽出する[E:(1)GUIによる確認 (2)プリフライトチェック (3)ラスタライズ (4)画面確認]を行って,データを検査すると良い。

 画像の色分解については,従来はアプリケーションかPostScriptプリンタドライバが,RIP前に[F:(1)CIE (2)CMYBk (3)RGB]の分解データを作成していたが,現在のWindowsのGDIモードやPDFファイルでも,JPEGのように[G:(1)CIE (2)CMYBk (3)RGB]データが使われることが多くなった。PostScriptレベル2RIPは,PDFを直接扱うことができなかったが,PostScript3対応RIPには,PDFを解釈し,RIP内で色分解する[H:(1)カラーマネジメント (2)InRIPトラッピング (3)InRIPセパレーション]機能がある。

 また,従来は出力装置の精度にもとづく色ズレも事前に処理してデータを作り直していたが,[I:(1)カラーマネジメント (2)InRIPトラッピング (3)InRIPセパレーション]機能により,RIP内で行うこともできる。

    ■模範解答■
    A(2),B(4),C(1),D(4),E(2),F(2),G(3),H(3),I(2)

    ■出題のポイント■
     ここではコンピュータでの画面表示,プリンタ出力の方法を学ぶ。DTPではPostScriptが業界標準の言語となっている。
     出力の際にPostScriptがどう処理されるかを理解すること。また,RIP関連の新技術についても知っておくこと。

    ■問題解説■
     DTPソフトの画面表示処理はOS(Operating System)のGUI(Graphical User Interface)が処理している。そのため,画面操作をしている段階では,出力に必要なPostScriptデータが作られていない場合が多い。ちなみに,GUIはコンピュータでは画面上に表示されるアイコン,ウインドウなどのグラフィカルな要素を,マウスなどのポインティング・デバイスで操作する方式のインタフェイスである。

     GUIの利点は,プログラムやファイルなどがアイコンと呼ばれる絵柄で表示されているため,初心者でも自分が行っている操作の内容が理解でき,習得が早まることである。GUIはXerox社のパロアルト研究所で開発され,その後,Apple社のMacintoshに採用された。現在ではWindowsにもGUIが採用されている。

     もちろん,プリンタに出力するためにはPostScriptデータが必要である。通常のPostScript処理工程では,出力する段階で,DTPソフトが必要なPostScriptファイルを生成するか,またはプリンタドライバがPostScriptデータに変換して,プリンタにデータを送る(図1参照)。


     プリンタドライバはプリンタを制御するためのソフトウエアである。OSやアプリケーションソフトから受け取った文字,画像のデータを,プリンタが解釈できるデータに変換して,プリンタに送る。プリンタ出力には不可欠な役割を果たしている。

     PostScriptファイルのなかでは,文字,画像など,オブジェクトの位置を自由に記述できる。ページ内でオブジェクトを最終的に配置するのは,カラープリンタ,イメージセッタなど,出力側のRIP(Raster Image Processor)である。RIPは,数式やPostScriptなどのプログラム言語で記述された文字や画像を必要な大きさと位置に変えて,塗りつぶしたビットマップとして展開するためのハードやソフトのことである。プリンタでの出力にはこの処理が必要なので,出力に時間がかかる。また,処理時のエラーで出力不能になることがある。

     フォーマットの異なるデータが混在したファイルは,出力トラブルを引き起こしやすい。このようなトラブルを回避するためには,事前の打ち合わせや,データのチェックが効果的である。まず,出力データ制作時に使用するフォーマットをあらかじめ決めておくことや,出力前にファイルに含まれる書体,画像,カラー設定などの情報を抽出するプリフライトチェックで,データを検査することが必要である。

     従来は,アプリケーションやPostScriptプリンタドライバが,PostScriptデータをRIPに送る前に,画像の色分解を行って,CMYBkの分解データを制作していた。
     しかし,現在ではWindowsのGDI(Graphics Device Interface)モードや,PDF(Portable Document Format)ファイルでも,JPEG(Joint Photographic Experts Group)と同様に,RGBデータを使うことが多くなった。

     GDIは,Windowsで画面表示や印刷などのグラフィックス処理を行うカーネル・モジュールである。Windowsのアプリケーションは,直接ディスプレイやプリンタのドライバを利用するのではなく,GDIに対してコマンドを送る。そしてGDIは,アプリケーションからのコマンドを各デバイス・ドライバが解釈できるデータ形式に変換して,プリンタなどのデバイスにデータを送る。

     PostScript3対応RIPには,オプションの機能も含めて,PostScriptレベル2対応RIPにはなかった優れた機能が装備されている。PostScriptレベル2はPDFを直接処理できなかったが,PostScript3対応RIPではPDFを解釈し,RIP内で色分解するInRIPセパレーション機能がある。また,以前は出力機の精度にもとづく色ズレを事前に処理し,データを作り直していたが,InRIPトラッピング機能により,RIP内でトラッピング値を設定できるようになった。


問2 ネットワークセキュリティ

次の文の[ ]の中の正しいものを選びなさい。

 インターネットは公開された共通のプロトコルと共通の仕組みで接続されているので,世界中のどこにでも接続できる。そのため,外部からの不正侵入に対するセキュリティ対策として,[A:(1)ファイアブリッジ (2)ゲートウェイ (3)ファイアウォール]という機能でIPアドレスをチェックし,企業内LANを保護する方法がある。一般に,インターネットとローカルネットの境界など,2つのネットワークを中継する[B:(1)ハブ (2)ルータ (3)FTP (4)ブリッジ]を使って,ネットワーク上を流れるパケットの[C:(1)フィルタリング (2)スプーリング (3)検索 (4)アクセス]を行う。パケットごとに送受アドレスやプロトコル,ポート番号をみて,許可や拒絶をする。インターネットには何千種ものプロトコルがあり,セキュリティの設定は,DNS,HTTP,電子メール以外は何も通さないところから始める。

 ルータには,通過するIPパケットのアドレス情報を書き換える[D:(1)プロキシ (2)IPマスカレード (3)スプール (4)ブリッジ]の機能がある。内部から外部に送ったパケットに対する応答のみを受け付けるもので,外部から内部にはアクセスできず,内部を隠すことになる。

 ファイアウォールのセキュリティルールを変えると,異なる事業所のIPアドレスからのパケットを許可して[E:(1)WAN (2)LAN (3)VPN (4)PBX]にすることができる。ただし,外部から接続できるようにすることはセキュリティの弱点ともなるので,該当事業所間のパケットは暗号化する仕組みを使う。

    ■模範解答■
    A(3),B(2),C(1),D(2),E(3)

    ■出題のポイント■
     近年におけるインターネット利用率の伸びは著しい。印刷業界でもインターネットを使った効率化,電子商取引など,新しいビジネスへの展開が相次いでいる。しかし,インターネットを有効に使うには,ネットワークのセキュリティを考慮する必要がある。ここでは,インターネットでのデータ転送と,そのセキュリティの仕組みを理解すること。

    ■問題解説■
     インターネットは公開された共通のプロトコルであるTCP/IP(Trasmission Control Protocol /Internet Protocol)と,共通の仕組みで接続されているため,世界中のユーザに接続できる。これが,インターネットが急速に普及している理由である。

     その一方で,世界中の利用者のなかには企業,システムへの不正侵入,いたずら,破壊など,ネットワーク本来の目的に反した行為に及ぶ者もいる。そのため,外部からの不正侵入に対するセキュリティ対策として,ファイアウォールという機能を用いて,IPアドレス(Internet Protocol Address)をチェックし,企業内LAN(Local Area Network)を保護する方法がある(図2参照)。


     ちなみに,TCP/IPは1975年にDARPA(米国防総省高等研究計画局)で開発されたインターネット標準プロトコルである。その後,83年に,インターネットの前身となるARPANETの通信規約に採用された。世界に最も普及しているプロトコルとして,インターネット,各種イントラネット,LANなどにも採用されている。

     ファイアウォールには,「パケット・フィルタリング・ルータ」型と「プロキシ・サーバ」型がある。前者は,インターネットとローカルネット(LAN)の境界など,2つのネットワークを中継するルータ(Router)を使い,ネットワーク上を流れるパケットをフィルタリングする。パケットごとに送受アドレスやプロトコル,ポート番号をチェックして,それぞれに対し,通過の許可や通信の拒絶を判断する。

     なお,「プロキシ・サーバ」型では,インターネットへのアクセスに中継機能をもつサーバ(プロキシ・サーバ)を利用する。プロキシ・サーバはその設定に従って,プロトコルを監視し,社内ネットワークのセキュリティを保つ。
     IPアドレスは,インターネットに接続された各コンピュータに与えられた住所である。このアドレスは,ピリオドで4つに区切られた0〜255までの数値で表現されている。

     現在,IPアドレスの規格はIPv4であるが,次世代の規格IPv6(Internet Protocol Version 6)では,アドレス空間が32ビットから128ビットに拡張される。それにより,IPアドレスが膨大な数の機器に割り当てられ,それらの機器がインターネット端末に接続できる。

     ルータには,通過するパケットのアドレス情報を書き換えるIPマスカレードという機能がある。これは,内部から外部に送ったパケットに対する応答のみを受け付ける機能である。外部から内部にはアクセスできないため,内部を隠すことができる。
     ファイアウォールのセキュリティルールを変えることにより,異なる事務所のIPアドレスからのパケットを許可し,VPN(Virtual Private Network)に変更することができる。

     VPNは公衆ネットワークを専用線のように利用できるサービスである。一般に,これは仮想私設網または仮想閉域網と呼ばれる。VPNは従来の専用線接続システムを導入するよりも安価である。ただし,外部からの接続を許可すれば,それがセキュリティの弱点ともなるため,該当事務所間のパケットでは暗号化する仕組みを使うことになる。
(出典:月刊プリンターズサークル連載 2001年5月号記事より)

2001/08/01 00:00:00


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