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DTPは印刷を変えた(1)− 印刷100年の変革

1970年〜1987年頃までの日本における文字処理システムは、和文タイプ、手動写植と電 算写植、電子組版などが棲み分けて存在していた。そして活字組版は衰退したとはいえ、 まだ実存していた。

従来日本における印刷用の文字処理は、電算写植や電子組版などの専用システムであり、 また画像処理もCEPS(Color Electronics Prepress System)に代表されるように専用シ ステムで処理されていた。

コンピュータの高性能化とダウンサイジングにより、今まで専用コンピュータで処理し てきた文字処理や画像処理などが、小型コンピュータのパーソナル・コンピュータで処理 できるようになった。その代表的な存在がDTPであり、印刷業界のプリプレス分野におけ る技術革新をもたらせた。

●DTPの誕生
DTP(Desktop Publishing)は、1985年に米国でOAの一環として誕生した。その後数年 の間に欧米で普及し、今ではDTPが印刷物制作の常識にまで発展している。いまさら何を 改めてDTPについての解説を、と思うかもしれないが、「DTPありき」からこの世界に入っ た若いユーザー層のために、DTPに関する技術的なことより、現在にいたるまでの辿って きた道程や経緯について解説をするのも役に立つことであろう。

DTPが日本に上陸したのは1987年頃で、まだ14年足らずの歴史である。当時の日本語 DTPは、日本語組版ソフトやフォント、出力環境などに課題が多かった(今でも多い)が、 1990年頃から一部の先進的ユーザーだけが、試行錯誤的に使っていたのが始まりである。 当初日本ではDTPを真面目に、「卓上出版」とか「机上出版」と直訳したように定義が不 明確であったため、いろいろな解釈が生まれた。本来DTPは、ホワイトカラーの生産性向 上を図るOAツールの一環として生まれたものであるが、DTPの技術的発展と共に現在では 印刷業界のプリプレスやマルチメディア分野にまで影響を与える広がりを見せている。

DTPの定義が明確でないとはいえ、今では日本でもDTPという言葉が定着してきている。 しかし米国ではDTP誕生以前に文書処理(document processing)に対する次の4つのコン セプトがあった。

1.コマンドを入力する代わりにメニューを選ぶ。 ・対話入力/アイコン入力など
2.段階的表示
・必要なときに必要な情報を得ればよい。プルダウンメニュー方式 3.コマンドの統一性
・マニュアルの不要と操作性の向上
4.WYSIWYG
・画面で見た通りのイメージが出力して得られる。

●DTPのコンセプト
これらのコンセプトがベースになってDTPのハードウェア/ソフトウェアが開発されて いる。欧米では、DTPがファイン文書(清書文書)作成用として発展してきたが、そのコ ンセプトは次のようになる。

1.プラットフォームはデスクトップ・コンピュータ(パソコン)をベースにしている。(低 価格)
2.イメージスキャナで図形・画像を入力し、文字・図形・画像などをディスプレイ画面 上で同時編集できる。
3.プリンタやイメージセッタなどの出力装置から、文字・図形・画像が同時出力できる。
4.共通のPDL(Page Description Language=ページ記述言語)に対応していれば、ファ イルやフォントの互換性があり出力装置に依存しない。つまりデバイスインデペンデ ントである。
5.WYSIWYG(What You See Is What You Get=ウイジウイグ)の思想。
6.アウトラインフォントを使うことで、文字の拡大・縮小・変形・回転処理などの自由 度が高い。
などである(つづく)。他連載記事参照

2001/10/13 00:00:00


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