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DTP豆知識(200111)バックアップ,エンドユーザコンピューティング

本コーナーでは,DTPエキスパートを目指すうえで理解しておきたいことを模擬試験形式で解説します。JAGAT認証DTPエキスパート影山史枝氏に,問題のポイントや重要点を解説していただきます。試験勉強のご参考に,またはDTPに必要な知識の確認にご活用ください。DTPエキスパート認証試験の詳細はDTPエキスパートのページをご覧ください。


問1 バックアップ

次の文の[ ]の中の正しいものを選びなさい。

 大量のデータを運用するシステムは,パソコンをネットワークで結び,サーバの[A:(1)CD-ROMドライブ (2)MO (3)ディスクアレイ装置]ですべてのデータを集中管理すると良い。このようなサーバの基本的な機能には,ファイルを共有して使うためのファイルサーバ機能,出力ジョブのバッファである[B:(1)OPI機能 (2)プリントスプーラ機能 (3)イントラネット機能 (4)節電機能],および大容量の画像に差し替えて出力する[C:(1)OPI機能 (2)プリントスプーラ機能 (3)イントラネット機能 (4)節電機能]などがある。

 ソフトウエアの不具合などによるデータ破壊や災害による被害,またコンピュータ犯罪などへの対策のため,サーバのデータを二重化(ミラー)してもつ方法や,数台で1つのディスクセットとし,どれか1台が壊れても運用が止まらない[D:(1)スプライト (2)ストリーマ (3)HSM  (4)RAID]という方法が使われる。しかし,それでも機械が壊れる可能性は残り,バックアップが必要となる。

 まずバックアップ手順やルールを確立し,バックアップソフトで対象/方法/スケジュールなどを自動管理するように設定する。サーバから大量データをバックアップする記憶媒体として,現在最も有力なのは[E:(1)外付けHD (2)カートリッジ型HD (3)磁気テープ (4)ZIP]である。書き込みはシーケンシャルだが,大容量データを低コストで高速に保存できる。一方,ランダムにアクセスできる媒体として,MO,CD-R,CD-RW,DVD-RAM(DVD-RW)などがある。最近はパソコンで読み出しやすいCD-Rがアーカイブ用として注目されているが,[F:(1)専門業者でないと作成できない (2)バックアップ装置としては遅い]という欠点がある。

    ■出題のポイント■
     印刷物の制作過程で発生するデジタルデータのバックアップおよび管理を効率良く行うためのシステムとして,サーバの仕組みやメディアなどの必要な基礎知識を問うもの。

    ■関連項目■
    補助記憶装置,ネットワーク,プリントサーバ,ワークフロー

    ■問題解説■
     印刷物の制作過程で使用するデータの場合,高解像度画像やページものの制作物などの大容量データが発生することを考慮して,ディスクアレイ装置を接続したファイルサーバで,すべてのデータ類を一元管理すると良い。

     サーバは,サービスを提供するシステムであり,そのサービスを利用するマシンをクライアントと呼ぶ。DTP環境下で運用するサーバには,ファイルサーバ,プリントサーバ,OPIサーバなどがある。

     ファイルサーバは,共有するデータを一元管理し,複数のクライアントがネットワーク経由でサーバ側のデータを利用するための働きをもつ。プリントサーバは,クライアントマシンから印刷命令によって出力機に送られるデータを一時的に蓄えて,出力機へのデータ転送の中継や,出力機制御を行う。OPIサーバは,高解像度画像データからレイアウト用の低解像度データを生成する。クライアントマシンがこの低解像度データを使用してレイアウトを行い,出力時にOPIサーバを経由することで高解像度データへすり替え,出力を行う働きをもつ。いずれのサーバも,1台のコンピュータにかかる負担を分散して,システム全体の効率を上げる働きをもつ。

     ファイルサーバでは,大容量のデータ管理機能やデータの破損に備えた保護機能をもつRAIDシステムが利用される。RAID(Redundant Array of Inexpensive Disks)は,直訳すれば「安価なディスクによる冗長なデータ配列」となる。複数台のハードディスクで構成され,クライアント側からは,仮想的に1台のハードディスクとして認識される。データ保護機能として,1台のハードディスクが破損した場合に備えて同じデータを二重に保存する機能(ミラーリング),データを分割して複数台のハードディスクに並列書き込みをすることで高速化を図る機能(ストライピング),故障時のデータを復帰させるための情報(パリティ)を別に記録する機能などがある。このような予備のハードディスクや付加情報のように,本来なくても良い情報をデータ処理用語で「冗長(Redundant)」と呼んでいる。

     こうしたハードウエア障害対策機能をもつRAIDを使用していても,データや機械が壊れる可能性は残るため,確実にデータを保護するにはバックアップが必須となる。

     サーバに保存されたデータのバックアップに利用する記録媒体としては,磁気テープ,MO,CD-R,CD-RW,DVD-RAM(DVD-RW)などがある。磁気テープは,大容量のデータ保存に適し,数十GBから,ライブラリ利用によって数百GBのデータ管理ができる。書き込みはシーケンシャル(順次)方式で,低コストな記録媒体の1つである。ほかに低コストな媒体は,CD-Rがある。1枚に640MBのデータ保存が可能で,単価は低価格だが,バックアップ装置としては読み書きが低速である。

     バックアップの手順は,バックアップソフトを利用し,夜間や週末に自動処理できるようにスケジュール設定を行う。そのほか,バックアップ対象のデータやディスクの指定,データ全体をコピー(フルバックアップ)するのか,新規ファイルと前回のバックアップ以降に変更されたファイルのみをコピー(増分バックアップ)するのかという指定がある。

     コンピュータを利用してデータ処理を行う限り,各種トラブルによるデータ破損や消失からは免れることはできない。日ごろからデータのバックアップ体制を整えておくことが重要であり,その運用方法についてもルールを確立しておくことで,障害発生後の迅速な業務の復旧が可能となる。

    ■用語解説■
    バッファ(buffer) 一時的にデータを記憶させるメモリや装置。

    ディスクアレイ(Disk Array) 複数の磁気ディスク装置を1台のBOXに内蔵した装置。

    RAID(Redundant Array of Inexpensive Disks/レイド) 複数のハードディスクを1台のハードディスクとして管理する方式や装置。

    シーケンシャル(Sequential) 先頭から順番に読み出しを行うこと。

    アーカイブ(Archive) ファイル保管のために複数ファイルを1つにまとめること。

    ■解答■
    A:(3)ディスクアレイ装置 B:(2)プリントスプーラ機能 C:(1)OPI機能 D:(4)RAID E:(3)磁気テープ F:(2)バックアップ装置としては遅い


問2 エンドユーザコンピューティング

次の文の[ ]の中の正しいものを選びなさい。

 ネットワークの普及により,作業形態は従来のデータの[A:(1)集中処理 (2)分散処理 (3)マルチタスク (4)UNIX化]から,コンピュータシステムの負荷を軽減した[B:(1)集中処理 (2)分散処理 (3)マルチタスク (4)UNIX化]に移行しつつある。この処理形態の代表的なものがクライアント/サーバで,サービスを提供するのが[C:(1)サーバ (2)クライアント (3)ノード (4)HUB]で,サービスを要求するのが[D:(1)サーバ (2)クライアント (3)ノード (4)HUB]である。

 ネットワークによる分業形態として,クライアントと,データベースなどのサーバの中間に[E:(1)ターミナル (2)ファイル (3)アプリケーション]サーバを置く3層クライアント/サーバがある。

 例えばクライアントとしてWebブラウザを使う場合,Webサーバにはファイルやデータベースの機能だけをもたせて,クライアントからのデータ加工などの処理への要求は別のサーバに振り分ける。この時,2つのサーバの間でプロセス間通信が行われて処理される。

 インターネット技術は[F:(1)機能がブラックボックスである (2)仕様が公開されている (3)仕様が自由に変えられる]ので,異機種のコンピュータをエンドユーザが組み合わせてシステム化できる。エンドユーザコンピューティングは,パソコンの使い方を覚えることではなく,エンドユーザがシステムを構築できるような環境が生まれたことからくる考え方である。すべてを利用者が開発するのではなく,企業活動の根幹をなす[G:(1)基幹システム (2)アウトソーシング (3)オフザシェルフソフト]と,エンドユーザ部門の変化する業務の必要性に合わせたモジュールを,ネットワークで組み合わせて使えるようなシステムを考えなければならない。

    ■出題のポイント■
     ネットワークの普及やコンピュータの機能向上に合わせ,さまざまな機器群が市場にあるなかで,エンドユーザ(業務担当部門)が業務に合わせて,これらの機器群を組み合わせ,独自のシステム構築や運用を行える環境が整ってきたことを理解する。

    ■関連項目■
    ハードウエア,ネットワーク,システム設計,バックアップ

    ■問題解説■
     従来のデータ処理は,ホストコンピュータに複数台の端末をネットワークでつないで,端末では入力処理を,ホストコンピュータでは端末から入力された大量のデータの演算処理を行うという集中処理形態で運用されていた。近年のネットワークの普及により,個々のコンピュータでさまざまな演算処理を行う分散処理へと移行しつつある。この分散処理形態の代表的なものがクライアント/サーバであり,コンピュータの1台1台では限界のある処理を,サービスを提供する側(サーバ)と,サービスの提供を受ける側(クライアント)とに役割分担して作業効率を上げ,データやハードウエア,ソフトウエアを共有する仕組みを確立している。

     クライアント/サーバでは,クライアント数が増えたり,ネットワーク規模が大きい場合には,サーバへの負荷がかかりシステム全体の性能が落ちるという問題が発生する場合がある。このことから,サーバの負担を分散するために,サーバとクライアントの中間にアプリケーションサーバを置く3層クライアント/サーバという考え方がある。

     3層クライアント/サーバでは,クライアントはデータの入出力と表示に専念し,サーバはデータの管理やデータアクセスに専念し,データ加工などのアプリケーションプログラムの実行をアプリケーシ

    ョンサーバが行う。この時,2つのサーバ間で,クライアントからの要求を送受信するために,おのおののシステム間での情報交換(プロセス間通信)が行われている。

     インターネット技術は,ISOやW3Cなどによって標準化,規格化され,その仕様が公開されているので,これらの技術を利用して異機種のコンピュータを組み合わせ,社内システムの構築や運用を行うことが可能となった。

     以上のような背景から,エンドユーザコンピューティングの考え方が定着してきた。エンドユーザコンピューティングとは,従来システム管理部門に任せていた社内システムの企画・開発・構築・運用を,実際の業務を行うエンドユーザが,業務に適したコンピュータやソフトウエアを利用できるようにシステム構築を行うという考え方である。エンドユーザ自らシステムを開発する場合もあるが,基幹システムとのデータをやり取りするような場合には,システム管理部門と連携して,さまざまな機器やソフトを組み合わせてシステム構築する必要がある。

    ■用語解説■
    アプリケーションサーバ(Application server) クライアントマシンからの要求を受け付け、データベースなどの業務システムの処理に橋渡しする機能をもったサーバソフトウエア。ミドルウエアとも呼ぶ。

    プロセス間通信(InterProcess Communication) 同じマシン内やネットワーク上のコンピュータ間で,実行中のプログラムやシステム内に用意された共有領域を使用して,データのやり取りをすること。

    基幹システム(Backbone Systems) 企業経営に不可欠な業務(基幹業務/販売事務や経理事務)をコンピュータで効率的に遂行するためのシステム。

    モジュール(Module) コンピュータのハードウエアやソフトウエアで分割可能な部品。

    ■解答■
    A:(1)集中処理 B:(2)分散処理 C:(1)サーバ D:(2)クライアント E:(3)アプリケーション F:(2)仕様が公開されている G:(1)基幹システム
(出典:月刊プリンターズサークル連載 2001年11月号記事より)

2001/11/05 00:00:00


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