業界横断型商品情報データベースの取り組みがさまざまな業界で始まっている。クライアントの情報管理・運営のノウハウと印刷会社の制作のノウハウがWebをインフラに新しいメディアを生み出し,新たなビジネスチャンスを作り出している。
今回は,MRO業界横断型データベースサービスを開始した,ディーアーチの代表取締役長谷川暢彦氏に,同社の事業内容と標準化への取り組みを伺った。
今年4月をめどにサービスを本格化する。事業概要としては,文具を始めとするオフィスMRO(Maintenance, Repair and Operations)商材を中心とした商品情報データベースの構築,運用管理,加工・流通の代行などである。
MROとはいわゆるオフィス消耗品だけでなく,机や椅子,OA機器などのオフィスサプライ用品全般,また生産部門や工場などで使用される電子部品,工具のような作業用品までも含み,企業が間接費や経費で購入するさまざまな物品すべてを指す。サービスの対象は,商材情報を発信するメーカーサイド,活用する流通サイドの双方を想定している。
長谷川氏はE-kokuyo開発室で「べんりねっと」の企画開発・運用を手掛けていた。「べんりねっと」は企業・法人向けのネットワークサービスで,顧客セグメントでいうと1事業所当たり300名以上の大規模企業を対象としている。現在導入企業は全国で500社ほどあるという。顧客ごとに専用のオンラインカタログを作成し,指定商品を掲載するシステムなので,コクヨ商品以外も,また,文具・事務用品以外の商品も掲載できる。
消耗品の購買業務を効率化したいという顧客ごとに,専用の購買システムを提供する仕組みで,発注から支払処理まで,購買業務全般をトータルでサポートする。
しかしながら,実際問題として間接商材のすべてをカバーすることは難しい。サービスとしては,顧客ごとにカスタマイズされた電子カタログ・電子購買の仕組みを構築していかなくてはならない。ほかの電子購買システムの参入も多数あり,さまざまな仕組みも立ち上がってきた。
大手企業を中心に電子購買システムを導入するケースが増えているが,そのため販売店・卸に商品マスターの提供が迫られている。しかし,地場で納品サービスを行ってきた一般文具販売店などの中小サプライヤーにとって,自社対応するのは困難である。販売店によってはシステム対応のスキルがないところも多く,電子購買システムに参加できないことになる。
そこでコクヨとしては,販売店や卸に対して,電子購買システム対応の技術支援活動も行っていた。しかし次第に,商品情報データの電子化依頼件数も増え,要求レベルも高くなってきた。
コクヨ本体でやるよりもアウトソースする先を捜したほうがよい。ノウハウを生かした形で独立会社として設立したのが,ディーアーチである。
新会社事業としてはコクヨ製品のみでなく,業界全体の情報サービス事業としての確立を目指すという。
(1)商品情報データベースの運用管理代行サービス
メーカーの商品情報(品番・品名・メーカー希望小売価格・商品説明など)データベースのWeb上での運用管理など。
(2)データベースの構築,流通加工などの代行サービス
既存の紙カタログ用データのデータベース化,複数メーカー商品情報の一括提供,サプライヤーサイドで必要なフォーマットへの変換など。
(3)コンサルティングサービス
商品情報データベース構築,システム構築に関するコンサルティングなど。
(4)データベースを活用した展開サービス
オンデマンドによる紙カタログ・CD-ROMカタログなどの作成,ECサイト構築など。
また,新製品が発売された時,新製品情報の公開日制限や特定流通向け商品などの非公開制御など,これまで人手で行ってきたデータ流通の制御をシステムでバックアップする。
同社のコアとなるシステムには,凸版印刷開発の「GAMEDIOS(ガメディオス)」を導入している。GAMEDIOSは,企業の商品情報としての文字,画像,図形を統合して管理できるマルチメディアリソースサーバである。既にいくつかの業界標準データベースが構築されていることもあり,実用的な商品情報データベースサービスを実現できると思ったからである。
また商品情報のエントリー用には「e-BASE」を採用している。e-BASEは,Windows環境での利用が可能で,商品画像や商品スペックといった一連の商品情報を登録・管理できるデータベースソフトである。Excelなどの表計算ソフトから一括登録も可能である。GAMEDIOSへのデータ登録もワンクリックでWebサーバへ転送して管理することができる。リアルタイムで商品情報の提供を行うことができる。
同社の事業は会員制で,各会員からはデータベース利用料をもらう。メーカー会員から商品データ管理運営代行料を,サプライヤー会員からは商品検索・情報取得料をそれぞれ徴収し運用していく。
現在,既にいくつかのメーカー・サプライヤーより賛同を得ており,デモ環境の構築と並行して積極的にメーカーサイドのデータ構築を図っていく予定だという。順次プレサービスを開始し,モニター運用後,近いうちに本格サービスを展開予定である。(上野 寿)
■出典:JAGAT info 3月号
2002/03/21 00:00:00