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Windows 3.1とTrueType─フォント千夜一夜物語(11)

文字(フォント)をパッケージにして一般流通で販売するという戦略は、フォントのオ ープン化を意味する。つまりWindowsの世界は印刷業界だけがターゲットではない。したがって、写植/印刷業界のR/RIにとって、目に見えない危機感があることは否定できない。

しかしR/RIにとって、数年前におけるアドビ社のプロポーズの経験や、アップル社の Mac OS漢字Talk 7.1へのOEM提供の実績から、パソコンのフォント市場に対する知識と 経験を学び会得したことが大きな進歩となっていた。

結論に時間を要したものの、最終的にアルプス電気とRIは技術提携および販売契約を締 結した。アルプス電気は、R/RIからリョービフォントのデジタルデータの提供を受け、 FontWave対応の独自フォーマットのアウトラインフォントを開発しパッケージ化する。そして、アルプス電気の子会社ALSIを販売元として市場に販売するという戦略である。

その後1992年末までにリョービ書体10数書体をリリースしたが、他社フォントにも FontWave対応を呼びかけグループ化を図っていった。NISフォントを初めコーパスフォン ト、タイプバンクフォントなどである。1994年5月には約50書体がパッケージフォント として市販されている。

一方、他の情報機器メーカーも、「FontWave」に追従するようにキヤノンの「FontGallary」、 富士通の「FontCity」、「DynaFont-98」などが市場に参入し、フォント戦争といわれる状況が到来した。

1993年代になると、今までMac DTPのフォント不足を嘆いていたことが嘘のように、豊 富なフォント環境が生まれ「Windows DTPの実現なるか」という言葉が流れたほどである。 とはいえ、残念ながらフォント品質については玉石混淆(ぎょくせきこんこう)の域をま ぬがれなかった。

1994年2月に(社)日本印刷学会から平成6年度技術賞として、「フォントラスタライ ザFontPro1000」および「FontWaveフォントの開発」に対して、アルプス電気(株)/リョービイマジクス(株)が受賞している。

いままで印刷学会の技術表彰は、印刷関連の純技術的な研究や開発が対象となっていた ため、文字関連技術とフォントでの表彰は初めてであった。そのため印刷業界の注目を浴 びたが、Windowsは画像処理に関してはMac DTPほどではなかった。

しかしこのWIFEの環境は長続きしなかった。主な理由はWindows3.1のTrueTypeの登 場である。Windows3.1が発表された当時は、マイクロソフト社はWIFEをサポートすると していたが、最終的には各社のWIFEドライバは使えなくなったからである。とはいえ、この市場環境を築いた先人達の役割は大きく、現在のMacintoshやWindowsの日本語環境に受け継がれているといえるであろう。

その後マイクロソフト社は、次期バージョンの「Windows3.1」を発表し、1993年に出荷した。この新OSの主な特徴は、フォントラスタライザの「TrueType」をサポートすることである。

そしてTrueTypeフォーマットのアウトラインフォントを使って、画面表示とプリンタ出力ができるというMacintoshの漢字Talk7と同じコンセプトである。つまりマイクロソフ ト社は、アップル社からTrueTypeのライセンスを受け、Windows3.1のOSに組み込んだわけである。

この日本語版Windows 3.1のOSに、標準搭載された日本語TrueTypeフォントが「MS明 朝/MSゴシック」である。このアウトラインフォントの元になった字母は「リョービ本明朝L/ゴシックB」で、リコーがTrueType化しマイクロソフト社にライセンスしたものだった(つづく)。

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2002/09/07 00:00:00


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