DTP豆知識(199910)
本コーナーでは,DTPエキスパートを目指すうえで理解しておきたいことを模擬試験形式で解説します。JAGAT認証DTPエキスパート 福原節寿氏に,問題のポイントや重要点を解説していただきます。試験勉強のご参考に,またはDTPに必要な知識の確認にご活用ください。
次回,第13期DTPエキスパート認証試験は2000年3月12日に行われます。詳細はDTPエキスパートのページをご覧ください。
問1 版材,刷版
その1 PS版
次の文の[ ]の中の正しいものを選びなさい。
PS版のPSとは[A:(1)プリプレスシステム (2)プレセンシタイズ (3)プレートセッタ (4)ポストスクリプト]の略で,通常,支持体に[B:(1)鉛 (2)紙 (3)アルミニウム (4)プラスチック]の薄板を用い,表面に化学処理を施して強度を上げ,また[C:(1)水 (2)油 (3)インキ (4)熱]を保つようにしている。
PS版はこの表面に[D:(1)乾燥剤 (2)感光剤 (3)定着剤 (4)保湿剤]を塗布して製品化したもので,フィルムを密着させて[E:(1)赤外 (2)紫外 (3)可視 (4)白色]光で露光し,自動現像機で現像する。
多くの場合,非画線部が水になじんで,インキの[F:(1)水分 (2)ビヒクル (3)油 (4)熱分]をはじく性質を使って画像を形成するが,非画線部にシリコンなどを使った水なし平版もPS版の一種である。
平台校正にもPS版は使われ,露光時間を調整して[G:(1)網点 (2)耐刷力 (3)色調変化 (4)濃淡変化]の大きさを変えることにより,校正と本刷りの[H:(1)網点密度 (2)印刷濃度 (3)色ずれ (4)ドットゲイン]の差の補正ができる。これを焼き度調整という。
その2 CTP
次の文の[ ]の中の正しいものを選びなさい。
版材をイメージセッタや刷版用のレコーダのような大型[I:(1)ベクターデバイス (2)ラスターデバイス]にセットして,RIPから直接刷版を作る方法をCTP(コンピュータ・トゥ・プレート)と呼んでいる。
紫外線露光をする従来のPSが[J:(1)電子写真 (2)ジアゾ (3)サーマル (4)銀塩]方式が中心であるのに対し,CTPでは異なる版材も使われる。
CTP用の新しい版材として[K:(1)電子写真 (2)ジアゾ (3)サーマル (4)銀塩]方式があり,高出力の[L:(1)可視光 (2)赤外 (3)紫外 (4)X線]レーザで露光した後,加熱処理と現像処理を行うものが多い。
この方式は明室で扱え,他方式に比べて[M:(1)解像度が高い (2)解像度が安定しない (3)解像度が低い (4)ソフトドットになる]。
従来の製版では,集版のフィルム反転作業中に,分版される色の境界が適度に重なり合ったが,CTPでは正確な寸法で出力するため,あらかじめ[N:(1)トラッピング (2)トラッキング (3)トンボ (4)色玉]処理をしたデータを作っておかなければならない。
CTPでは中間工程がなくなるため,画質の劣化が最低限にとどまり高品質が得られるが,刷版製版で行っていた[O:(1)現像 (2)トラッピング (3)焼き度 (4)インキ]調整はできない。そのため,プリプレス工程で[P:(1)カラーマネジメント (2)ワークフロー (3)カラープルーフ]などを行っておく必要がある。このようにCTPの導入によって,ワークフローは従来の製版と異なってくる。
【関連項目】
CTPの出現によって,刷版工程は従来工程と比べて,版材の種類が変わるとともに中間工程のフィルムがなくなり,大きくワークフローが変わった。
従って,品質,トラッピング,色校正,データの入稿方法,直しなどを考えなければならない。
【出題のポイント】
刷版の観点からこの2問を取り上げた。PS版の仕組み,焼き付け(図1参照)と,CTPで扱われる版材をトータルに理解しておきたい。

【問題解説】
その1(PS版)
PS版とは,平版オフセット印刷で使われる刷版で,PSとはPre-Sensitizedの略で,Aは(2)となる。あらじめ感光させていることから,感光剤を塗布した板の意味である。
その板(支持体)には,耐刷力があり,価格が安価などの理由でアルミニウムが使われるので,Bは(3)となる。フィルムと同様にポリエステルベースのものもある。
また,アルミの地金部分は,表面に砂目立ての研磨や不感脂化の処理を施し,保水性(親水性)を上げることが行われているので,Cは(1)となる。
前文にもあるように,このアルミの支持体には,感光層を塗布しているので,Dは(2)となる。
感光層(樹脂)には,ジアゾ系化合物が使われ,青から紫外(感光波長は約300〜500nm)に感光波長域があるので,Eは(2)となる。現像後に残った樹脂が画線部となり,インキが着肉する。
ポジタイプは,感光層が露光により溶解し,ネガタイプは,感光層が露光により不溶,硬化し,画像部を形成する。非画線部については,前述のようにアルミの表面を親水化しており,湿し水がついてインキをはじくので,Fは(3)となる。
湿し水を使用せず,あらかじめ表面に,インキをはじく性質をもつシリコンゴムを使用する水なし平版もある。
PS版は,焼き付け時に露光不足だと,網点が太り,非画線部にも感光層が残り,汚れとなる。
反対に露光過多だと,網点は細り,ハイライト側の網点自体が焼き飛んでしまうことがある。
このように,露光時間を調整して網点の大きさを管理するので,Gは(1)となる。
基準となる適性露光量は,ステップ上の濃度チャートを用い,非画線部となるべき濃度の部分の感光層が,現像で完全に溶け落ちる露光量となる。この適正露光量の範囲で焼き度調整して,網点の大きさを変え,校正と本刷りの間のドットゲインを調整するので,Hは(4)となる。
その2(CTP)
イメージセッタやCTPの出力では,レコーダグリットに沿ってレ−ザビームをオン,オフすることで焼き付けを行い,データを記録していくので,Iは(2)となる。
Jについては,前項より(2)となる。
CTPの版材はいくつかあるが,ここでは後述の問題文がヒントとなり,Kはサーマルタイプで(3)。
これは,高出力のIRレ−ザ(Infraredの略。感光波長は約800〜850nm)で露光となるので,Lは(2)となる。
露光後,現像処理(アルカリ溶出処理)の前に加熱処理(プレヒートともいい,露光部を加熱により熱硬化させること。プレヒートが不要なポジタイプも増えている)を行う。
多くは白色蛍光灯を安全光とすることができ,ひとつの特徴として解像度が高いことが挙げられるので,Mは(1)となる。
このほかにもCTPの版材には,フォトポリマー,銀塩拡散転写などがある。
従来工程とワークフローが異なる点のひとつに,トラッピングがある。
問題文にあるようにCTP出力ではフィルム工程がない。そのため,トラッピングのデータを出力データで作成しておかなければならないので,Nは(1)となる。
CTPでは直接網点のデータを焼き付けることになるので,従来工程で行っていた露光時間を調整して,網点の大きさをコントロールする焼き度調整ができないため,Oは(3)となる。
レ−ザの光量調整はハードウエアや版材自体の適正値の調整をするもので,基本的に網点の大きさをコントロールするものではない。
焼き度調整は,ドットゲインの調整,つまり印刷における色再現をコントロールすることが目的で,CTPではそれができない。そのため,プリプレスの前工程でデータ上で行わなければならないので,Pは(1)となる。
【模範解答】
A.(2),B.(3),C.(1),D.(2),E.(2),F.(3),G.(1),H.(4),I.(2),J.(2),K.(3),L.(2),M.(1),N.(1),O.(3),P.)1)
【キーワード】
刷版,PS版,画線部,非画線部,焼き度調整,ドットゲイン,CTP,トラッピング,サーマルプレート
問2 ページもの印刷製本
次の文の[ ]の中の正しいものを選びなさい。
ページものとは,一般に32ページ以上のものを指す。これは全判の紙に対し,B5なら片面[A:(1)8 (2)16 (3)24 (4)32]ページを割り付けられるからである。
製本仕上がりから逆算して,印刷版単位でページの向きや順番を並べ替えることを[B:(1)台 (2)折丁 (3)面通し (4)面付け]という。
印刷する時の単位を[C:(1)台 (2)折丁 (3)面通し (4)面付け]といい,両面印刷して折ったものが[D:(1)台 (2)折丁 (3)面通し (4)面付け]である。
必要な全ページ数を1台当たりのページ数に分割したものを台割という。
A半裁の印刷機でA5判のページを印刷すると,1台当たり[E:(1)8 (2)16 (3)24 (4)32]ページ単位の区切りがわかる台割表を作る。
縦組みと横組みで製本の綴じ位置は異なり,面付け方法も異なる。
縦組みの綴じ位置は[F:(1)左 (2)右 (3)中]綴じで,開きは[G:(1)左 (2)右 (3)中]となり,横組みはその反対となる。
縦組みのノンブルは,[H:(1)右ページが奇数 (2)右ページが偶数 (3)起点は自由]になる。
縦組みは,折丁の袋の位置が[I:(1)天 (2)小口 (3)地 (4)ノド]側になる面付けが一般的である。
ページものの面付けでは,書名および折丁の順番を示す[J:(1)背表紙 (2)背丁 (3)背標 (4)背番号]や,落丁や乱丁を発見しやすくする記号である[K:(1)背表紙 (2)背丁 (3)背標 (4)背番号]を加えなければならない。
【関連項目】
日常手にする本の設計に関する必要最低限の項目。
暗記問題となりがちであるが,この業界では常識として捉えてほしい。
造本設計に始まり,書籍の構成,製本工程,綴じの種類,用紙の取り方など,広範囲での印刷物作成の知識が必要となる。
【出題のポイント】
本を作成する工程のうち,製本工程での用紙の取り方や,製本工程の基礎知識を問うものであり,教科書,辞典,雑誌などを例にとって考えると理解しやすい。
【問題解説】
B全判(B全紙サイズで規格仕上がりサイズB1に相当)にB5サイズがどのように割り付けられるかを理解しておくことが必要になる(図2参照)。Aは(2)となる。
この時,印刷用紙に対して割り付けられた紙の目の方向がどのようになるかも理解しておくこと。
製本仕上がりの一折り(折丁)の中で,ページの割り付けの順序,向きが決まる。この配列をすることが面付けになるので,Bは(4)となる。
印刷機に組み付けられる版面の数の単位を「台」といい,一度に印刷されるページ数で総ページ数を分割することを「台割」,このページ単位を表にしたものを「台割表」という。
両面印刷後に,製本のために用紙を折ったものが折丁となる。よってCは(1)で,Dは(2)となる。設問Aと同様に考えて,Eは(1)となる。
本自体の組版が縦組みか,横組みによって,本の開き方が異なり,綴じ(背)の位置も変わるので,それによって,折丁が折られた時に左開きか右開きになるように面付けしなければならない。
折り方は,印刷した用紙の長辺を横向きにして,長辺を左手で垂直に半分に押さえて右手で折り,それを時計周りに90度回す。左開きで天袋,右開きで地袋となる。
縦組みでは,綴じ(背)の位置は向かって右側になり,右方向に開くのでFは(2)で,Gは(2)となる。
正面に本を置き,開く時に使う手がどちらかと考えると理解しやすい。
ノンブルとはページ番号のことで,通常,縦組みでは右ページが偶数,横組みでは右ページが奇数となるので,Hは(2)となる。
折丁の袋を上(天)にするか下(地)にするかで,開きの方向,つまり縦横の組みが決まる。前述を参考にしてIは(3)となる。
丁合の作業が正しくないと乱丁,落丁本の原因となる。これを防ぐために,各折丁の背の部分に順番を表す番号や書名を表したものが「背丁」,■などの印を各折丁ごとに位置をずらして付け,丁合後に斜めに段々に並ぶようにしたものが「背標」となる。よってJは(2)で,Kは(3)となる。

【模範解答】
A.(2),B.(4),C.(1),D.(2),E.(1),F.(2),G.(2),H.(2),I.(3),J.(2),K.(3)
【キーワード】
面付け,台,折丁,丁合,綴じ
(出典:
月刊プリンターズサークル連載 1999年10月号記事より)
1999/10/28 00:00:00