1日に6回・6kgの特色インキ調肉がCCM装置の損益分岐点
CCM:コンピュータカラーマッチング(特色インキ調色装置)
印刷のロット減少に歯止めが掛からない。印刷機メーカーは稼働率を向上させるための前準備時間削減装置の開発にしのぎを削っており、展示会などにおけるオフセット印刷機のデモ運転では、仕事の切り替え時間が10分を切る競争になってきた。
しかし、2色・3色物や紙器、シール・ラベル印刷などの特色印刷におけるインキの調色作業は、印刷オペレータが印刷機を止めて行なうことが多く、プロセス物に比べて、多大な準備時間を要している。
あるインキメーカーのデータによると、菊半2色機でオペレータが調色している場合、機械停止理由の38%が調色作業時間に当てられているという。
調色作業による機械停止のコスト試算をしてみよう。印刷機械として、特色印刷が主体の菊半裁2色機が2台あるとする。
印刷機オペレータが、1日に3回の調色作業を行ない、1回の調色作業に30分(インキヘラや練り台の清掃まで)を要するとする。計算はこうだ。
印刷平均速度[
8500通し]/時 × 調色[
0.5時間]/色 × [
3回]調色/日 × 印刷機[
2台] × 平均ロット当たり色数[
2色] × 通し単価[
1.0円] × [
25日]稼動/月 =
127万5千円(月間機械停止コスト/2色機・2台)
印刷機械を停止させて特色インキを調肉することによるコストが、如何に大きいかが理解できるだろう。この試算では1日に機械1台当たり3回の調色作業。機械は2台なので6回の調色、1ヶ月(25日)では150回の調色になる。
例えば、1回当たり1Kgのインキを調肉したとすると、1ヶ月で150Kgになる。しかし特色インキは余分に作ってしまうので実際の使用料は6割程度、4割(60KG)異常は棄てているだろう。
では、特色をインキメーカーに依頼するケースを考えてみる。3000円/Kgとすると、3000×150Kg=
45万円/月が特色インキ代になる。しかし、インキメーカーに頼むと、注文した翌日の納品が普通なので、昨今の短納期ペースでは苦しくなってくる。
次の、自社にCCM装置(コンピュータ調色装置)を導入することを考えてみよう。
この装置には特色用のベースインキを10色セットしておくのが普通の使い方である(基本色は8色の装置が多い)。ベースインキは、特色インキの半額ほどであり、さらにCCMを使用すると、余分にインキを作る必要なくなる。上記の購入量150Kgが、内輪目にみて120Kgで済むとしよう(CCM装置に選択によっては実際もっと減らせるだろう)。するとベースインキ代は1500円×120Kg=
18万円/月以内で済むことになる。
これにCCM装置のリース料を乗せてみよう。例えば1,500万円のCCM装置をリースして
30万円/月。ベースインキ代18万円を加えても、
合計48万円/月である。
ここまで来ると、印刷機を止めてオペレータが特色を調肉することは経済的に見て論外であるばかりでなく、1日にわずか6回・6Kgの特色インキを調肉するだけでも、CCM装置が有効に働きそうであることがご理解いただけるだろう。
ある関西の印刷会社では、事務を担当していた女子社員が志願してCCM装置の専任になり、社内用のみならず、周辺に小規模印刷会社に特色インキの供給を始めたという事例もある。
調色技術はベテランの経験と勘が物を言う世界であるとともに、若い技術者への技術移転が難しいものでもある。
プリプレス分野では、カメラ製版時代に活躍したレタッチマンの色や絵柄を見る眼というグラフィックアーツの魂みたいなスキルや経験値が、残念ながらDTPオペレータに引き継がれることはほとんど無かったという苦い経験を持っている。
CCMは特色インキの調肉というベテランのスキルをコンピュータ化し、特色印刷においても印刷前準備時間を削減し、機械停止時間を大きく削減できる可能性を持っている。
このような観点から、JAGATでは2002年9月25日(水) 10:00〜16:30に、
高付加価値印刷へのアプローチ・セミナー「特色のカラーマッチングで高付加価値を」を開催いたしますので、ぜひ参加をご検討ください。
2002/09/20 00:00:00