◆(株)プラルト 制作部長 山田達也
なれそめ
DTPエキスパート…つい1年ほど前までは私には必要がないと決め付けていたもの。
DTPエキスパート…がんばれよ!と他人に声を掛けていた私。
DTPエキスパート…大きなプレッシャーとなった言葉。
まさか自分が受験することになろうとは思いもしませんでした。
2001年11月,会社よりメーカー主催のDTPエキスパート集中講座を受講せよとの提案(?)を受けたのがなれそめです。4カ月間にわたるプログラム。それこそ雨の日も,雪の日も講習会場に足を運び,参考書を持ち歩く日々でした。
私は何者であるか
私の勤務する株式会社プラルト(以下当社)は印刷企業です。
そして私は制作部という現場を預かるクリエイティブディレクターでありグラフィックデザイナーでもあります。
また昨年より顧客と直接関わる営業としても活動を始めました。
当社が昨年取得したISO9001に関しては品質委員であり,数社の顧客に対しては,年間販促計画や販促戦略などを提案する販促コンサル。またある時は,市内の専門学校で非常勤講師をさせていただき,ある時には人材育成セミナーでガイダンスの講師をさせていただいております。
21歳でデザイナーとして首都圏の某制作会社に勤務したのを始まりに,これまで数社の広告代理店や制作プロダクションを転職。30歳になる年に出身地である信州にUターンしてきました。
そして県内の広告代理店を経て現在の株式会社プラルトに入社したのが約6年前です。
デジタルウェーブの中で
私が入社した年の春,社名を株式会社プラルトに変更して会社も新しいビジョンを掲げました。
そのころ社内にはMacintoshが5台設置されており,同年イメージセッタとデジタルスキャナが導入されました。
この年から当社も本格的なDTPという領域に突入したのです。そしてデジタル化の波が一気に押し寄せてきました。
そこから今日までの技術革新と社内変化のめまぐるしさは凄まじいものでした。3年ほど前から本格的なWindowsDTPが始まり,同時に外部(顧客を含む)からのWindowsデータの受け入れもスタート。現在は,光ファイバによる高速通信を導入し,首都圏のクライアントとも企画レベルからの仕事を受注するに至りました。
DTPのプロフェッショナル企業を目指す
昨年ISO9001の認証取得を実現。品質という観点からも一層デジタル知識を求められるようになってきました。特に顧客データの受け入れについては,神経を使います。さまざまなアプリケーションで作成されたデータをいかに変換してDTPデータとするか。画像解像度に始まり,顧客サイドで認識しているインクジェットプリンタやモニタの色をいかに再現するか等々課題は尽きません。そんな場面では営業担当者のデジタル知識とそれに裏付けされたアドバイス,かつ説得力(プレゼン能力)が問われるのです。こうなってくるとDTPの認識は決して作業現場だけの話ではなく,仕事の入り口から求められる力です。そのような経緯から,当社においてもDTPエキスパート認証取得の必要性が高まりました。
現在当社では制作部,製版部,工程管理,営業といった複数の部門からDTPエキスパート認証取得者が生まれ,全社員の1割以上が認証を受けました。個人的には,前記したように講師という役割をもち,また社内の新人教育という役割がありますが,DTPエキスパート認証取得により,以前に比べて正確な情報をレクチャーできるというメリットが生まれました。なにしろ私自身Macintoshを独学で憶えたので,自分流の経験値があたかも正しいかのように伝えていたのです(少々反省)。もちろん顧客との関係の中で,スケジュール管理や色校正のやり取り,納品に至るまで自信をもって,自分がやりやすいように,また誤解がないよう(結果として双方にプラスがあるように)立ち回れるという大きなメリットを受けています。
短納期,低コストは時代の要請と受け止めつつも,きちんと説明ができて顧客の理解を得ること,つまり意図どおりの仕事運びをするための大きな武器となっているのです。
印刷企業の方向性〜ブレーントラスト
本来印刷企業は受注産業という業態です。しかし,ここ数年(企業によっては10年も前から)提案産業への移行を唱える企業が増えてきました。しかし,だれもがそのことを知っていて,必要と感じながらも具体的なプランやアクションレベルまで実現することに行き詰まりを感じているようです。そこには,マーケティング理論や広告戦略のノウハウ,また社会ニーズを捉えることや一般論を特定企業に置き換えて展開する具体的なアイデアが求められます。このテーマは,もしかしたら,アナログとかデジタルといった話以前のテーマであり,技術論は目的実現のための手段と裏付けであると認識しています。
よく現場では,「顧客の目的は,チラシやパンフレットを作ることではない。最終的に成果を創ることにある」と話をしています。広告代理店出身の私から見ると,印刷物は媒体の一つにすぎないと思うのです。要は,顧客にとって最終的に欲しい結果をいかに創るかがポイントであり顧客が予算を組む目的なのです。まずその目的を共有することから始め,具体的なアイデアを提案していくことを実践しています。
現在コンサルティング契約させていただいている食品加工メーカーからこんな問い掛けがありました。「今年わが社は,オリジナルブランドを立ち上げたい。ついてはコンセプトから販売計画までを企画してほしい」。またあるクライアントからは,「新しいショップをオープンするので年間販促計画を立ててほしい。どんな客層にどんなアプローチをしたら効果的かを一緒に考えてほしい」。
私たちはこんな依頼が当たり前のように入る企業を目指しています。あらゆるメディアを連動し,コントロールすること。顧客が最終的に得たい成果を達成することをサポートするパートナーでいること。そのことを当社は企業方針として「ブレーントラスト」と掲げました。「ブレーントラスト」とは,顧問団という意味です。またその単語のとおり「信頼の頭脳集団」でありたいと思うのです。顧客にとっての相談相手になれることこそ,次代の印刷企業のスタンスであると考えます。顧客の目的達成に貢献し,顧客とともに勝っていくこと,頼りになるパートナーとして存在することこそ私の目指すクリエイターの姿であり次代の印刷企業像です。
今から6年前,デジタルデザインに背中を向けていた私は,今DTPエキスパートという強力な武器と自信をもって,一件一件の顧客に関わらせていただいています。
発想は自由に,柔軟に,平等に,が私の大切にしていることです。そしてその発想を実現する高度で確かな技術力がうまくバランスした時,顧客にも,私にもともに成果が生まれると確信しているのです。
予算は有限,されどアイデアは無限,そして技術は日進月歩。常に勝つために今を学び続けます。
(JAGAT info 2002年12月号)
2002/12/16 00:00:00