システム開発の動機は、印刷機を効率良く稼働すること、及び営業所が全国にあり離れているので通信を利用して情報共有を行いたいというところから出てきている。
具体的には次のような課題や要望を解決するために開発を行った。
(1)制作原価の洗い出し
単品の原価を考えた場合、印刷部分はわかりやすいが、制作部分はわかりづらい。特に校正が5校か3校か再校かなどが把握できておらず、制作価格の根拠である作業時間を把握する必要がある。
(2)どこからでも確認できる進捗管理
営業拠点が東京、大阪、九州の福岡、札幌、広島などにあるが、営業は進捗状況をいちいち電話で問い合わせをするのでは大変であり効率が悪い。これをパソコンから受注Noを入れ、誰が作業担当者で、いつ印刷を行うかなどをわかるようにしたい。
(3)ペーパーレスによる伝達指示の徹底
営業拠点が離れているので、それまでは指示をファックスで行っていた。しかもそれぞれが勝手な書き方をしており、さらに送ったつもりが送っていないとかエラーで届いていないなど、FAXを送った送らない、電話で言った言わないというトラブルが多くこれをを無くしたい。
また作業指示を紙で管理すると、デスクに埋もれてしまったり、日程の進捗度合も本人しかわからず、休んでしまうと対応できない。このような理由からペーパーレスでデータで管理したい。
(4)社員能力の見直し
制作部門ではとかく残業時間の多さで評価しがちであるが、同じ程度の仕事を残業で遅くまでやる人とさっさと終わる人では、本来評価が逆のはずである。これを作業の標準時間と実際にかかった実績時間の比較で評価を行い、給与に反映すようにしたい。
(5)利益目的を中心とした生産スケジュール
印刷工場を主にスケジュールを組み立てる。これは印刷を最も効率よくできるように、印刷時間を決めて、そこから逆算して、刷版、制作、校了を決める。具体的にはインキを変えないで刷るとか、納品場所が集まるように、後工程を含めて印刷が一番効率の良いスケジュールを組むことが目的である。
このような背景で実際のステップは次のような流れで行ってきた。きっかけは、3〜4年前の紙の値上げで、紙が上がると利益が大ダメージを受けるので、工程管理ソフトの導入を考えたのが始まりである。
開発にはデータベースとしてファイルメーカを採用した。理由は営業がWindowsで制作がMACを利用していたため、WindowsでもMACでも扱えるファイルメーカを選んだ。Webだと社内の開発スキルの問題と、表現力がまだ乏しいということもあり、またカスタマイズが容易だということもありファイルメーカにした。
カスタマイズとは、工程管理は新しい機械、人の増減、部門統廃合などがよくあるので、このような場合でもシステムを止めずに変更できる点である。
導入の効果は、まずトータルの残業代を25%削減できた。これは、制作担当者が自分のパソコンから負荷とスケジュールが見えるので、自分でコントロールできるようになり、また日勤と夜勤の引継も軽減された。
そして見積または仕切価格と実数の両方が比較できるようにして、儲かる仕事か儲からない仕事がわかるようにしている。そのため儲かってと思っていた仕事が実は儲かっていないなどがわかり、これをプラスにする必要が出てきた。このため請求金額を上げるか、作業時間を下げるかということを考える。
実際には、この情報を顧客に見せて金額の見直しをお願いした。実際に請求を上げるのが難しければ、このような場合だいたいが校正が多いので、校正の回数を減らす話をお願いする。顧客は実際に印刷会社が何をしているのか知らないので、これを見せると作業内容を理解してくれ話がつく場合がある。
原価が高い理由には、作業担当者の個人スキルの場合があり、これに対しては個人のスキルを上げる支援をしている。また画像が多くスキャンが多い場合には、データベースにしようとか対策を考える。このように、原価対策に利用してきている。
今10数社に納めているが、ほとんど自社で変更をかけて利用している。これはソフトは維持費用が掛かるので、ソースを解放しているためである。スクリプトを公開し計算式も解放しているので、パソコンに詳しい人は変更できる。使っていくうちに変更は必ず出てくるので、顧客でカスタマイズできるようにしている。
まず営業が新規で受注を入力するところから始まるが、左半分で受注情報を入力し、右半分でスケジュールを作成する。全てプルダウンで行えるようにして、マウスでクリックして入れられるようにしている。スケジュールもプルダウンで選んでいく。印刷会社が持っている自社カレンダにも対応できる。アスコンでは営業は大ざっばなスケジュールをたてるが、その後、制作のリーダがスケジュールの微調整を行う。
その次に営業が利用する変更連絡書がある。印刷物制作では顧客から言われたように作成するため常に変更が入ってくる。そのため変更の履歴を残すことと、変更を担当者が確実に見たかの確認機能がある。例えば枚数の変更を行うと、印刷部に変更連絡が送られ印刷部の人がそれを見ると色が変わる。これで伝わったことがわかるように、確実に変更を伝えるような仕組みにしている。
刷版以降は、別なスケジュール予定で、工場の担当工務が管理をしている。印刷の予定を印刷機ごとにスケジュールを見ながら、次の印刷の予定を入れ込んでいく。同時に用紙の管理を行えるようにしている。
制作の集計は、バーコードを利用して何時から何時まで何をしていたかを、データ入力していく。社員は名札をつけており、その名札に社員バーコードを付けそれを読ませて、作業のバーコードを読ませ開始、終わればまたバーコードを読ませる。項目は、集計したい内容でバーコードにして管理している。バーコードは仕事単位のコードになっているので、切り抜きでも、受注ごとでバーコードが異なり、一品ごとで簡単に集計できる。そのため部門ごとやクライアントごとで、項目と点数と時間で集計される。
また印刷の日報の入力は、印刷機ごとに開始、終了、紙の使用量などを入力している。トラブルもあるので、トラブルもバーコードで入力している。ブランケットの交換やトラブルの内容も管理している。
制作時にはいろいろな原稿やサンプルなどがあるので指示袋を用意してそれにバーコードのついた作業指示を張り付けて管理していく。印刷用の指示原稿では、表面や裏面のタイトルや納品場所などが入っている。ISOの管理があるので、スリ見本や指示書なども一緒に管理する。
最終的に原価を計算するため、外注書を発行し外注費も管理している。外注への依頼書も同じように行っている。
この結果、制作の予定をチームごととか担当者ごとに管理できる。向こう一週間が出せるような仕組みなどがあるので、リーダが不在でも何をするのかどこまで進んでいるのかわかるようにしている。アスコンではチームで仕事行っているが、チームにより暇な時期と忙しい時期が出てくる。そこで応援が可能かどうかもわかるようにしている。
また担当者ごとで時系列に集計できるので日報が作れる。日報は一日単位での仕事量や、月単位では仕事量が日々どうなっているかなどが把握できる。
印刷機も機械ごとに時系列で通数やヤレ、時間などを集計できる。
集計は、制作の人がその都度入力するので、リアルタイムで変化していく。受注番号を入れれば時系列で作業が追える仕組みになっているので、営業は、変更があった場合でも、進行を見て、例えばチラシの売価の変更があった場合、すぐに止めたり、変更をかけたり、また印刷まで始まってしまった場合顧客と相談したりできる。このため電話での確認などが不要になった。
刷版の予定一覧、印刷一覧、加工一覧、発送一覧などが、ボタンのクリックですぐ出せ、終わったかまだかがすぐわかる。この結果自社ミスの場合ではすぐに止めたり、やり直したりできるので、印刷まで行ってしまって損失するなどは無くせるようになった。
またインキや用紙の入りと出しを管理しながら在庫管理ができる。用紙の入荷予定が管理できるので、用紙の担当はそのための準備ができるようになる。インキもレギュラー用紙もある程度少なくなると自動で警告などが出せる。
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2003/03/12 00:00:00