印刷の見積には、2つの意味がある。ひとつは顧客へ提出するための見積がある。もうひとつは社内事前見積がある。
本来見積とは、顧客へいくらで仕事を受注しますという提示であるが、そこに出された金額が社内として根拠のある数字であるべきで、根拠となるべき価格が存在するはずである。
価格に関わる指標は実際原価から結果としての売価までいろいろなものがありえる。(図1)
まず実際製造原価がある。これは社内で利用している設備や人件費、消費財、管理費などから算出するものだが、個別一品原価として本当に「これが実際原価である」と言い切れる数字は出せない。
標準製造原価は、予算の数字からアワーコストを出し、それに製品仕様毎の標準工数を剰することによって算出する数字である。この標準原価に部門が出すべき製造利益をのせた数字として工場仕切価格を決めることができる。これは営業に対しての売値で工場売価という言い方もできる。同時に仕切価格は、営業部門が製造部門から仕入れる時の標準仕入価格(社内標準価格)でもある。
次に標準仕入価格つまり工場から仕入れた価格に対して営業利益をのせたのが、図の中にある標準売価になる。
以上に述べてきた標準製造原価、工場仕切価格、標準売価の3つは、予算を作れば算出することができる。
実際に顧客に対して出す見積りは、上記の3つのいずれかの指標をもとに、営業マン個人が様々な条件を考慮して値付けをすることになる。そして、最終的には実際に作業をして、当初設定された仕様に対して起こる様々な変更を加味して請求金額となる。
見積に対する最大の関心事は算出される金額の妥当性ではないか。顧客へ提出する見積額は、顧客との関係や営業個人の考え方などで製品一品ごとでは、高めに出したり、低めに出したりする。それが「プライシング」であり、それ自体が問題だとは言えない。基本的には、月単位などある期間で目標とした利益を確保するような営業活動になるであろう。問題にすべきことは、全く同じ製品を複数の営業マンが同じ単価で事前見積を行っても、同じ数字にならないという状況ではないか。
この問題の原因としては二つのことが考えられる。一つは、先に紹介した見積の基準となる3つの指標(標準売価、仕切価格、標準製造原価)の項目設定(項目の細かさ、内容構成)が、見積もり業務の現実にそぐわないために手間が掛かり過ぎたり、逆に粗すぎるということである。前者は、標準製造原価算出に使うような細かな項目単位を見積もりに持ち込もうとする場合に起こりがちである。
もう一つの原因としては、製品仕様に対して、自社なりの標準手順(どのような工程、設備で生産するのか)が明確にされておらず、各営業がまちまちな手順を想定して見積もりを行っていることが考えられる。
見積もりの問題にはいろいろな要素が考えられるが、単純に「営業マンの勉強不足、訓練不足」という前に、上記で指摘したようなことが原因になっていないかどうかを調べてみる価値は有るだろう。
来る4月23日(水)に、株式会社ユーメディア 専務取締役 佐藤光洋氏を講師にお招きして、「見積が威力を発揮するのは −見積が全ての始まりで成果を出すー」と題するセミナーを開催する。
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2003/03/27 00:00:00