ニッチマーケット別の分業構造
99/11/15
●業際融合
業際とは異業種間の境界のことをいう。したがって,業際融合とは異業種間の境がなくなることを意味する。今や日本の経済界では大がかりな融合が行われている。銀行と証券界,損保業界,生保業界などが良い例だが,どんどん異業種間で企業統合(合併,吸収,業務提携,持株会社など)を行っている。日本の印刷産業では,まだ企業統合はほとんど行われていないが,業際融合は着実に進行している。融合が行われていながら,企業統合が行われないということは,廃業や倒産という形で業者の自然減が進行しているということだ。
印刷業と製版業,印刷業と製本業,印刷業と光沢加工業,印刷業と出版業,印刷業とデザイン業など……。業際融合が行われているということは,それぞれの業種の社会的存在理由(レーゾンデートル)が不透明になってきたことを意味する。業際融合の結果として,印刷産業の新しいパラダイムはどのような形になるのだろうか。
●特化と住み分け
印刷界で業際融合が行われるということは,長い間分業として存在してきた従来の印刷および関連技術が社会的価値を失いつつあるということだ。カラー製版技術は製版業や印刷業の専門技術から離れ,広くデザイン業務を行う人たち全体の技術になってしまったし,製本技術も印刷とインラインで行われようとしている。印刷技術でさえ,ドキュテックのように社会の文書処理技術のひつとになろうとしている。すなわち印刷産業の既存技術で業種を分けるということがむずかしくなってきた。それではどういう観点から,これからの印刷産業のパラダイムが作られるのだろう。
情報伝達のひとつのメディアとして,印刷が今後も存在する以上,印刷産業も存在する。しかし,その中に生存する印刷および印刷関連の各業種は,技術特化を表面に掲げるだけではもはや生きられない。
企業の社会的存在価値を明確にするのであれば,技術でなく,印刷品目別に特化すべきであろう。自社のニッチマーケット(niche market)に特化をし,その中でone stop service center(印刷事業に必要なすべてのサービスをパッケージで供給すること)機能を持つように努力すれば,自ずから印刷物製造技術や関連したメディア制作技術は,今までの技術とは違った新しい顔を見せてくれるはずだ。
自社のマーケットを明確にすること,それが私が長い間主張している「特化」とか「住み分け」ということだ。企業統合ということは,異なるマーケットを持つもの同士が互いに補完し合うことだから,明確なマーケットを持っていない会社では統合のしようもない。
印刷産業の新しいパラダイムを作るプロセスは,まず第1に古い分業構造が崩壊すること,第2に小企業のショップ化も含めて,ニッチマーケット別に特化が行われること,第3に必要に応じて企業統合が行われることだろう。
技術別,設備別の分業構造が崩壊し,ニッチマーケット別の分業構造が誕生する。今度はその中で,新しい形の業際融合が行われ,印刷産業でも企業統合が行われるようになるだろう。
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1999/11/15 00:00:00