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中小企業向けの新たなEMS「エコステージ」

企業を取り巻く環境圧力のスパイラルは年を追って広く,深くなってきた。グリーン購入の伝播のメカニズムが本格的に動き出したからである。EMS(環境マネジメントシステム)の構築と運用を急がなければならない。

グリーン購入法は,環境に何も配慮していない企業は少なくとも国などのグリーン購入枠では製品は売れないという購買障壁を定めたものである。ただし,もともと国の機関が行うことを定めたもので,それ自体は自治体,民間に関わりはない。しかし,国に製品を納めるメーカーの多くは各部品をいろいろな企業から調達してそれらを組み上げて製品にするから,当然,その資材・部品調達メーカーに対して購買障壁を設けることになる。そして,その資材・部品メーカーも,その取引先の原材料メーカーに購買障壁を設けることになる。
環境問題に関する範囲や量は,今後ともこれで良いということはないと考えるべきである。数年前は,ISO14001認証取得を目指す企業が「いろいろご協力いただきたい」と要望を出す程度だったが,PRTR法などの実施で納入物品に使われている材料,物質に関する情報開示,さらには証明書提示とその保証を要求,それらが満たされなければ取引を停止すると明言する企業も出始めるというようにエスカレートしてきている。
このような環境問題の動きに的確に対応するためにはその時々の対処療法だけではどこかで購買障壁の外に取り残されることになる。EMSを構築,運用して,その本質を自社の血肉にしていかなければ継続的対応はできない。

環境ISOの認証取得は中小企業には大きな負担になる。そこで,中小企業のEMS取り組みを支援するために,簡易環境ISO規格といえるような制度として「エコステージ」が開発され,企業等の環境経営を評価・支援する「エコステージ研究会」の全国組織が本年4月10日に発足した。
「エコステージ」の最大の特長は,「多くの組織がメリットを自覚でき,できるところから少しずつでも改善をしていく『継続的改善』を支援する制度」という点にある。具体的には,認証のレベルとして環境ISO規格の骨格部分をピックアップして中小企業向けに簡易化した第1ステージから環境ISOと同じレベルのステージ2,そして最高の取り組みレベル(環境会計導入および環境報告書発行レベル)のステージ5までの5つのステージ,目標を設定してある。各企業は,それぞれの状況に応じて入り口としてのステップを選び,以降,順次ステップを上がっていくという制度である。
環境ISO取得の状況をみると,入札対策としてだけの取り組みと思われる例もなきにしもあらずである。

いま,利益追求の企業といえども「秘密結社」が通せないように社会は変わりつつある。経営者が自社の考え方を明確にし,それを会社の内にも外にも明言した上で管理体制を作って実行に移し,その成果も隠すことなく明らかにする体質をもった企業が求められている。環境問題への対応も,その取り組みによって自社の体質を新しい上記のようなものにレベルアップしていくことに真の意義があるというのがJAGATの立場である。単に認証を取得しても,内部的に実質がなければ息切れするし,掛けた時間と労力も報われないだろう。
従って,「エコステージ」のコンセプトはJAGATとして十分に同意できるものであり,中小印刷企業へのEMS普及の意味で広報や啓蒙活動に協力する。
なお、来る7月23日(木)に環境マネージメントの第一人者であり、エコステージ研究会理事長・帝京大学教授吉澤正氏を講師とする「環境マネージメントの新潮流」と題する無料セミナーが開催される。(連絡先:TEL:03−3572−9030または下記Eメールアドレスまで)

エコステージの問い合わせ
東京エコステージ研究会事務局(株式会社UFJ総合研究所内)
TEL 03-3572-9030,Eメールecotokyo@ecostage.org

(出典:「JAGAT info2003年6月」より)

2003/06/23 00:00:00


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